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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
呪われし荒野戦記(粗暴なオーク達の戦い)
24/82

24.

「父上。前々から聞きたかったのだが、明星の戦士ギリスマエソールとはなんだ?」


「ん? お前でも知らないのか?」

「うん」

「そうか。聞かされていないのか」

「城にあったどの本にも書かれていなかった」


「そうか……。俺等から言わせれば、どこぞのウィザードやドワーフと違い、勇者だ魔王だ等と言うのは、一見すると相反する様に見える善悪と同じように、あくまで人の作り出した幻想にすぎないと考える」

「ぬぅ……」


 この発言にウィザードフレグルは顎鬚を撫でる。しかしあまり喋らない騎士マテウスを弄って遊んでいたローニおじさんはその発言に気付いて噛みついた。


「おぅおぅおう! 従兄のカラド! 言ってくれるじゃねーか!」


 だが、父カラドクーは直ちにフォローを入れる。


「──まぁまて。俺はそれを悪いと言っているのではない。事実、鷹は兎を狩り、狼は鹿を狩る様に、そこに、そもそも善悪など持ち合わせてはいない。だが、個体として弱い人間が他の狩られる動物と違って、知性を得ては近しい互いを危険な自然から守って文明社会を築けたのは、その正義だ悪だ等の幻想が少しでも影響していたからではと考える。つまりそれは、ある程度の秩序を形成する為に必要な概念的技術なんだと言いたい」


 ローニおじさんは尚も噛みつく。


「あん? それとギリスマエソールと何の関係がある!」


「──明星の戦士ギリスマエソールはそういった善悪には左右されない集団だと言いたい。かつてこの世を制した太古の神々は、その次元を超えた絶大な力を使い、気まぐれで世界を再生しては破壊を繰り返していたらしい。鷹が兎を狩る様にな。それは、最近の人の言う魔王とか、全くその比ではなかったそうだ。しかしそれを嫌った次なる神々は、ありとあらゆる手段を行使してそれを封印して回った。その時、尖兵となったのが“明星の戦士ギリスマエソール”というわけだ。そして俺とファルマ、そして他の“星抱きし血族”は、その使命を引き継いでいる末裔と言う事なのだ。個々の役割は何であるかわからんがな」


 ほう? そんな話がこの異世界にあったのか。しかしローニおじさんはまだ納得していない。


「善悪あるじゃねーか!」


「そういう見方もできる。だが、それは今の善悪と、ギリスマエソールの利害が一致しているからで、世論が仮に、破滅を是とするようになったのなら、俺等は判然とそれらの言う悪となって野望を阻止するだろう」


「あ、ん?」


「明星の戦士ギリスマエソールは今の善悪には左右されない。目的は破壊的な事象から、自ら築いた文明社会やそれを下支えする大自然を保守する事にある。その為ならありとあらゆる手段も辞さないのだ。俺らはその信念の下に形成された武装集団の末裔だ。わかったかファルマ」

「ふむ」


 しかしローニおじさんは尚も続ける。


「ん? あ~つまりお前らはウッドエルフの“大自然至上原理主義者”みたいなものか!」


「──馬鹿な! 誤解だ! あいつらは仮想敵だ! 自然保護主義穏健派の奴等ならまだしも、あいつらは大自然を大義名分に私心を肥やす愚か者共だ! 言うなれば俺等は、文明に欠かさない守るべき大自然と共に、文明それ自体も守るべき大自然の一部だと考え保守する。もしその大自然の一部である文明が滅びる破壊的な事象が起きるとするのなら、それが大自然的災害であろうと、人為的であろうと関係なく、俺達は敵だと考えて対処するだろう。あいつらのとはそこが違う。だからあんな奴等と一緒するな! ──ああ、酔いが回った! 俺は寝るっ!」


「お……? あ~何言ってるかわかんねーけど納得した! ガハハ!」

「フンッ!」


 う~む……?


 ウィザードフレグルは笑いながら我に耳打ちする。


(ファルマ殿のお父上は、酒が入るといつもあ~なるでの)

(ぬぬぅ……しかし凄い饒舌だ)


 我は横になった父カラドクーに再度問う。


「では、我に与えられたこの特殊な能力は何とする」

「……明星の戦士ギリスマエソールは、太古の神々を封印して回ったかつての神々の尖兵だ。つまりそう言う事だ。そこから自分の役割が何であるかを導き出せ……」

「……そうか」


 つまり……。“明星の戦士ギリスマエソール”とは、大昔暴れしていた太古の神々を封印した、次なる神々の尖兵の事で、それは人々の善悪に囚われる事無く文明を守る為なら手段を択ばない奴等と言う事か。


 そしてその証を持つ者を“星抱きし血族”と言い、神々の尖兵であったことから何らかの能力を有していると。そして我と父カラドクーはそれに所属するが、個々の役割は良くわかっていないから、自分の能力をよく考えて役割を見つけ、実行しろ……と言う事なんだな?


──うぅ~~~む。


 するとチチチッと、ウィザードフレグルの肩に小鳥が止まる。


「ふむ……。ファルマ殿、風の噂では、ブラックレフトアッパーはもうさほど戦力を持っていないらしい。次は城攻めになるのではないか?」

「──次で止めを刺す」

「うむ。オークの仇討ちもそうだが、混沌のアーティファクトも何とかせねばならん」

「混沌のアーティファクトか。どんなものか実際に見てみたいものだな」

「ファルマ殿。気を付けて欲しい。混沌のアーティファクトは見る者の正気を奪うでの」

「それはそれで楽しみである」

「ふぅ。父も父なら子も子じゃな」


 ウィザードフレグルはそう言って呆れ笑いをした。そしてローニおじさんは言う。


「はっ! 混沌のアーティファクトは我が王の仇でもある! 間髪入れずに俺がこの自慢の斧で破壊してやるわ! ガッハッハ! あ、あれ? なんだもう酒ね~のかよ。──おい従兄! もっと酒出せ!」

「…………」

「なんだよ~おい~!」


 そしてブラックレフトアッパーに恨み持つゴッズフィストは、焼首を喰らって復讐の雄叫びを上げた。


「グゥゥゥゥウウウオオオオオオオオオオオオ!!」

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