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ショートショート9月~3回目

几帳面な猫

作者: たかさば
掲載日:2022/09/17

 実家の猫が、慣れない。


 毎日顔を合わせるようになって、まる三年。

 攻撃こそされないが、全くなつかない。


 掃除の際に近づけばそそくさと立ち去り。

 餌を食べている横に立てばそっと立ち去り。

 極力対面しないよう、絶対に同じ空間にいないよう、動き回る。


 限りなく堂々と、避けられている。


 私は熱心な猫愛好家ではないので、友好的ではない猫に媚を売るような事はしない。

 ばったり出くわした場合は仕方がないが、わざわざ姿を拝むために近づくような事はしない。


 基本、無関心なのだ。


 猫が目の端にいても、気にしない。

 猫が日向ぼっこをしていても、気にしない。

 猫が布団の中に潜り込んでいても、気にしない。


 猫がいてもフローリング掃除はする。

 猫がいても洗濯物を干すし取り込む。

 猫がいても新しい毛布をベッドの上に置く。


 猫は、たいがい私に近づくことはしないが。


 やけに母親のもとに行く。

 やたら父親のもとに行く。


 私が猫のそばを通るたびに、母親のもとに行く。

 私が猫を跨ぐたびに、父親のもとに行く。

 私が猫の前を横切るたびに、ぐるりと後ろを向いて母親のもとに行く。

 私が猫を追い抜くたびに、いきなり進行方向を変えて父親のもとに行く。


 私と接近するたび、几帳面に、母親と父親のもとに出向く猫。


 猫は時折にゃあと鳴き、母親と父親を見上げるのだ。

 私とは目を合わせようとすらしない猫は、真ん丸な目で母親と父親を見つめるのだ。


 これは……もしかして。


 あいつがわたしのちかくにきたんですよ!!

 あいつがわたしをまたいだんです!!

 あいつがわたしのまえをよこぎって!!

 あいつのくせにわたしをおいこしたんですよ?!

 あいつがいるならごはんなんかたべたくないです!!

 あいつわたしのうえにものをのせました!!

 あいつあしおとがうるさいんです!!

 あいつじゃまなんですよ!!

 あいつなんなんですか?!


 真っすぐに母親の目を見つめて、懸命に訴えているのではあるまいか。

 じっと父親の目を見つめて、切実に不満を申し立てているのではあるまいか。


 ……真実は、わからないが。


 猫の不愉快なオーラは、確実に実家の中に漂っている。

 猫の不機嫌なオーラは、確実に私に届いている。


 猫がどれほど訴えても、私は毎日実家に現れるというのに。


 君は家事ができないからね。

 君は送迎ができないからね。

 君は受け答えができないからね。


 猫が猫である限り、私は毎日、猫の前に現れなければならないのだ。


 猫は、相当ストレスがたまっているかもしれない。

 気に入らないやつが、毎日家に来るから。


 猫は、ストレスがたまっていないかもしれない。

 気に入らないやつの告げ口を、毎日しているから。


 猫の本心は、解らない。


 ただ、一つだけ、解っているのは。


 …ッ、しゃー!!!


 手を伸ばしただけで、この仕打ち。


 私には、実家の猫の頭をなでる事ができそうにない、という事である。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  あいつがわたしのちかくにきたんですよ!!  あいつがわたしをまたいだんです!!  あいつがわたしのまえをよこぎって!!  あいつのくせにわたしをおいこしたんですよ?!  あいつがいるなら…
2022/09/17 23:36 退会済み
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