185.遊び場を作ろう(4)
「何、とうとう遊び場が完成したのか!?」
「随分と早くできましたね」
夕食を食べ終わった後に二人に遊び場が完成したことを伝えると驚いていた。
「創造魔法で作ると、一瞬でできるからね。まぁ、魔力が足りなくて数日もかかったんだけど」
「でも、普通に作るよりも早くないですか? 沢山作ると聞いていたので、まだ時間がかかると思ってました」
「そんなことより、どんなものを作ったんだ?」
「それは、見てからのお楽しみ」
「あー、またそれかー」
クレハは頭を抱えて身悶えした。正直、あの遊具たちを説明できる自信がない。とにかく遊びながら説明していったほうが伝わると思う。
「どんな遊び場になっているか楽しみですね。すぐに遊べるものなんですか?」
「うん、すぐに遊べるよ」
「なら、これから行ってみようぜ!」
「夜だから無理ですよ。明日、みんなで集まる日ですし、その時に遊ぶ予定ですか?」
「そのつもりだよ。なんとか間に合って良かったよ」
この日に遊ぶ予定で作っていたから、間に合ってよかった。
「だったら、寝よう! 今すぐ寝れば、あっという間に明日になるぞ!」
「えっ、でも遊ぶのは昼ですからすぐには遊べないですよ」
「いいから、寝るぞー」
「ちょ、ちょっと!」
クレハは私たちの腕を掴んでベッドの近くまで移動した。クローゼットからパジャマを取り出すと、それを手に持たせる。その後、クレハは即行でパジャマに着替えてベッドの中に入った。
「ウチは寝る! 二人も早く寝るんだぞ!」
横になったクレハは目を瞑り、寝る体勢に入ってしまう。それを見ていた私たちは顔を見合わせて、苦笑いをした。
「まぁ、いいか。寝ようか」
「そうですね。楽しみなのには変わりありませんし」
私たちはパジャマに着替えるとベッドの中に入って寝た。明日は遊び場のお披露目だ、楽しいことになるといいな。
◇
翌日、朝食を食べ終えた私たちはいつものように家畜の世話をして、自家用の野菜を育てて収穫した。余った時間でキャラメルづくりをしてから、昼食を食べる。
そして、遊ぶ時間になった。とりあえず、青い屋根の家の場所までやってきて、他の子供たちと合流する。
「えっ、遊び場ができたの!?」
「ということは、今日から遊べるってことか!」
「どんなのができたのかな、楽しみ!」
遊び場ができたことを伝えると子供たちは大騒ぎ。みんなとても嬉しそうにしてウズウズしているみたいだった。あの大人しいティアナでさえも、ワクワクしている様子だった。
「こっちに作ったよ、来て」
私が先導して進んでいくと、その後を子供たちが騒ぎながら付いてくる。しばらく歩ていくと、遠くに遊び場が見えてきた。すると、それを見た子供たちが声を上げる。
「あそこに何かあるぞ!」
「小さいのと大きいのがある」
「行ってみようぜ!」
遊び場を見た子供たちは我慢できないとばかりに駆け出していった。すると、私の両腕がクレハとイリスによって掴まれる。
「あそこだな。よし、行くぞ!」
「行きましょう!」
「わわっ、ちょっと!」
二人に腕を掴まれながら駆け出していった。子供たちと一緒になって駆け出していくと、段々と遊び場がはっきりと見えてくる。そして、遊び場に到着するとみんなが歓声を上げた。
「うわっ、なんだこれ!」
「すごーい!」
「あれはどうやって遊ぶのかしら!」
完成した遊び場を見た子供たちは目を輝かせながら遊具を見つめた。しばらく、遊び場を見入った後子供たちは私の方を振り向く。
「これ全部魔法で作ったのか? すげーな!」
「ねぇねぇ、どれから遊ぶ?」
「あれってどうやって遊ぶの?」
みんな遊びたくてウズウズしていた。早く遊びたい気持ちを我慢して、私に遊び方を聞こうとしているみたい。
「じゃあ、順番に説明するね」
遊具の遊び方を教えることになった。まずは小さな遊具について遊び方を私が実践して見せた。言葉で説明するよりもそっちのほうが簡単で、子供たちはすぐに遊び方を理解していった。
小さな遊具を教えると今度は複合遊具の遊び方を教えた。みんなを連れて歩き、一つずつ実践して見せていく。その時の子供たちの顔が初めて見るような真剣な顔つきでとても面白かった。
一通り説明し終えると、みんなを一か所に集める。みんなすぐに飛び出していきそうだったけど、堪えてくれたみたいだ。
「じゃあ、説明は終わり。怪我しないように気を付けて遊ぼうね。あと、独り占めをしたらダメだよ。遊んでいいよ」
「っしゃー!」
「行くよー!」
「あれやろう、あれ!」
私が許すと子供たちは一斉に飛び出していった。散らばった子供たちは気になった遊具で遊び始め、とても楽しそうな笑い声を上げていた。
「よし、あれやりに行こう!」
「行きましょう」
「わっ!」
子供たちを眺めていると、クレハとイリスに背中を押された。向かった先は複合遊具の縄で作ったネット登りの場所だ。
「これを登って上まで行こうぜ」
「上に行ったら、滑り台を滑りましょう」
