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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
秘密の金柑(人間世界の陰り)
43/82

43.

 中に入るとそこは何とも神々しく明朗としかつ、煌びやかで絢爛豪華でエレガントな空間が広がると共に、帝国の国力を此れでもかと誇示し尋常ならざる物々しい世界皇帝の御璽(みしるし)が刺し入る朝の陽光を浴びて、まるで太陽の様にギラギラと輝いていた。


 粗暴なオーク文化に触れて久しい我がこれを一言で例えるならば……


──クドい。


 そして広すぎる空間の奥には十数段の階段を隔てて少々ケバい玉座があり、その両脇を半円状に手前中央を囲むように八席の、玉座としたなら丁度良い品の椅子が並べられていた。


 我はひねくれ者でるが故、一般からしたらこの光景はまさに憧れの世界であると思って差支えは無いだろう。我に触発される必要はないと言っておくが、とまれ、そのケバい玉座に肘をつき、少し態勢を崩す凄そうな人と、隣の椅子に座る偉そうなオッサンが気さくな会話をしているように見える。


 あの凄そうな人が、


──帝都ユーヴェレンヒューゲルブルグ公爵並びに、テーヌ王及びゴース王にして、カエサリオン朝エラグラウム帝国第十七代皇帝(カイザーオン)ティトゥス・クラウディウス・カエサリオン・アウグストゥス陛下と、言う訳ですか……。


 我は何だか頭を掻きむしりたくなった。


 大帝国皇帝ともなると、その下に持つ領地や称号はあまりにも多く文化も多様で、そしてもはや家族名なのか氏族名なのかも訳わからん名前を連ねて人を混乱させる。これをすべてを語ったら日が暮れてしまうので割愛する……。


 とまれ、ローテツダッハ美食家黄金の舌褒めたらちょろい公ブルクハルト閣下は跪いて挨拶する訳でもなく、無礼にも淡々と歩きながらその凄い人に軽く挨拶した。


皇帝(カイザーオン)ティトゥス陛下! ご息災で何よりで御座います!」


 ティトゥス皇帝陛下は事前に聞いているだろう感じで、こちらを見て言う。


「おお、ブルクハルトやっと来たか。世は待ちくたびれたぞ」

「緑色の芋を相手にしていた為に、大変申し訳ございません」

「話は聞いている。さ、着座せよ」

「ハハッ!」


 なるほど、ケバい玉座の周りにある八席の椅子は、七大選帝侯の椅子という訳か。ティトゥス皇帝陛下は、常に泳いでいないと死んでしまうカツオの様な常に食っていないとどうなるか分からないブルクハルト閣下の為に、すぐに食事を用意させる。執事みたいなのが陛下に耳打ちすると、彼の分だけでよいとか言っている。


 気付けば取り残された我等は、我以外畏れ多いとティトゥス皇帝陛下への直視をしないよう俯き、じっと跪いていた。我は思った。あ、しまった、と。


「──おい小僧! 頭が高い! 控えおろう!」


 我は、ティトゥス皇帝陛下の隣に座る偉そうなオッサンに怒鳴られてしまった。母が、慌てて我の頭を下げさせようと飛びつくが、我はむしろ半歩前へ出て母を躱し、ならばむしろ偉そうにと挨拶してやった。


「──我がファルマである! 皇帝(カイザーオン)ティトゥス陛下に呼ばれて拝謁しに来てやった次第であるっ!」


──ブフゥゥゥッ!!


 ブルクハルト閣下はいの一番に出されたワインを噴出した。偉そうなオッサンはハッとして立ち上がると見る見るうちに顔が真っ赤になってゆく。そして何かを怒鳴り散らそうとした瞬間、ティトゥス皇帝陛下はそれを遮りニヤついて言い放った。


「うむ! 大儀である!」

「──へ、陛下ッ!?」


 偉そうなオッサンだけではなく、全員が“What!?”状態になった。


 しかしティトゥス皇帝陛下は立ち上がってその威信をお示しあそばされた。


「よし、良い! 聞きしに勝る猛将であるなファルマ! 実に頼もしい! どいつもこいつも媚び諂う卑屈な奴ばかりでいささか退屈であったが、卿は聞けば齢三つにしてこの武者振り様! これから訪れるであろう国家の危機を思えば、全くもって世の望む名将の器であるっ!」

「ハッ! 身に余る光栄、恐悦至極!」

「うむ! ──ハァ~ッハッハッハ!」


 偉そうなオッサンは大笑いするティトゥス皇帝陛下のその物言いに、直ちに察して着座した。以下全員は修羅場を潜ってヤババとしていた愁眉を開いた。ボンガーがいない分、我が話題を作ってやらねばならない。皇帝陛下は上機嫌に再び着座して、落ちつた感じで母エミリアに言う。


「卿が母か?」

「はい。プリエクエス伯爵ルキウス閣下の臣下、パヴルス男爵エミリアにございます。我が子の不敬、私の教育不足の致す所。如何なる罰も甘んじてお受けいたします」

「ん~この子の教育は大変であろう? んん?」

「全くもって、心配だらけに御座います……」

「ア~! であろうであろう! しかし子とはそういうものだ。故に不問といたす」

「か、過分なお計らい! 痛み入る次第でございます!」

「うむ。──ではファルマ、ちこう。これに座れ」


 ん?


 ティトゥス皇帝陛下は左隣の玉座を軽く叩いた。しかし右隣の偉そうなオッサンは忠言する。


「陛下!? そこは皇后陛下の玉座!」

「良い。そんな事、アーデルハイトは一々気にせん!」

「しかし、天下に示しが──」

「──我等以外に誰が見ておる? 世はじっくり土産話を聞きたいのじゃ!」

「しかし」

「まだ異論があるのか!?」

「い、いえ。そのような事は……」


 我は、食い物で喉を詰まらせるブルクハルト閣下と、偉そうなオッサンに一瞥し、よっこらせっと皇后陛下の玉座へ座った。


 はは~! フカフカだ!


 偉そうなオッサンは複雑な表情で、頭を掻きむしった。

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