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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
第四章 新しい手と豊かな生活

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118.ドーナツとホットミルク

「「「ごちそうさまでした」」」


 三人で手と声を合わせた。


「ふー、美味しかったんだぞ。まさか、ドロドロのスープが出てくるとは思わなかったんだぞ」

「そうですね、あんなスープがあったなんて知りませんでした。はじめは美味しそうに見えなかったんですが、一口食べたら世界が変わったみたいです」

「あのなめらかな口触り、クセになりそうなんだぞ」

「あの食感、良かったですね。パンとの相性もバッチリでしたし、今までのスープよりはこっちのほうが好きです」


 食後の感想を二人は楽しそうに話していった。二人ともクリームシチューが気に入ったみたいで、皿に残ったスープを綺麗に千切ったパンでとるほどに気に入ってくれたみたいだ。


「そういってくれて嬉しいよ。今度からクリームシチューもメニューに加えるね。飽きないように味も変えていくね」

「どんな味があるんだ?」

「例えばカボチャを入れてカボチャの風味を足したり、とうもろこしを入れてとうもろこし風にしたり。あ、それだと普通のポタージュにすればいいかな?」

「それもパンにつけて食べるものですか?」

「そうだよ。ポタージュだったら固く小さくしたパンを入れて、食べることも出来るよ」

「わー、とても気になります!」


 クリームシチューが作れるんだったら、ポタージュも作れるよね。じゃがいも、かぼちゃ、とうもろこし……うん、味は色々ありそうだから飽きずに食べられそうだ。


「でも、今日は肉の塊がなかったから、ちょっと物足りないんだぞ……」

「お肉ならシチューに入ってましたけど」

「お皿に乗った肉がいいんだ」

「お皿に乗った肉はないけれど、お皿に乗ったドーナツならあるよ」

「「ドーナツ?」」


 二人は不思議そうな顔をして首を傾げた。


「クリームシチューは牛乳を使った料理だけど、まだ卵を使った料理は出してないよね? 今度の料理は卵を使った料理なんだよ。しかも、お菓子になるんだ」

「お菓子ってあのお菓子か!」

「孤児院で時々出ていた甘い食べ物ですね!」


 どうやら二人はお菓子というものを食べたことがあるらしい。それなら、詳しい説明はなくても良さそうだね。


「小麦粉や卵を使って生地を作り、円にして油で揚げて砂糖をまぶした食べ物なんだ」


 私は席を立つとキッチンカウンターに行った。そこに置いてあったドーナツが山となって積まれた皿を持つと、ダイニングテーブルに戻る。皿をダイニングテーブルの上に置くと、時間停止の魔法を解いた。


「甘い匂いがしてきたぞ」

「どんな食べ物なんでしょう」

「柔らかくてパンに似た食べ物だよ。ふんわりして美味しいんだ。あ、そうだ! 飲み物を用意するからちょっと待ってて」

「じゃあ、その間に食器を片づけておきますね」

「洗浄魔法を頼むんだぞ」


 使い終わった食器に洗浄魔法をかけて、私は食糧保管庫に近づいた。その中から低脂肪牛乳が入った瓶を取り出すと、棚からコップを持ってきてキッチンカウンターに置く。そのコップの中に牛乳を注ぎ込んだ。


 瓶を食料保管庫の中にしまうと、今度は棚から砂糖を取り出す。その砂糖をスプーンですくってコップの中に入れた。全てのコップの中に砂糖を入れると、溶かすように混ぜる。


 次に牛乳を温めていく。発熱の魔法を牛乳に向けて発動させた。しばらく魔法を発動していくと、コップに湯気が立ち上った。これでホットミルクの完成だ。


 そのコップを持って、二人が待つダイニングテーブルに近づいた。


「二人ともお待たせ!」


 二人の目の前にホットミルクを置くと、二人は興味深そうにコップの中を見た。


「これはなんだ?」

「牛乳だよ。っていっても、バターを作った後に出来たものだから、本物の牛乳とは違う味わいだけどね」

「湯気が立っている、ということは温めたんですか?」

「そうだよ。砂糖を入れて温めると、ホットミルクになるんだ。ドーナツと相性がいい飲み物だと思うよ」


 へー、と二人は感心をした。


「これで準備が調ったから、ドーナツを食べてみようよ」

「どんな食べ物か気になるんだぞ」

「では、いただきましょうか」


 三人でドーナツを手にすると、ほのかな温かみを感じた。三人で目くばせをすると、同時にドーナツにかぶりつく。瞬間、柔らかい生地の感触と甘い砂糖の味が口に広がった。


「うん、上手に出来てる!」


 柔らかい生地はフワフワしていて美味しいし、白い砂糖で純粋な甘さを感じさせてくれる。とても上手にドーナツが出来ていた。反応のない二人を見てみると、驚いた顔をしながらドーナツを食べている。


