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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
呪われし荒野戦記(粗暴なオーク達の戦い)
26/82

26.

──ぶっ殺す!


 ゴッズフィストは間髪入れずにそう言いそうだ。彼には申し訳ないが、今回は少し黙っててもらうよう示唆する。この軍はゴッズフィストの軍だ。なのに黙ってろとはストレスフルだろう。しかしここはどうにか我慢しておいてほしい。


「ぐぎぎ!」


 ここは無駄な戦闘は避けたい。それに敵を増やしても不利になるのは自明の理。ブラックレフトアッパーからしてみれば漁夫の利だろう。それにどうにかしてこのドワーフ軍を倒せたとしても、後顧の憂いを作って長期的な問題を生み出すだけだ。かなり無益である。


 対陣するドワーフ王国軍。我、ゴッズフィスト、フレグル、カラドクー、ローニ、マテウスに我の抱っこ係の女オーク戦士。我等交渉団は白旗をもって両陣の空白地帯へ向かう。オークに恨みがあるのなら交渉すらさせてもらえないかもと思ったが、向こうからもお偉いさんが向かってきた。よし。


 そして最初に名乗ったのはドワーフ王国軍の方だった。


「親父の名はアーナッル! 俺はセックル! ──因みにこの名前は由緒ある名だ! 名前について馬鹿にしたらぶっ殺すからなっ! 俺は幼き王子ヴェイグル殿下の名代にしてドワーフ王国軍元帥だ! 王ニーイ陛下の弔い合戦としてブラックレフトアッパーのアホを現在包囲している! お前らは何者だ! 何しにここへ来た! 事と返答次第では俺自慢のドラゴンヘッドクラッシャーでその脳みそ叩き潰すぞコラァ!」


「──よぉ! アナル親父のセックス!」

「──っ!!」


 ちょっ! おいおいおいおいっ!


「あぁぁあああっあああぁぁああ!!?」


 やばい。


「俺だ! ローニだ!」

「おぉぉおお!? ──ローニか! この野郎ぉぉぉおお!!」

「ガッハッハ!」


 ん?


「ローニてめぇ! ここに何しに来た!」

「そりゃ陛下の仇、ブラックレフトアッパーをぶっ殺すためよ! あと混沌のアーティファクトをぶっ壊しにな! てかそう言って俺は旅に出たはずだが、むしろしょげきってたお前が何故ここにいる? 一緒にやる気になったのか? アナルセックス!」

「くそっ! 相変わらずクソうぜぇ奴だな! 名前に罪はねーのに!」

「ハッハー! とにかく俺達は強い協力者を得たぞ! 見てみろ! オークだ! あのオークが味方に付いたぞ! ブラックレフトアッパーのクソをぶっ殺したがってるオークがな!」


「あぁ!? ふざけんじゃねぇ! お前は俺たちの遺恨を忘れたのか!? この地はもともとぜーんぶ俺たちのもんだった! なのにクソオーク共が天変地異にじょうじて横取りしやがった! クソオーク共がっ!」


(──グニュニュニニギギギッ!)


 ゴッズフィストは今にも爆発しそうだ。我はすかさずゴッズフィストの腕を掴んで忍耐するよう示唆する。


(忍耐せよ。落ち着け。落ち着け)

(──グフィフィギギギッ!)


 ドワーフには、ドワーフの流儀があるのか? 固唾をのむ。ここは見守るしかあるまい……。


「おいおいアナルセックス! こいつらはそこらのオーク共とは違うぜ!?」

「駄目だ駄目だ! 仮に俺が信用したところで他が許さねぇ~! 俺の立場もわきまわろよクソが! いいか! 種族の仇に背を任せれる道義なんかねぇ~んだよっ!」

「はぁ!? こいつらは仇じゃねーよ!」

「オークだろ! オークは全員仇なんだよ! ダメだ!」

「くっそ! 石頭が!」

「ハンッ!」


 ダメか……。しかしそこへウィザードフレグルが参加する。


「──それどころではない! 混沌のアーティファクトがニーイ陛下に何をしたか見なかったのか!」

「これはこれはウィザードフレグル殿。しかしだな、それは本当に混沌のアーティファクトだったのか? 俺は実際に見たことなんかないし、むしろ陛下の不幸はブラックレフトアッパーのせいだろうがよ!」

「混沌のアーティファクトがそれを誘発してそうさせたのだぞ! 魔王はそうやって我等を争わせ、その私心を肥やしているのだ! なぜわからぬ!」

「──根拠が足りねぇ~んだよ! 足りねぇ~以上信用できるわけがねぇ~だろ! それに俺にはどうしようもね~んだよ! 故郷でお待ちになられる王子ヴェイグル殿下は、そのアーティファクトを父の形見として大変所望なされておられるのだからな!」


「──な、なんと! いかん! それは断じてならん! ヴェイグル殿下も死に追いやる気か!」


「ああめんどくせー! そこまで言うんだったら、証拠を見せろ! 混沌のアーティファクトが混沌のアーティファクトたる証拠、根拠、揺るぎない証明をここに示して見せろやっ!」


「うぐっ! ぐぬぬ……くっ……!」


 そんなものは無い。ウィザードフレグルの経験則でしか語れないそれの証明は困難である。故に詰まって論破されてしまったウィザードフレグル。これで舌戦は敗北となった。だめだったか……。


「──おい! どうした! 一戦やるか? 丁度いいや! まとめてオーク共をぶっ殺す好機だな!」

「ああ!? おいおい同士討ちになるぞ!?」

「同士討ち? おいおい勘違いするなよローニ! そいつらは敵だ! おめぇはこっち来い!」

「はぁ!?」


 我は言う。


「──もうよい。我等は我等でブラックレフトアッパーを攻める。彼らは彼らでやらせよう」

「お? なんだ? ガキが偉そうに喋ってるぞ?」


 ウィザードフレグルもカラドクーも我の言にうなずく。ウィザードフレグルは言う。


「ぐぅ……申し訳ない」


 我は指示する。


「仕方ない。──撤退する!」


 セックル元帥は言う。


「あ!? 逃げんのか!? ハンッ! 好きにしろ腰抜け共!」


 ゴッズフィストは超絶怒り顔だ。ウガオッ! とセックル元帥にするも、何とか忍耐して我に続いた。よくやった。よく我慢したなゴッズフィスト。我はゴッズフィストの背を叩いて無言の賞賛を送った。ゴッズフィストは煮えくり返る腹を捩らせ、帰りの道中に小声で不満を漏らす。


(あいつ……いつかぶっ殺す!)

「まぁ落ち着け。我にはよい城攻めの策がある」

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