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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
秘密の金柑(人間世界の陰り)
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57.

 我等は撤退する道中、とにかく村々から余剰の食料を買いあさった。


 かつての包囲が、入国して数日の所で助かったのである。そして、ルキウス卿のプリエクエス伯領に到達するや、多少高値ではあるが、食い繋ぐ食料を確保する事が出来た。


 もし、敵地奥深くでこのような状態に陥っていたらと思うとゾッとする。


 とまれ、第十軍に元々与えられていた五千石分(金貨十五万枚分十五億円)の現金は一気に底をついた。賊から奪った中古品の武器防具等の戦利品なんて二束三文だった。なのでこれらは売るのをやめて、ミュースへそのまま送る事にした。我は宮廷伯爵中将でその俸禄は年俸制で五千石であったが、給料振り込みはだいぶ先なので、やはり資金調達は母のツケにする事にした。


 だが、市場の商人はツケを当たり前の様に嫌ったので、次は大商人の所に行って母エミリアやルキウス卿の貴族である信用を利用して借りれるだけ借りまくって資金調達しようとした。踏み倒す気はないので安心してほしい。


 すると大商人は、借り入れの際に事情を探って来たので、我等は難民と共に食料や都市計画に必要な物資を買い漁って、拓けていないが土地は公爵領並みの新設伯爵領ミュースを開発する話をした。すると流石大商人である。様々なアイディアが次々と噴き出してむしろ投資しだすと言いだしたのだ。


 どうやら難民大量流入によって社会問題が深刻化しているらしい。大商人は、安い労働力は手に入るものの、それを取っても目に余る治安の悪化等に悩んでいたそうな。そこで出て来た我の計画である。大商人はこれに飛びつかない手はない様で、するとこの噂は一気に広まり、今度は保守的でマフィア見たいなギルド同士の意地の張り合いが勃発。我が第十軍の資金は黙っててもとんでもなく膨れ上がった。


 そしてそれと同時に一気に膨れ上がる貧困層と難民。彼らも食に瀕しており、これらも食わせなくてはならない。プリエクエス伯領の食料価格は言うまでも無く大暴騰したが、貧困層と難民を救った我が第十軍を、聖丁字教の教会は大いに評価してくれた。結果マッチポンプになっているのだが……。


 次いでローテツダッハ公領である。かつてすっからかんにした穀物庫はまだ全然溜まっていないし、ローテツダッハ美食家黄金の舌褒めたらちょろい公ブルクハルト閣下の不興を買う事は必至なので手は付けられない。


 だが市場は正常に回っているので、今度は資材なども含めてバンバン買いまくってまた例の如くその市場価格を大暴騰させた。次に暴騰させるのは帝都ユーヴェレンヒューゲルブルクの市場だろう。こんな事したらティトゥス皇帝陛下は元より、七大選帝侯からもお叱りを貰ってしまいそうだ。


 だが、そうでもしないと母エミリアの新設伯爵領ミュースはド田舎のままである。もはや我が帝国軍第十軍は、市場価格を暴騰させる蝗害となり果てていた。


 しかし、カネ余りのインフレなんか知ったこっちゃない。


 開発費は、元はと言えば重い取り立ての上に得た血税なのである。こうなったらバンバン通貨を元あった一般市場に還元する気持ちで、市場をアナフェラキシーショックさせてやる。文句があるならかかってこい。我等は軍隊+ギルド連合である。


 ただ可哀想なのが、価格高騰で食うに困る一般人である。なので我が第十軍と大商人は“新天地ミュース伯爵領で飯と耕す土地がタダで貰える! しかも商機あり!”キャンペーンを勝手に実施し、貧困層や野心旺盛な若者、個人業者を半ば強引に難民集団に参加させた。


 因みに商人や難民集団等は一時的に第十軍兵士として、間所による通行税を合法的に脱税した。役人は怒るかと思ったが、多すぎる人数を一々取り立てなくて済んだとむしろ喜んだ。これはすぐに対策されるだろう。しかし課税する側のルキウス卿は痛快だと笑っている。


 第十軍の戦力は元々六千人位だったが、これにより帝都につく頃にはその規模が十万人に届く勢いとなった。だが、話を聞いて涎を垂らしながら飛びついて来た道中様々なギルド、個人、投資家共によって、我が軍の輜重隊は気付けば五十万石(帝国金貨千五百万枚分=千五百億円規模だが、価格が高騰しているので二千億円以上は確実)規模となっていた。


 まだ大丈夫だ。こう考えるとティトゥス皇帝陛下から賜わった新設伯爵領ミュースの土地開発費用金一億は、どれだけ頭おかしいのか、我はやっと実感がわいて来た。


 一体何処にあったのか? 何処までも並ぶ荷馬車共は、広い帝国の道で何処までも渋滞していた……。


 やり過ぎたか? これは相当叱られるぞ? だが予想に反して、我等の元へ駆けつけた母エミリアの新たな上司、アッサンビル公オーティス閣下はだいぶご満悦であった。彼は地元から川を使って持ってきた大量の生活必需品を、暴騰した市場で売り捌いて荒稼ぎしている様なのだ。


 彼は我に言う。


「ファルマ卿。皇帝陛下がお会いになりたいそうだ。ついて来い」

「わかりました」


 相変わらず広すぎる天昇の頂。しかし今の我には屈強な美女騎士が居る。我は快適な移動手段を得ているのだ。最高である。そこで、アッサンビル公オーティス閣下は道中、我に聞いて来た。


「資金はどうしてる? エミリアのツケにしているらしいが」

「はい。勝手に母のツケにしようとしました。しかし今では、多くの投資家やスポンサーが参加しており大分助かっております」

「よく集めたな」

「知らぬ間に集まっておりました」

「それに何処までも並ぶ荷馬車に様々なギルドの広告を張り付け広告料を取るとか、あれは面白い」

「あれも勝手に張られてたので、剣の柄を握って話を聞いたら、広告料が取れました」

「うはは!」


 我は警戒する。この人は敏腕だ。隠し金山の事は口が裂けても言ってはならない。

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