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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
呪われし荒野戦記(粗暴なオーク達の戦い)
23/82

23.

 ああ……。


 こんなのバーで自慢しても誰も信じてくれないだろう。むしろほら吹きだと馬鹿にされそうだ。いつだって我は自慢の種が不足している。そして、勝鬨の罵声は古戦場に響き渡った。


 とまれ、待望の猪肉である。


 我とローニおじさんはワクワクである。父カラドクーはいつも通りすました顔をしているが、ウィザードフレグルと騎士マテウスはこの虐殺劇に気圧されて少々お疲れ気味である。


 だが頬張る猪肉。


「う~ん。うまい」


 我がそいう言うとローニおじさんも舌鼓して笑った。


「ところでカラド、あれを出せよ」

「……これか?」

「へっへー! な~いす! 所でよ──」


 酒か? 父カラドクーはいつの間にそんなものを……。


 なるほどそして、かつてのパーティーは、わちゃわちゃと何かを始める。冠婚葬祭など、様々なシーンで親戚一同集まって始まる、何を話してるかわからないアレである。そしてオーク共も戦勝に、いつもの喧嘩騒ぎである。


「おいファルマ! もっと食え! 育ち盛りだろ?」


 思えばこの背はもう伸びないのであった。それと知らずにおじさんの盛る肉の山。どうにも複雑である。しかし丁度良い。我は一人、この時間を使って思いにふけいる事にした。


 やはり兵站か……と。


 オーク共はこの呪われし荒野であっても、強烈な雑食で現地調達できる。現地調達できると言う事は、遠く故郷から持ってくる兵糧よりもずっとその価値が高いと孫子様も言っている様に、このアドバンテージは凄まじい。


 その辺の草を掘り起こしてはとれる芋と虫、そして生で食う芋虫。戦えば敵オークを解体して食って、黄土色に濁った川の生水に、何の伝染病も寄生虫も無く、腹も壊さない強靭な対疾患への生命力……。


 そんな中にいて体調を崩さない我も、どうやらそんな奴等の同類のようであるが……もしこれがニンゲンであったなら、人間の軍隊であったなら、もうすでにこの軍は壊滅状態であったはずである……。


 かつて様々な生き様を見せた肉共。その食いきれない分は呪われし荒野の痛い日差しと燃える脂肪の油によって燻され、カッチカチの保存食となる。また、呪われし荒野は至る所に粗悪な、やたらと辛い岩塩が点在しており、これが様々なゲテモノの味付け保存料となっている。


 ここはかつて海であったのかもしれない。しかしそんな事など知らぬとばかりに、オーク共は粗悪なやたらと辛い岩塩をゴリゴリと丸かじりする……。


 我は既に野戦術指揮能力を白日の下に晒してしまっている。故に今後我は、様々な戦いの日々に巻き込まれてゆく事だろう。そこで“やはり兵站か……これは考えておかねばなるまい”となったのであった。


 我の能力は所詮ゲームで得た知識である。リアルに描画された戦場を散々戦い指揮してきた我ではあったが、こと兵站となると、戦略マップで遠目に見る線と数字でしかなかった。我の前世で少しかじっただけの物流業界の話など、この異世界で一体なんの役に立つのだろうか?


 兵站は最重要課題である。


 兵站は、虚実の有無はどうあれ、かつての神軍師諸葛孔明も、それに泣き、愛弟子を斬ってでも撤退せざる負えない程の大問題だった。


 時として底辺と蔑まれ嫌厭される、馬鹿でも出来ると嘲笑される一次産業と二次産業。そしてそれを効率よく運ぶうんちゃんの仕事。これらは全てその最重要兵站の根幹である。なのに、それに食わせてもらい、日常を豊かにする製品に囲まれながら、一体どの口が偉そうにその悪口を言えるのか。


 我は反省し、感謝せねばならない……。


 ウィザードフレグルは我の隣に座り、パイプ煙草に火をつけると肉の山を見ながらこやかに言った。


「──人は、これの為に戦い、これの為に死ぬでの」

「業は深いな」

「ふふん。業とはしたり……」


「今回も大勝出来た。まさに破竹の勢い。しかしこれ程とは想定していなかった。勝算は十分あったが、今回はそれなりに苦戦し、被害が大きくなる事まで見ていた。敵の軽率な行動が無ければ、部隊指揮はより詳細にもっと複雑となり、将棋やチェスの様に盤上の戦いの様になっていただろう」


「……う~ん。やはり三歳とは思えぬ発言じゃでの。ファルマ殿。何故ファルマ殿はそのような多大な知識と戦の知恵をお持ちなのかな?」

「わからん。戦神ウガウガオ? 邪神ダゴールネド・エルオンタリエとやらにでも聞いてほしい」

「んん? ファルマ殿はダゴールネド・エルオンタリエを知っておるのか?」

「オークの占い師、ブァブァ様の入れ知恵だが、よくは知らん」

「ううむ、とはいえ何とも……。我等ウィザードや長寿のエルフさえも知らない知識もお持ちの様だでの」

「ん? 例えば象とかか?」

「象? それは流石に知っておるぞ。舐めるでないわ!」


 ウィザードフレグルは笑う。


 そうか。象はいるのか……。すると酔いで少し顔の緩んだ父カラドクーが会話に参加する。


「──明星の戦士ギリスマエソールの血筋とはそういうものだ」

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