表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/31

タッグイベント——④

「お疲れ様です、何か買って来ましょうか?」


控室に戻って来た両チームのメンバーに対して、伊織と【カロン】のマネージャーはなるべく当たり障りのない言葉を選びながら労いの言葉をかける。


「う〜ん、じゃあメロンパン!」


「こら紫月、そんな事言ってる場合じゃないでしょ?」


他のメンバーたちよりも元気な装いでパンを頼む女性は、aceと共にやられてしまったカロンのメンバー【紫月】だ。


「チッ」


彼女たちの様子を見てなのか、それとも伊織の言葉にイラついたのかは分からないが、ヨルが分かり易く舌打ちをした。


「ご、ごめんなさい」


ヨルが纏う雰囲気を察して直ぐに伊織が謝った。


「はぁ…そんなことよりも、今日の試合はこちらのミスでこの様な結果になってしまって本当に申し訳ない」


試合終了から幾許か経過して冷静に先ほどの試合を分析したのか、カロンのメンバーに向けて頭を下げる。


「そんな、こちらもミスをしてしまいましたし、謝るのはこちらですよ」


そう言いながらサクラは両手で頭を上げるように促す。


「ほら、そこの女も言ってるんだぜ?俺らが謝る必要なねぇよ」


最も大きな敗因を作ったと言っても過言ではない男が悪びれもぜずにそう言い放った。


「おい!いい加減にしろよ!」


「俺、何か間違ったこと言ってるか?」


こう言ったことに関しては常識があるヨルはふざけた態度を取るをれっとに檄を飛ばすが、をれっとはそれを余計に煽り始めた。


「お二人ともそれ以上はまずいですって!」


「「お前は黙ってろ!」」


「ご、ごめんなさい……」


危ない方向に状況が転じてきたので止めに入った伊織だが、かえって二人のダブルパンチを食らってしまった。


「もう結構ですよ。私たち、次の収録が控えていますので」


 この一瞬にして【祝い酒】の黒い中身が見えかかってしまったからか、淡白にその場を立ち去ろうとするサクラ。それを見て関係値を回復させたいのか、妙に謙る様な態度を取り始めた。


「え、もう少しゆっくりしていけばいいじゃないですか、なんならご飯でも食べに行きましょうよ。勿論お代は自分達が持ちますので」


「いえ、本当に時間が押していますので、すみません」


彼女たちの代わりにカロンのマネージャーが答えた。

それに対してやはり不満なのか若干眉を下げる。


「ほんとすみません、負けたことで上が勝手に予定を繰り上げちゃったみたいで…後日また伊織くんを通して連絡しますので」


「別に伊織(コイツ)を通さないで直接連絡でも大丈夫ですよ?そっちの方が話も早いですし」


伊織を間に挟むと言うと余計に眉を寄せた。


「こちらにも形式がありますので……」


サクラは自身が話をした方が早く場が収まると考えた様だが、余計に深く聞かれてしまい段々と言葉がたじたじになってしまう。


「本当に時間大丈夫ですか?もうすぐ18時になりますけど……」


丁度ヨルの言葉が切れたときに伊織が時間を気にしてサクラに直接それを尋ねた。


「これ以上は本当にマズいですね…ここで我々は解散とさせてもらいますね。次の連絡はまた後日に」


伊織がこの事を言ったことで、帰りやすい状況になったカロンはその機を逃さずを控え室から去っていった。


カロンが控え室から離れて少しすると、【祝い酒】の面々から外向けの仮面は消え去った。


「おい、余計な口出しするんじゃねぇよ」


真っ先に口を開いたのはやはりヨルだった。


「ごめんなさい…」


「あーあ、もう少しでこっちに引っ張れたのになぁ〜」


aceは手を頭の後ろに組んで気だるい様な装いで愚痴る。


「……ごめんなさい」


「ごめんなさいじゃねぇだろうがよ!もっと相応しい言葉があるだろうがよ!」


いつも通りに荒い言葉でをれっとが詰め寄る。


「……申し訳ございませんでした」


そう言って伊織は頭を腰から折って下げる。

 その時の彼らの表情は伊織は知らない。


◇◇◇


 タッグイベントから数日経ったある日、いつも通りに作業をしている伊織の元に一通のメールが届いた。


『成瀬伊織様

 先日のタッグイベントでは本当にありがとうございました。

 突然で申し訳ないのですが、今回のイベントの件と今後についての打ち合わせを行いたいので……』


(あんなことがあったのによく連絡してくれたなぁ…あれは明らかに行き過ぎだったし、何を言われてもしっかり謝らないと……ツールはいつもと同じでTelCodeでかな?)


そう思いながらメールをスクロールしていくと、続く文章に伊織はいつもより目を大きく開けた。


『伊織くんが大丈夫なら直接会ってでの打ち合わせを行いたいのですが、ご都合が良い日時を教えていただいてもよろしいですか?良いお返事をお待ちしております。サクラ』

読んでいただきありがとうございます!



下にある☆を★★★★★にしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