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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
呪われし荒野戦記(粗暴なオーク達の戦い)
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2.

 その後、我は神童扱いである。


 生まれたての幼児がまともに喋るのであるから、神の子扱いは当たり前かもしれない。旧IQ計算法によれば、精神年齢÷実年齢×100であるから、仮に我が一歳で、精神年齢が三十路であったとするならば、我のIQは3000となってしまう……。IQ3000とか、もう優に人間を辞めているレベルである……。


 我は双子の片割れである。


 もう片方は女児であるから、二卵性双生児であろうか? が、そんなことはどうでも良いとばかりに、エルフの様に容姿端麗で耳の尖った兄と姉は、馬鹿みたいに我と妹を抱っこしてニッコニコである。因みに妹はいたって普通の女児であるようだ。


「キリンの首も長い。しかし、キリンの足の長さもある程度注目されるべきである。つまり、キリンは首だけ長いわけではないのだ。キリンが水を飲むときの恰好を知っているか? あの姿は実に滑稽である」


 ……。


「うぉぉぉぉ!」

「あらあらぁ!」


 我がそういうと、少し間を置いて我を見る面々は、最初と打って変わって馬鹿みたいに大喜びである。そういえば父らしきがいない。見るからに初老のオッサンや、妙に時代錯誤の衣装に身を包んだ面々とかもいるが、こいつらはどうも家族じゃない。雰囲気だろうか? 少し距離を置いている為か? 我はそう直感している。なので


「父はどこか? なぜ耳が尖っている? 彼らは一体何なのか?」


 と、我はむすっとした顔で兄らしきに問う。すると普通の人間らしき母らしきは、異様に呑み込みの早い喋る幼児である我に、その異様な光景を感じさせない母性を含ませながら、いたって流暢に説明する。


「お父さんはね、エルフなのよ。うふふ。いいでしょ? よかったわね! だからきっとあなたもきれいな顔になるはずよ? ほら、鼻柱が可愛いじゃない? だけどね、お父さんはね、いつも大事なお仕事があるからたまにしか帰ってこないの。寂しいわ。でも、だからこそ余計に私のお父さんにふさわしいのかもしれない。はぁ、あの人ったら、今どこをほっつきあるってるのかしら? ──私たちロフノスト家は、帝国の男爵家。陛下の選帝侯の、そのまた本家伯爵様の配下ではあるけれども、古くからある立派な家系なのよ。だから、する事も沢山あるのに……」


 すると、なるほどそう言う事で時代錯誤だったオッサンが、一歩前に出て畏まって母に言う。


「──閣下、何も問題はございません。その証拠に、立派な若君が、その類まれなる外交能力をいかんなく発揮なされて、非常に良く我等愚衆を統治なされておられます。それになんともまた新たに、神の子が閣下の元にご誕生になられたではありませんか。閣下。ロフノスト家は、間違いなく今後安泰なものとなるに違いありません! なんとも、こんな幸せな事は、古今東西ありはしないと思われます! 敬礼!」


 家臣団らしきは、このオッサン家臣の敬礼につられてか、おおっとと敬礼を合わせる。


「あら、そうだといいのだけれど」


 母はちょっと心配そうにそう一言。すると妹を抱っこする兄は照れ顔で


「い、いやぁ、あはは……。そんなに褒められても困るんだよなぁ……」


 と、なにか申し訳なさそうである。我を抱っこする姉は事情を説明する様に、我に向かって笑顔で言い放つ。


「お兄さんはね、ポンコツなのよ?」

「なるほど」


「──お、おいぃっ!」


 兄はすかさず姉につっこんだ。何とも和やかな笑いがその場を包んだ。


 そうして平和な月日が瞬く間にたつ。実に平和である。我は浅いうちに“たっち”して、古めかしい本をざっくり必要な部分を斜め読みして情報収集を行い、そしてきっちり家臣団にもマウントをとって威厳を示し、バブゥウキャキャした。


 そんな三歳の誕生日祝い。誕生日を祝う文化の無かった前世の感情が、誕生日を祝われる感動とプレッシャーに苛まれたその日、なにか不審に思った母は、突然我を医者に見せて事情を聞く。すると、なんとも複雑な顔をした。母の同意を得た医者は、我に向き直って現実というサプライズを突きつけてきた。


「ファルマ様。エルマ様。申し上げます」

「ううむ……」


「──あなた方の背は、もうこれ以上伸びませ~ん」


「……なっ?」

「これはおじい様の隔世遺伝ですな。おじい様はドワーフでらっしゃいましたので、エルフであるお父上様の様に容姿端麗なれども、ずんぐりむっくりと背は低いままでしょう」


 ガーン……。“天は二物を与えず”……か。しかし母は励ましてくれる。


「うぅぅん……。でもきっと大丈夫。一生可愛いままでいられるのなら、それを武器にすればいいのよ」


 しょぼーん。しかし熊の人形を抱っこした妹エルマは笑顔で言う。


「──だってぇ! おにいちゃん! アハハハハァ!」

「うぅむ……」

「それにおじい様は、小さくてもすっごく強かったのよ!」


 ガッツポーズして見せるママン。妹はある意味で得なのかもしれない……が、ショックなのは我だけか? しかしあの洗面台が、ずっと高いままだと考えると憂鬱でしかたがない……。そして突然入ってくる兄アルネスはそんな事情もどこ吹く風。


「おいファルマ! エルマ! と、母上! 誕生祝いだ! 皆待ってるぞ! こっちゃこい!」


 兄は、そう言って我の誕生日祝いを大義名分にし、かたっ苦しい公務から解放されてか、存分に酒をがぶ飲みした。そしてその宴の晩、


──我はさらわれた。

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