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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
秘密の金柑(人間世界の陰り)
65/82

65.

 我の頭を撫でて以来、我の美女騎士抱っこ係はやたらと我の頭をフワフワモフモフ、モフしだいてくる。


 何事かと尋ねると、


「そ、その……。申し訳ございません。猫の毛の様にしなやかでチクリともしないフワフワモフモフに、どうにも我慢がならないのです……!」


 とか言って、またモフしだいてくる。まぁ悪い気はしないので不問とするが、我の頭がそんな毛に覆われているなんて、今更ながら気付いたのである。なるほど、姉レヴィアや妹エルマがくっついて離れない訳である。そう言う事だったのか。思えば妹エルマも、そんな頭だったな……。確かに、あれはフワフワモフモフせざるを得ない……。


 とまれ、我は捕虜の輩共を王ゴッズフィストに好きにせよと委譲した。


 すると王ゴッズフィストはゴブリンコボルトといい、何かと労働力の提供に喜び、かわりに隠し金山の進捗状況を極秘裏に見せてくれた。


 全員人払いである。


 唯一、王ゴッズフィストの妃となった初代屈強な女オーク戦士抱っこ係が我を抱っこし同行した。屈強な女オーク妃は久々の我の抱き心地に頗るご満悦である。相変わらず口から飛び出している牙が禍々しい。


 それはともかく、掘り起こされ製錬された金は、なんと僅か数か月で、ビバリーヒルズにありそうな家庭用プール一杯分にもなるのではと言う程にもなっていた。これはとんでもない量である。掘り起こしたゴブリン共は、自慢げに鼻を高くして煙草をふかしていた。


 取り扱いしやすいように麦チョコ状になったこれを、もし人間世界、とりわけエルグラウム帝国にもたらしたら、確実にかつてのスペイン帝国の様にインフレ起こして大変なことになりそうである。


 我は謙虚に、七升程度、拝借する事にした。


 王ゴッズフィストは、それだけで良いのかとガッカリしたが、まだ此れの出番ではないと我は説き伏せた。


 市場を荒らした時、最初は母のツケで幾らか借金をしたのだったが、結局協賛してくれた大商人やギルドが立て替えてくれたし、それに母エミリアの金一億でぜんぜん何とかなるレベルだった。いや、そもそも金一億がヤバすぎるのだが、我は枯渇した軍資金と、個人的に買ったプレゼント代を回収できればそれでよかった。


 因みにその金一億なんだが、チラッと見せてもらった感じでは、全部が全部帝国金貨という訳ではなく、銀貨や白金貨、更にはドワーフ王国の最高額硬貨であるミスリル大判硬貨なども交じっていた。初めて見るミスリルは妙にヒンヤリしていて、アルミの様に軽かった。だがその値打ちはドワーフ王国のミスリル輸出規制もあって想像もつかないと兄アルネスは言っていた。どう計算されているのだろうか? 溶かして装備にしたら罰せられるだろうか? 日本の硬貨みたいに。


 とまれ、母エミリアの金一億は、十万人の維持雇用費として消費されてゆくだろう。とはいえ、いずれは税で取り立てるのだから、つまり結果として新設伯爵領ミュースを巡り巡る貨幣の一部となっていくわけである……。そう考えると、一般に出回っている貨幣の総量って、どの位なのだろうか? 今度、帝国中央銀行の頭取にでも会って聞いてみよう。我は現在、それだけの地位を持っているはずである。


 宴に酔っぱらった第十軍兵士の目の前に、ドサッと七升分の金の麦チョコを披露してみる。すると酔いもあってか目の色が変わる第十軍兵士。金が人に及ぼす魔力とは凄まじい。我は試しに一人一粒だぞと言って開放したら、あれだけあった金の麦チョコが一瞬で食べられてしまった……。


 我は王ゴッズフィストに言って、極秘裏にもう十四升分の金の麦チョコをお願いした。すると王ゴッズフィストは我の言った人が持つ金の価値を目の当たりにして大いに笑い、今度は二十升分の金の麦チョコを我に寄こしてきた……。


 帰ったら、ミュースに残してきた第十軍兵士に七升分分配しよう。でないと不公平である。


 試しに十四升分の金の麦チョコを第十軍兵士に賞与として分配したとして計算したら、一人当たりのその価値は、日本の雇用水準の数か月分より少なかった。まぁいいか。まぁいいだろう。軍隊とはブラックだよな。代わりに十分従軍した兵士には、その功績分に合わせて新設伯爵領ミュースの地権が与えられるのだから。


 とまれ、捕虜の移譲は済んだ。我等第十軍は二日酔いの中、撤退を開始する。早く帰って冬支度の手伝いをしないと、多くを凍え死なせる事になってしまう。雪冠る山脈の拠点はドワーフの掘った穴で、炉もあり存外快適な生活環境が整っているが、新設伯爵領ミュースにはまだ家すらないのだ。


 王ゴッズフィストを筆頭にオークゴブリンコボルト共は、我との早い別れを残念がった。王ゴッズフィストはせっかくだから手ぶらで返すわけにはいかないと、代わりに若いボアファイターを百人寄こして自由に使ってくれと言ってきた。が、我はボンガーだけでも人の理解を得るのに苦労している。


 ただ、我は王ゴッズフィストの気遣いに配慮せねばならない。彼は王なのだ。彼の顔に泥を塗ってはならないので、我はボンガーの世話係として行儀の良いゴブリンとコボルトを一人ずつ代わりに要求した。王ゴッズフィストはそれを快諾した。


 賊は素行悪く人権を失った。しかし皮肉な事に、代わりにオークゴブリンコボルトは我によって人権を与えられつつある。その事に今はまだ人間共の中に強い反発は無い。しかし数を増やし脅威度が増せば、必ず歪が生まれてくるだろう。だからこの件は慎重にならざるを得ない。

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