「分かった。じゃあ、競争ね。よーい、ドン!」
「なっ、先に行くなんて卑怯だぞ!」
「ま、待ってください!」
私が先陣を切ると、二人は慌てて後からついてくる。ネットの縄を掴んで手足を交互にかけていく。それからするすると登っていく。体が子供だからかスイスイと進んでいける。
「なっ、ノアが速いぞ!」
「ま、負けません」
「ふっふっふっ。こういうのはコツがあるんだよ」
「くっそー、上手く登れないぞ!」
「揺れて中々進みません」
まぁ、前世で子供の頃にやったことがあるからね、やり方は分かっている。初めて挑戦する二人はもたもたとして、上手に上がって来れないらしい。その隙に私はどんどん登っていき、てっぺんの二階部分までやってきた。
「一番!」
「あー、くそ! ノアに負けた!」
「じゃあ、二番は私です」
「イリス、そうはさせないぞ!」
残りの二人が競争を続けた。運動神経のいいはずのクレハが苦戦しているのは珍しいけれど、イリスが上手に上がってくるのも珍しい。二人ともいい勝負で二階を目指して登り続けた。
そして、勝ったのは。
「「二番!」」
二人が同時に二階部分にタッチをした。うーん、こういう場合は……。
「二人とも二番だね」
「なんだー、ウチじゃないのか」
「それでも、二番は嬉しいです」
「イリスと同じなんて、なんだかちょっと悔しいんだぞ。ウチのほうが動けるはずなのに」
「登りづらかったから、動けるクレハと相性が悪かったんじゃないですか?」
ブツブツと文句をいうクレハにイリスは冷静に答える。それでも、自信があったからなのかまだ悔しそうだ。
「ネットに慣れていったら速くなると思うよ。また挑戦すればいい」
「ウチはネットを練習するぞ!」
「頑張ってくださいね。次にいきましょうか」
二階に上がってきた二人を連れて、今度は三階へと行く。三階へ行くと吊り橋があり、その向こう側に目的の滑り台が設置されている。その吊り橋の前でイリスが怖がっている。
「ここを渡るんですか? 足元が揺れて、隙間が大きくて、落ちそうで怖いです」
「こんなのひょいひょいっといけば大丈夫なんだぞ。見ていろよ」
すると、クレハが吊り橋に挑戦した。縄を掴みながら橋に足を乗せると、グラグラと大きく揺れ動く。
「うおっ、かなり揺れるぞ。でも、これくらいなら大丈夫だ」
橋が揺れるとクレハも揺れる。でも、クレハは全く怖がらずに橋を進んでいき、向こう側まで渡ってしまった。
「かなり揺れて楽しかったぞ。ほら、二人とも来いよ!」
「イリスは後にする?」
「いえ、行きます」
イリスは腰を引きながらゆっくりと橋に足をかける。プルプルと揺れると、橋もゆるゆると震える。勇気を出して両足を橋に乗せると、イリスの体が大きく揺れ動いた。
「わわっ、足が体が!」
「頑張れー!」
「イリス、行けそう?」
「が、頑張ります!」
イリスはがっちりと縄を掴みながら、一歩ずつ橋を進んでいく。途中大きく体が揺れたところもあったが、なんとか踏みとどまれたみたいだ。はらはらしながら見守っていると、ようやくイリスが向こう側まで辿り着いた。
「ふー、やりました」
「よくやったな! じゃあ、次はノアだぞー」
「じゃあ、行くよー」
最後は私だ。縄を掴みながら一歩ずつ橋を進んでいく。橋の部分は小さな丸太になっているのでバランスがとりづらい、体が倒れないように力を入れて進んでいく。
ひょいひょい、と軽々と進んでいくと向こう側に辿り着いた。
「無事、到着!」
「おー、ノアは速かったな!」
「危なげなかったですね」
「次は滑り台だな! 三人一緒に滑ろうぜ!」
クレハがらせん状の滑り台に近づくと、その場に座る。
「ほら、二人ともウチの後ろについて」
「えっ、三人で行くと大変だよ」
「まぁまぁ、行ってみましょう」
イリスに背中を押される形で私はクレハの後ろにつき、イリスは私の後ろについた。三人ピッタリと体をつけて、あとは滑るだけだ。
「じゃあ、行くぞ!」
クレハが前に行き滑り出すと、それに続いて私たちも滑り出す。
「わー、なんだこれ!」
「キャーッ!」
「結構速い!」
グルグルと回りながら滑り落ちていくのはなんだか楽しい。しかも、スピードも出ているので迫力もある。滑り台の速さを堪能しながら滑り落ちていくと、終わりが見えてきた。
そのまま一番下まで着くと私たちは押し出されてしまった。クレハを下にして私たちは被さり合ってしまった。
「わっ、大丈夫ですか?」
「クレハ、大丈夫?」
「うぅ、重いんだぞ」
慌ててイリスが起き上がり、私もそれに続く。潰されたクレハはよろよろと起き上がると、元気よく立ち上がった。
「最後は失敗したけど、滑り台は楽しいな!」
「はい、ちょっとしたスリルがありました」
「もう一回初めからやろうぜ!」
「やりましょう」
クレハとイリスが駆け出していった。どうやらこの複合遊具を気に入ってくれたみたいだ、それが嬉しい。私も二人に遅れないように後についていった。




