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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
第一章 始まりの土地

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12.事件発生

 路地で寝る時に比べたら、石の家で寝るのは快適だった。やっぱり壁や屋根があると安心感が違うのか、ぐっすりと眠ることができる。下に敷いた枯草もいい塩梅だ。


 しっかりと眠ることができると仕事も捗った。二人の稼ぎが少しずつ上がってきて、毎日そのことで盛り上がったりする。まぁ、私も負けじと稼いできているんだけどね。


 私たちの生活には希望が見え始めた。だけど、他の避難民の人たちはその逆だ。通りや路地で座り込む避難民の顔は暗く、明日への希望が感じられない。


 時間が経つにつれて避難民の様子が変わってきた。いざこざが多くなり、空気が常に張りつめているというかピリピリとした緊張感が漂っている。何かのきっかけで爆発しそうな雰囲気だ。


 そのせいで町民が避難民を見る目が厳しくなった。今までは同情するような目だったのに、目ざわりだと言わんばかりの視線を向けてくる。町全体の空気がピリつき始めた。


 領主様からは解決案も出されないまま、無駄に時間だけが過ぎていく。早く解決策を出さないと、何が起こるか分からない。毎日が綱渡りのような生活を送っていた。


 そんな緊張した日が続いた時、事件は起こった。


 私が素材採取から戻ってくると、門のところには避難民がいっぱいいたのだ。まるで町の中にいた避難民が全て追い出されたような感じに見える。


 避難民たちからは物凄い怒声が上がり、この対応を非難しているように見えた。もしかしたら、町にいたイリスも出されているかもしれない、そう思ってすぐにイリスを探し始める。


 怒号が止まない中を歩き回り、イリスを探す。しばらく歩いていると、見慣れた後ろ姿を見つけた。イリスとクレハだ。


「イリス、クレハ!」

「ノア!」

「良かった、出会えました」


 ようやく三人が揃った。少しの安堵をすると、すぐに状況を聞き出す。


「この騒ぎは一体どうしたの?」

「領主様の命令で路地や通りにいる避難民は町の外で待機、という風になったみたいです。なんでも町民とのいざこざが多発したのが原因だということでした」

「急に警備隊の人たちが来て、イリスたちを追いだしたんだって。酷いことするぜ」

「そっか、そういうことなんだね」


 領主様にとって大事なのは税金を支払っている町民だ。それに町にお金を落としてくれる避難民、宿屋に泊れるくらいの財力のある避難民も大事なお客として見ているのだろう。


 だから、路地や通りにいる余分な避難民を町の外に出した。いざこざの原因にもなっているので、これでスッキリしたと言えるのだろうが、問題は全く解決していない。


「なぁ、ノアどうする? ウチらギルドに用事があるのに、中に入れないぞ」

「そうだね。ギルドにだけ行かせてもらえるように、掛け合ってみようか」


 私は怒号が鳴りやまない中、門のところで待機している警備隊に近寄った。


「あの、すいません」

「なんだ、町には入れないぞ」

「私たちギルドに用があるんですが、ギルドだけでも行かせてもらえませんか」

「ならん! そういって、町の中に滞在する気だろう」

「でも、ギルドにいかないとお金が手に入りません。食事だって買えなくなります」

「ダメだダメだ! 食事に関してはしばらく炊き出しを続けることになっている、それを食べろ!」


 警備隊の人は聞く耳を持っていないみたいだ。どんなことを話しても、ダメだの一点張り。どうやら、一部の避難民を外に出すことは上の決定事項のようだ。だから、ギルドだけに行きたいという希望も適わない。


 警備隊の人たちから離れ、二人と話す。


「聞いてみたけど、ダメみたい。聞く耳を持っていないようだったよ」

「えー、そうなのか!? せっかく、今日の討伐は上手くいったのにギルドに行けないなんて」

「一応炊き出しはあるみたいだから、食べるものはありそう。だけど、十分な量を食べれるか分からないかも」

「そうですよね、こんなに人がいるんですもの。それに町の中で食べることもできないのであれば、炊き出しは戦争になりそうですね」


 二人ともがっかりとした表情をして肩を落とした。流石にこればかりはどうにもならない、私たちは避難民でしかないんだから、上の命令には従わなければならない。


 折角軌道に乗り始めたお金稼ぎだったのに、急にダメになってしまった。二人は分かりやすく落ち込んでいて、とても可哀そうだ。気楽な言葉はかけられないけど、少しは元気になってほしいな。