「どう? 美味しい?」


 声をかけると、二人がこっちを向いた。


「なんですかこれ、すっごく美味しいです!」

「信じられないくらい美味しいぞ!」

「パンのようでパンじゃない、中はフワフワで外はカリッとしていてとっても美味しいです!」

「これがドーナツというお菓子なんだな! こんなに美味しいお菓子は初めてだ!」


 堰を切ったように話し出した二人はそのままドーナツを食べ進める。とても幸せそうな顔をしてドーナツを頬張る姿は見ていて気持ちのいいものだ。


 一つのドーナツを食べ終える頃になると、名残惜しそうに指についた砂糖を舐めた。


「ホットミルクも飲んでみて」


 そういうと二人は思い出したかのようにホットミルクを飲んだ。


「美味しいドーナツの後のホットミルク……とってもいいです」

「すっごく良く合うぞ」

「二人とも、気に入ってくれた?」

「それはもちろんです! パンのようでパンじゃないお菓子、ドーナツがこんなに美味しいものだったなんて!」

「これなら毎日でも食べたいんだぞ!」


 どうやら二人ともドーナツもホットミルクも気に入ってくれたみたいだ。肉がなくて物足りないっていっていたクレハだったけど、そんなことがあったなんて忘れているぐらいな様子だ。


「ドーナツはいくつか残しておいてね。そしたら、明日の分に出来るから」

「そっか、明日の分もあるんですね」

「でも、それ以外は食べていいんだよな!」

「うん、大丈夫だよ」


 私の言葉を聞いた二人はパァッと顔を明るくして、二個目のドーナツに手を伸ばした。そして、とても美味しそうに食べる姿を見て、私は嬉しくなって笑った。


 やっぱり、三人で食べると美味しい物がもっと美味しく感じられるね。


 ◇


 明かりが消えた家の中、それぞれのベッドの中でお喋りをする。


「はー……今日の料理はどれも美味しかったです」

「ウチはドーナツの衝撃が忘れられないぞ」

「そんなに美味しかった? 作って正解だったね」

「きな粉揚げパンと似ているようで、違う食べ物でしたね」

「確かに似ているなー」


 眠たくなるまで今日食べた料理の話をした。クリームシチューが美味しかったとか、ドーナツが衝撃的だったとか、そんな話だ。


「ノアは私たちが知らない料理をいくつも知っているんですね」

「そうだな、どれもこれも知らないものばかりなのに、どれもこれも美味しいんだぞ」

「二人に喜んでもらえて嬉しいよ。牛乳と卵が手に入ったから、色んな料理が作れるようになったよ」

「へー、どんな料理を作るつもりなんですか?」

「聞きたいな!」


 未知なる料理に興味津々の二人。さて、何を作ろうかな?


「普通の卵料理でもいいし、パスタとかも作れそう」

「パスタってなんだ?」

「小麦粉を合わせて作る、細長い食べ物のことだよ。パンとは違って、これも美味しいよ」

「パスタですか……気になります」


 卵があればパスタの麺が作れると思う。そしたら、パスタ料理なんていうもの作れるなー。


「お菓子とかは出来るのか?」

「出来るよ。そうだなー……プリンとかクッキーとか作れそう」

「パンはどうなりますか?」

「バターをつくれば、それを使って美味しいパンも作れるよ。あ、フレンチトーストとかも出来そう」


 牛乳と卵があるだけで、色んな料理が作れる。作りたいものが沢山浮かんできて、やりたいことが渋滞してきっちゃった。


「肉料理はどうだ?」

「肉料理は……うーん、今だったら難しいかな」

「ふふ、パンは新しいパンが作れるんですね」

「イリスばかりズルいんだぞー」

「クレハだって、パンよりも種類豊富な肉料理があるでしょ?」


 新しい料理の話は尽きない。三人でベッドに横たわりながら、楽しいお喋りの時間は過ぎていった。

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― 新着の感想 ―
パスタはペンネも有りますからグラタンの具材にもなります。 蝶型のヤツも可愛いよ。
[気になる点] 折角、仲のいい三人組なのに助け合うと言うよりは主人公が前世の知識で一方的にご奉仕してるだけになってるのが残念です。
[一言] こういう牛乳を使った食べ物の話になるといつも感じることがあります。乳糖不耐症でなくて良かったですね、と。 ちなみに、乳糖不耐症は病気ではなく、成長すると自然に乳糖を分解する酵素活性が低くなり…
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