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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
呪われし荒野戦記(粗暴なオーク達の戦い)
9/82

9.

 しかし我に地の利は無い。


 我はオークシャーマンに地形を問う。知らぬならカラスを偵察にと思ったのだが、何やら生きるパワーを使いこんでしまったとか言って急に黙り込み、挙句には体調を崩して寝込んでしまった……。


 仕方ないので、我は屈強な女オーク戦士の召使に抱っこされながら、思いのままに我の足となってもらって、他のオーク共に周辺の地形を問う。が、こいつ等どうやら放浪民の類であったようだ。全然わかっていない。ならば地元で下らせた奴らに聞く。しかしこいつ等はアホばかりで、何故か先祖の偉大さを誇示しだす始末である。


 あちこち移動していると、突如として我は凄まじい猫なで声ならぬ猫なで視線を感じた。我は悪寒の原因の先へと振り返る。


「…………」


 目が合うそこに居たのは、仲間になりたそうに牢の戸をガシャガシャする敵前逃亡の敵将であった。


 ガシャガシャ……。


 我は一呼吸置く。そして目を瞑り、頭の中で自身を俯瞰してみる。よく考えろ。オークの将はどれも戦死した。だがこいつは臆病風に吹かれて逃げ出した。そして北の軍に一縷の望みを託して合流している。それに迷いはなかった。オーク共でも狡猾な可能性があるのか? ならばもしやこいつは雑魚なのではなく、少し頭がまともだったのではないか?


 我はこの敵将の顔を遠目で眺める。


 守衛は戸を蹴って脅してケタケタ笑う。敵将はウガオッ! と、怒って隅へ行ってしまった。


「すぅ……ちょっとまて」

「イエア様、うへぇ! こいつは将の器じゃねぇ~でっせ! 将でありながら、臆病オークの捕虜オークは雑魚ゴブリンの奴隷扱いだ!」

「ウゥハッハッハ!」

「ガッハッハッ!」


 笑うオーク。正直、目糞鼻糞笑うと少々辛辣になった我であったが、我は牢の隅でいじける敵将へ話しかける。


「おい、そこのお前。水があって草があって、木材とか金属とかも取れて、できれば険しい守りやすい場所を知らないか?」

「──そんな都合の良い場所、このクソ呪われし荒野であるかっ!」


 背を向けたまま怒鳴り散らす敵将。ふぅむ。やはりだめか。確かに都合がよすぎる。ならば……自分の足で探すしかないか。


「──だが、俺を仲間にしてくれたら可能性のある場所は教えれる!」


 ……ほう? すると少し間を置いて敵将は、戸へ寄ってゴマすり始まり、ヘタっとにやけて見せる。……いや、禍々しい隠しきれない牙が、にやけた顔を一層酷い物にしてしまっているが、我は出来るだけ見た目に依らない公正な視点で接しようと努力する。


「どこだ?」


「それは~……ねぇ?」


 こいつ……。しかし、他の脳筋どもとはやはり違うな。


「いいだろう。ただし案内が済んだ後に仲間にしてやる。それまで手枷足枷は外せないぞ? いいか?」


 敵将は頭を上下に振る。


「よし。──守衛。こいつを牢から出せ。警戒は怠るなよ」

「えぇ!? いいんスか?」

「かまわん。ただし、妙な真似したら殺せ」

「へ、へい……」


 マジかよと牢のカギを外し戸を開け、手枷足枷を敵将に装着する守衛。妙に素直でおとなしいのが気に食わなかったのか、守衛は無意味に敵将の横っ面を殴った。怒るか? しかし


「へっへっへ~」


 と、敵将は余裕のヘタリ顔。守衛はそのまさかの酷い笑顔に引いてもう一発殴るのをためらった。気持ちは分からないでもない……。


「貴様の名は何という?」

「──ボンガー」

「ボンガー……。では、ボンガー。まずはどこへ向かう?」


 ボンガーは川の先の、内陸を見た。……まぁそうだろうな。


 もしこいつの情報がダメでも我は一応行く先の目星は付けていた。恐らくは川の上流を目指せば良いのではないか? と。 水は高い所から低い所へ流れ込む。その始まりは基本山であり、大した根拠ではないが山には木や金属がありそうである。とまれ、川沿いに進むのであるから、少なくとも水資源は確保できる。水があれば、そのうち肥沃な場所にも巡り合えるかもと思っていた。


 そこでボンガーは言う。


「川の底をさらってみろ」


 我は部下に川の底を少しさらわせる。我はその砂を見る。黄土色の砂に、赤茶げた砂。角が取れた丸い石にと……。そして我はふと磁石が欲しくなった。砂鉄があるかもしれない。しかしそこにあったのは、


 黄金色に輝く粒であった。


「──まさか」


 ボンガーは禍々しい牙をむき出して満面の笑みである。

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