「しばらくは働けなくなったけど、のんびりできそうだね。そうだ、折角だから二人のこと詳しく教えてよ。生活のことで頭が一杯だったから、そういう話をしてなかったでしょ?」

「ウチらのことか? それだったら、ノアのことも知りたいんだぞ!」

「ふふっ、みんなでお喋りも楽しそうですね」

「とりあえず、家に帰ろうか」


 大丈夫、私たちには帰るべき家がある。騒がしい避難民の中を抜けて、壁伝いに門から離れていく。しばらく歩くと、自分たちの家が見えてきた。


 さて、中に入って休もう。そう思って中を覗くと、見知らぬ男性が横になっていた。


「なっ、ここで何をしているの!? ここは私たちの場所だよ!」

「あぁ? うるせぇ、見つけたのは俺なんだ。だから俺のものだ」


 一瞬ビックリしてかける言葉を見失ったけど、勇気を出して自分の場所だと主張した。だけど、男性はけだるそうにしているだけで、その場から立ち去ろうとはしない。


「そこから、出ていって。そこは私たちの場所!」

「そうだぞ、出ていけ!」

「出ていってください!」

「うるせぇ、うるせぇ! ここは俺の場所だ、お前らこそ出ていけ!」


 三人で訴えるけれど、男性は全く動こうとはしない。それどころか、この場所を自分のものだと主張し始めた。出ていってくれないと困る、ここは私たちの場所なんだ。


「出ていかないと、火だるまにするよ!」

「ウチの剣で斬られたくなかったら出ていけ!」


 魔力を放出して火を作りだし、クレハは剣を抜いて剣先をチラつかせた。それを見た男性は一気に顔色を悪くして、慌てて石の家から飛び出してくる。


「くそっ! お前ら、おぼえてろよ!」


 男性は捨て台詞を吐いて走り去っていった。


「はー、何事もなくて良かったぞ」

「なんとか取り戻せたね」

「二人とも、ありがとうございます」


 避難民が外に出てきた弊害が出てきたのかもしれない。三人でホッと安堵をすると、小さな笑顔も零れてくる。とにかく何事もなくて本当に良かった、実力行使だったけれど仕方がないよね。


 私たちは石の家の中に入り一息ついた。


「驚きましたね、ここに人がいるなんて」

「誰もいなかったから、つい中に入っちゃったんだと思う」

「それにしても、ノアが作ってくれたのに自分のものだと主張するのは可笑しかったぞ」

「まぁね、誰もいなかったのが原因だろうね」

「これからはしばらくここにいることになりますし、奪われなくてすみますね」


 居心地が良さそうに見えたんだろう。何もない地面に寝そべるよりは、壁があったほうが安心するしね。こういう場所があったら、そこで寝たい気持ちは分かる。だけど、ここは自分たちの家だ、渡すわけにはいかない。


「今日の炊き出しってあるかなー」

「どうなんでしょう。騒ぎを見る限りではなさそうな雰囲気ですが」

「えー、お腹空いたぞー」


 三人で石の家の中、ゴロゴロしていると外から騒がしい声が聞こえてきた。三人で顔を見合わせると、気になって外に出てみた。すると、先ほど家の中にいた男性が警備隊の人を連れてやってきたのだ。


「ほら、ここです。こいつらが不法に家を建てた犯罪者です!」

「なっ!?」


 男性は私たちを指さして犯罪者呼ばわりをした。そのことに驚いていると、警備隊の人が近づいてきた。


「不法に土地を使用した罪で君たちを連行する」


 警備隊の人があっという間に私たちを取り囲み、腕を掴まれる。連行するって、私たち捕まっちゃうの!? これからどうなるの!?

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