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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
第一章 始まりの土地

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18.これからのこと

 石の家に戻ってくると、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。


 ここを出る前に、刈り取った小麦の穂と畑に残したままの根は綺麗に燃やしてあった。これで明日も小麦作りから始めることができるね。ちょっと、畑の土を練りこんでおこう。


 畑に手をつくと地魔法を発動させる。土を動かして、土の上にあった燃えカスなどを土に混ぜこませた。ふー、沢山魔力を使ったから疲れちゃった。


 畑の範囲は今日作った範囲くらいが丁度良かった。これ以上広げると私の魔力が足りなくなる恐れがある。とりあえず、毎日納品できる範囲でいいよね。


 作業が終わったし、石の家に帰ろう。って言っても、すぐそばにあるから少し歩けば石の家についた。石の家は三メートルかける五メートルの大きさにしてある。寝る場所としてしか機能してない。


「おかえりなさい」

「おかえり」

「ただいま。明日の準備をしてきたよ」

「明日も小麦作りですね、頑張ります」

「イリスと話してたんだけど、しばらくはノアのお仕事を手伝うことになったぞ」

「それは助かる。私一人じゃ収穫から納品まで大変だと思っていたんだ」


 二人とも私の仕事を手伝ってくれるみたいだ。あの作業を一人でやったら、一日じゃ終わらない気がするから本当に助かるな。でも、今後二人が仕事に出ると私一人でやらなきゃいけないのかな。うーん、これは課題だね。


「今日は小麦を納品できて良かったね。すっごく喜んでもらえたよ」

「ノアの力が役に立ちましたね」

「村に貢献できたから、これからも村に居られそうで安心したぞ」

「そうだね、私たち歓迎されてないみたいだったからね」

「男爵様のおかげですね。突然来た私たちを受け入れてくれて、本当に助かりました」


 町で犯罪者として捕まって開拓村送りになった。しかも、了承を得て連れてこられた訳じゃなく、私たちは押し付けられた存在だった。本当なら拒否されて、住む場所もなかったはずなのに、ここの男爵様は受け入れてくれた。


 町を追い出された私たちはその厚意に縋るしかない。そうじゃなければ、どこで暮していけばいいのか分からなかった。だから、住む場所を与えられて本当に良かった。


 どうにかして住む場所だけは確保できたけれど、必要なものが圧倒的に足りない。暮していく上で必要なものが沢山あるが、ここには何一つなかった。


「これから定期的にお金も手に入ると思う。少しずつでいいから、必要なものを買い揃えよう」

「食事、食事の道具が欲しいぞ!」

「家もなんとかしたいですね」


 食事の道具も必要だし、家もこのままじゃいけないと思う。家を建てるってどれくらいお金が必要になるんだろうか?


「食事の道具はなんとかなりそうだけど、食べ物がないよね」

「肉ならあるぞ」

「肉だけじゃダメですよ。主食や野菜などもないと、まともな食事が作れません」

「食事の道具はこの村の食糧事情が良くなってから買った方がいいかもね」

「小麦がいっぱいとれて、野菜が収穫できるようになってからですね」

「肉はウチが取ってくるぞ!」


 この村には買えるような食糧がほとんどない。農家の人たちが作っているそうだけど、収穫にはまだ時間がかかるそうだ。だから、早く作らないと飢え死にしてしまう。


 しばらくは主食の小麦を作っていって、沢山作り終えたら野菜を作らなきゃいけない。それもコルクさんと相談しながら決めていったほうがいいかな。


「家はどうする? ウチらで作るか?」

「私たちだけじゃ作れませんよ」

「またノアの魔法の力でどうにかできないか?」

「家を作る魔法ねぇ……」


 そんなのがあったら嬉しいけど、どうなんだろう?


