184.遊び場を作ろう(3)
「次はブランコを作ろう」
ブランコなら複雑な形はしていないから、魔力消費とか少なくて済みそう。ブランコを作る場所に木と縄と金属のインゴットを置き、準備完了だ。
材料に向けて手を構え、しっかりとブランコの構造を頭の中で想像する。そのイメージがしっかりできたら、創造魔法を発動させた。すると、材料が光り、みるみる内に形を変えていく。
そして、光が収まった後にはできあがったのはブランコが二つある遊具だ。金具で止められた縄が垂れ下がり、座る場所は木でできている。
「本当にできてるかな?」
できたてのブランコに近づき、座ってみる。うん、しっかり固定されているね。じゃあ、次は動かしてみよう。地面を足で蹴ると、ブランコを動き出す。それから足で漕いで、ブランコのふり幅を大きくしていった。
「うん、大丈夫そう!」
きしむ感じもないし、大きく動いても金具が外れることはない。丈夫なブランコができあがったみたいだ。これだったら、沢山の子供が使えて安心するね。
「残りの魔力を考えると、あと一つくらいか……何を作ろう」
魔力切れで倒れたら大変だから、次はもっと簡単なものを作ろう。簡単な遊具は……よし、うんていを作ろう。複雑な構造はしていないし、材料も少なくて済む。
うんていを作る場所に木を一本移動させると、集中してうんていのイメージを頭の中に浮かび上がらせる。それから、創造魔法を発動してうんていを作り出す。
木が光るとその形が変わっていき、光が収まるとそこには一つのうんていが出来上がっていた。木造のうんていだけど、手で掴まるところはささくれがないようにツルツルになるようにイメージをした。
出来上がったうんていにジャンプして棒を掴む。棒はつるつるしていて、気を抜けば滑り落ちそうなくらいだ。これだけツルツルだと、ささくれが起きる心配はないよね。
作りもしっかりしているし、壊れることはなさそうだ。棒を離して地面に着地すると、体がぐらりと傾いた。魔力がかなり減っているように感じる。
「んー、今日はここまでか。もっと魔力があれば、一度に沢山作れるのになぁ」
今まで魔力不足に悩んだことがないから、もどかしい気持ちはある。だけど、ここで無理をしたら体に悪い。仕方がなく今日の遊具作りは終了した。
明日は大きい遊具を作るから、しっかり休んでおかないとね。
◇
次の日、いつも通りの仕事を終わらせて遊び場となる場所までやってきた。今日は大きな遊具、複合遊具を作るつもりだ。これが、この遊び場の目玉になるはずだ。
一か所に十数本もの木を置き、大量の縄を置き、金属のインゴットを置く。準備がこれだけで済むんだから、創造魔法って楽でいい。でも、楽じゃない部分もある。それはしっかりと想像することだ。
しっかりと想像しないと、別のものが生まれる可能性がある。イメージが緩かったり、間違っていたりするだけで魔法は失敗する。だから、創造魔法を使う時は気が抜けない。
「ふー……よし、やろう」
しかも、今回はかなり大きな複合遊具を作るつもりだ。細部に渡ってしっかりイメージをしないと失敗となり、後片付けが大変になる。失敗できない魔法を前に、私は緊張感も高めた。
頭の中でしっかりと想像する。複合遊具の姿を思い浮かべて、細部まで的確にイメージを固める。複合遊具の形、どの場所に何を作るのか、手触りはどんな感じなのか、傾斜の角度は。色んな事を事細かに想像した。
「いけ、創造魔法!」
そして、ついに魔法を発動した。すると、材料が光って形を変えていく。その間もしっかりと頭の中で複合遊具の形をイメージして、揺るがないようにする。その形が変わり終えると、光は静かに収まっていく。
光が収まった後にできたのは、見上げるほど大きな複合遊具だった。
「できた……あれ?」
見上げると体がふらりと傾き、尻もちを突いてしまった。どうやらかなりの魔力を使ったみたいだ。こんなに体の力が抜けるのは久しぶりだ、倒れなかっただけでもよしとするか。
しばらく座って体を休めると、少しずつ体に力が戻ってきた。立ち上がると問題なく立ち上がれた、これなら問題ない。さて、新しくできた複合遊具の具合を調べよう。
まずは一階部分から。複合遊具の一階部分は低い天井の迷路になっている。入口から入り、道を進んでいく。かなり入り組んでいるので中々先へは進めない。そんな複雑な迷路を頑張って進み、なんとか出口にたどり着くことができた。
「うん、これくらいの難易度なら子供でも無理なくできそう」
この迷路を活用して色んなことで楽しんで欲しい。迷路なんてこんなところじゃ体験できないから、きっといい刺激になってくれるはずだ。
迷路を出た後は壁を見る。するとそこはそびえ立つ壁になっていて、三階まで続いている。その壁には手や足をかける小さな突起がついている、ボルダリングだ。これを登って上に行くことができる、こういうのが好きな子もいるだろう。
次に向かうのは階段。広めの階段を昇っていくと、第一の踊り場に出てきた。その踊り場には小さい子用の広めの滑り台が設置してあって、楽しむことができる。
それに第一の踊り場は複合遊具をグルッと一周できる構造になっていて、ここで鬼ごっこをしたら楽しいことになるだろうな。
あと、小部屋があったり、三階へ続く小部屋がある。三階へ続く場所は竪穴になっていて、三階へ昇るには縄で作ったネットを昇っていく感じだ。これはアスレチックを楽しみたい子向けだね。この辺は秘密基地っぽい感じを出してみた。
二階も上手に作ってある、今度は三階に行ってみよう。階段を昇っていくと、三階に出てきた。ここには一階部分から伸びた縄のネットが設置してあり、下からここまでネットを使って上がってくることができる。
三階部分は二つの島に分かれていて、その間には隙間の空いた吊り橋が掛かっていた。この吊り橋を渡ることで隣の島に行き来できるようになっている。その隣の島には、らせん状になった滑り台が設置されていて、ここから一気に一階に下りることができる。
それに、滑り台と同じ島には昇り棒も設置されていて、昇り棒を伝って一気に下に下りることも出来れば、力のある子は昇ってこられるようにしてある。
もう一つの島にはボルダリングと二階の小部屋に繋がった穴があり、どちらかを使ってここまで上がれるようになっている。これが複合遊具の全貌だ。細部にまで拘って想像したから、ちゃんとできていて安心した。
「どれも問題ないね。今日はここまでにして、また明日遊具を増やそう」
大きな複合遊具を作ったけど、まだ遊具を足しておきたい。今日は魔力が足りないみたいだからもう作れないけれど、明日また来て遊具を作っておこう。
これらを子供たちの前で披露するのが楽しみになってきた。




