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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
リラティヴィステットラント介入戦争
77/82

77.

 こうなったら仲間を信じるしかない。我等は仕方なく着座する。


 彼らは毎度の如く名乗るだろうか? 一応礼儀であるし。だが我は名前をなかなか覚えない。覚える気さえない。しかし貴族連合の面々は注がれる葡萄酒を嫌がって遠ざけると、自分らを知っていて当然と構えて、いきなり切りだしてきた。


「貴方方がエラグラウム帝国の方々ですかな? 噂はかねがね。帝国のかくも小さき名将をご拝謁出来て、私たちは至極ラッキーである」

「そうか。いちいち驚かれないでよかった。アレには飽き飽きしている」

「私たちは貴方方の到着を待っていたのだ。どうしようもなかった私たちの愚王を排除してくれた、貴族でもある貴方方なら、私たちの気持ちも分かってもらえると思ってな」

「だと良いのだが。あなた方はもう何度も口論しているのだとか聞いたが、それでも根気強く話し合いで解決しようとする姿勢は我等としても賞賛に値する」

「それは痛み入る」

「で、だ。もう言い飽きているだろうが、再度要求お聞かせ願いたい」

「直ちに民衆の武装解除を願いたい。そして民主化運動の解散と、従来の統治体制への帰参を求める」


 民衆から一斉にブーイングの嵐が巻き起こる。すぐさま民衆代表が手を上げそれを何とか鎮めると、我は話を続ける。


「──無論、今更それは無理なのは分かるだろう。故に、そちらの妥協案はなんだ?」

「話が早いな。私たちは間所通行の規制緩和、通行税の減税、人頭税の減税、教会に対する貴族支配をご支援頂ければ、教会の課す十分の一税も何とかして見せよう」


 面白い。だが、民衆はまたもブーイングの嵐。民衆は口々に叫ぶ。


「信用できるかボケ!」

「そもそも減税で済む問題ではない!」

「貴族の専横がそもそもの元凶だろ!? 舐めるなよ!」

「そうだそうだ! 今更減税なんて意味がない!」

「貴族の権力をおいら達にも寄こせ!」

「嫁を寝取られて泣き寝入りなんか、絶対にあってはならない事だろ!」

「貴族共はそこを理解していない! 鼻っから俺達を馬鹿にしている証拠だ!」


 貴族が大声で制して反論する。


「──聞け! それも分かっている! 悪法である()()()の撤廃は勿論の事、貴族による横暴を防止する法を制定して流布する用意も私たちにはある!」


 しかし民衆のブーイングは収まらない。しかし初夜権? 一体なんだそれは……。そんな法律があるのか……(※ググって見て下さい。本当にあります)。


 民衆代表はブーイングに煽られていい加減昂って発言する。


「はぁ!? 貴族の横暴を取り縛るのは一体誰なんだ!? そんなの居る訳ないだろ! 取り縛れば権力に物言わせて何されるかわかったもんじゃない! そんな事できる奴なんか居る訳ない!」

「第三者機関を作る! 独立した法務機関を作って平等公正に取り縛ると何度も言っているだろうが!」

「その法務機関とは一体どんな背景があって専横する貴族を取り縛れる機関と言うのか!」

「貴族にも依らない法の力を作る!」

「だからその貴族にも依らない法を行使できる存在とは一体なんなんだ!」

「国家による力だ!」

「違うね! お前等の言う国家は貴族による支配だから、それはつまり貴族による貴族の為の法務機関になるだろ! 巧みに嘘をついて我等を騙そうたってそうは行かないぞ!」

「ぐぬぬ! 何故理解できぬ! キャッツェガング王の専横は我等も我慢できぬ所業だった! それが二度と起きない様にしようと努力しているのに、なぜお前達()()()()()()()が偉そうに口出しするのか! お前達に一体何がわかる!」


──はい、炎上。


 貴族連合は失言しました。事実はどうあれ、民衆を素人愚民扱いして見下した為、ブーイングにブーイングが重なり、中にはキャベツやトマトを広間に投げ入れるものまで現れた。警戒していた第十軍兵士は一斉に割って入って話し合いの場の防備を固めた。貴族連合は唇を嚙み愚痴をこぼす。


「くぅっ! 読み書きも出来ない愚民共が! そんなんでどう競争の激しい国際社会を生き抜けると言うのかっ! この礼儀知らずの無礼者共め!」

「実際、国は滅茶苦茶だろ! お前等貴族が今まで統治していたんだぞ!? それが今はどうだ!? これを招いておいて、なにが素人だ! 素人はお前等じゃないか!」

「今の現状は私たちのせいではない! 王権を乱用したアホのせいだろう!」

「アホ王をいさめるのも貴族の仕事だろ! お前等は何をしていた! 自領に引き篭もって指くわえて見ていただけじゃないか!」

「そこまで文句があるのなら直接言えばよかっただろ!」

「そんな事したら殺されてた!」

「それは貴族とて同じだ! 絶対王に逆らえるはずなんか無いのは私たちも一緒だったのだ!」


 どんちゃんどんちゃん─────…………。


 さて、どうしたものか。民衆の貴族への信頼度はゼロである。片や貴族は大分譲歩している様に見えるが、最後まで既得権益にしがみ付こうとし、しかも本音は民衆を素人の愚衆扱いして見下していている。これはもう両者は水と油である。


 これを我等はどうやってその乳化剤となり、美味しいマヨネーズに仕立て上げるのか……? やれやれ……。これは相当骨が折れそうだ……。

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