「なぁなぁ、どうやったら新しい魔法を覚えるんだ?」

「多分、称号の賢者の卵をレベルアップさせると覚えるんじゃないかな?」

「どうやったら、レベルアップするんですか?」

「確かなことは言えないけど、賢者の卵は勇者の卵と聖女の卵に連動しているみたい。だから、勇者の卵と聖女の卵がレベルアップすれば、もしかしたら賢者の卵もレベルが上がるかもしれない」


 賢者の卵が生えてきた理由は、勇者の卵と聖女の卵を持つ二人を育てたからだ。だから、この二人をもっと育てていけば私の賢者の卵はレベルアップするはず。そうすると、新しい魔法も覚えてくれるはずだ。


「ふーん、じゃあウチらは自分の仕事をしないとノアの称号がレベルアップしないんだな」

「そういうことだね」

「それじゃあ、いつまでもノアの仕事を手伝ってはいられませんね。私たちも自分の仕事をしないと」

「そうなんだよねぇ」


 難しい問題だ。あちこちに問題があり過ぎて、どこから手をつけていいのやら。でも、先にこの村の食糧問題の解決が先決だよね。


「とにかく、今は沢山作物を作って納品しよう。しばらくは宿屋で食事をさせてもらって、石の家に住もう」

「そうですね。今はそれが一番だと思います」

「ここの寝床にも枯草を敷き詰めたいぞ。毛布だけじゃ、地面が痛い」

「あぁ、それもやらなきゃね。明日、朝一番に草刈りでもしようか」


 やることが山済みだ、とにかく一つずつクリアしていかないとね。


「そろそろ寝ようか」

「そうですね、眠たくなってきました」

「ウチも疲れたぞー」


 みんなでおやすみを言い合い、石の家で就寝した。


 ◇


 翌朝、石の家の出入口から光が差し込んできて、それで起きた。のっそりと体を起こして、毛布を畳むと外に出る。眩しい朝日が照り出してきて、清々しい気持ちになる。


 両手に生活魔法で水を取り出すと、それを顔にかけて水で洗う。濡れた顔は服の裾で拭いた。


「おはようございます」

「ふぁ~、はよー」

「おはよう」


 すると、イリスとクレハも起き上がってきた。


「ノアー、水頂戴ー」

「私もお願いします」

「はーい」


 両手を差し出してくる二人に生活魔法で水を生成する。手の中に水が溜まると、二人はそれで顔を洗った。


「くー、目が覚めた!」

「私もです」

「あ、ノアもう一回水頂戴」

「私もお願いします」


 もう一度水を出してあげると、二人はそれを飲み干した。私も喉が渇いているな、同じく水を生成するとそれを飲み干した。三人でプハーと息を吐く。


「よし、じゃあどうする?」

「草刈りしようか」

「宿屋に行くにはまだ早いですものね」

「おっしゃー、ノア草を刈ってくれ!」


 シーツの下に敷くベッドにする草刈りだ。そこの辺に生えている草に向かって風魔法を放ち、草を刈り取っていく。私が刈り取った後には二人が続いて、刈り取られた草を回収していく。


 三人で草刈りをしていくと、石の家の中は草まみれになった。草の匂いが充満して、ちょっと青臭い。


「ノア、乾燥したれー」

「はーい」


 クレハの指示で私は生活魔法の乾燥の魔法を放った。すると、草がみるみる乾燥していきあっという間に枯草になった。


「えーっと、整えてっと。これでいいですね」


 イリスが枯草を三人分山盛りにしてシーツを敷くと、これで寝床が完成した。


「これで今日はフカフカの上で寝られるな!」

「早くベッドで寝たいですけどね」

「ベッドも魔法で作れるのか?」

「どうだろうねぇ。作れるといいね」

「材料とかも色々と必要そうです」


 今は枯草ベッドで我慢するしかないけど、そのうちベッドで寝てみたいね。今後どんな魔法が使えるようになるかで、生活のはばが広がったりするんだろうか。称号の賢者の卵さん、どうかいい魔法を与えてくれますように。


「そろそろいい時間ですから、宿屋の食堂に行きませんか?」

「行こう! ウチ、お腹減ったぞー」

「クレハはいつもお腹が減っているね。よし、行こうか」

「やったー!」


 石の家から出た私たちは真っすぐに宿屋に向かっていく。


「昨日で小麦粉できたかな?」

「できていたら、今日はパンが食べられますね」

「パンか……食べたいぞ」


 さて、パンはどうなっているかな。期待に胸を膨らませて、私たちは宿屋に向かっていった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前々話で また、脱穀した後の藁を石の家に持っていき、ベッドの素材にした。草だけでは足りなかったボリュームが追加されて、以前よりは寝心地が良くなったと思う。 という文がありました。話が重…
[一言] 麦刈り取った時にわら大量に出来たのではないのかと思います
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