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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
呪われし荒野戦記(粗暴なオーク達の戦い)
18/82

18.

「うむ、話が早くて助かる! つまりそれなんだが……」


 すると今度は父が混沌のアーティファクトについて話し出す。


「実の所、混沌のアーティファクトは何だと特定できるものではない。それは複数あって、様々な形状をしている為だ。そしてそれはそれぞれ何か、何らかの力を提供してくれはするようであるが、それを見た者、利用する者は次第に正気を失い、挙句はあらゆる暴挙に出て混沌を生み出した後、発狂して死に至る、とだけはわかっている」

「正気を失う?」

「現に、既に二つの国は滅んで一つの国が滅びかけている。そして紛争があちこち増加傾向にある」

「ほほう……」


 我の故郷はまだ大丈夫なはずだ。しかし平和過ぎて外の景色を見れていなかったか? そんな事が起きていたとはな。平和は人をボケさせる……。叔父ドワーフは言う。


「俺の主君はそれで死んだ! 王国は滅茶苦茶になって、戦争が始まって、陛下は気が狂って自殺しちまった! 俺の主君は絶対に自殺なんかする奴じゃなかったのに! これが魔王の仕業じゃなくて何だっていうんだ!」


 魔王云々はともかく、なるほど。だからこの都合の良いドワーフ拠点は引き払われたのか。ウィザードは叔父ドワーフに言う。


「落ち着くのだローニ。──とにかくファルマ殿。私はその混沌のアーティファクトを一つ潰す事に成功してはいる。たまたま運が良かったのか、いや、もしかしたらそれさえも意図的だったかもわからない。魔導図書館の奥に突如現れたそのアーティファクトは、長方形の樹脂の様なもので出来ており、パカッと開くと中には数字の様な文字の書かれた宝石がたくさん等間隔で並んでいた」


「──んん?」


「そして突然不快な音が鳴り出すと、端っこの穴から声がしたのだ」

「何と言っていた?」

「“──混沌の種子はばらまかれた。貴様に出来る事等たかが知れているが、まぁ楽しませてもらう”と。するとその直後にツーツーツーと不愉快な音がしたので、私は直ちにそれは危険な代物だと悟っては地面に叩き付け破壊した。そして燃えだして灰となった……」


 ふむ……。父が再び。


「ドワーフ王のは円盤状の地図だったと証言があるが、()()()()()()との戦闘でそれを奪われると、後に王は自殺に至っている」


「ウガァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


「──っ!」


 突如叫び出すゴッズフィスト。ゴッズフィストは中央にあった焚火を蹴とばすとさらに叫んだ。


「──円盤! そいつは知っている! ブラックレフトアッパーのクソだぁぁぁあああ!!」


 ブァブァ様はジャガイモを喉に詰まらせたような笑いをして言う。


「ヒーーーーーーイギッイギッグフゥウッウウ! ア、アアッ! ワ、我々は戦神ウガウガオに導かれている! ブラックレフトアッパーは我等の仇じゃぁあ! どうかイエア様ぁぁぁ! 申し子様ぁぁぁ! 我等をどうかお導き下されぇぇぇぇ! なむなむなむ……」


 話を聞いていたオーク達は、元からいた部族だけでなく、戦闘で軍門に下らせたオーク達も関係なく全員、ブラックレフトアッパーと聞いて怒りの顔色になった。


 ふぅむ。どうやらその、ブラックレフトアッパーは、相当に敵愾心(ヘイト)を買っている様だ。様々な部族同士がやたらと弱肉強食の戦闘を繰り広げていたのはその為か。つまり、それら部族はその、ブラックレフトアッパーとか言う奴に故郷を追い散らされたかなんかしたという訳だな……。我はブァブァ様に言う。


「──いいだろう。我は戦神ウガウガオの子、イエアである。望みを叶えてやろう。故に、今までと同様、我が指示に従え!」

「イエアイエアァァァァァァァ……」


 オーク共は我に首を垂れる。


 我の父だ叔父だ等が突然出てきててこのオーク共は混乱気味であったが、この茶番劇でひれ伏してくれた。これを見たパーティーは若干引いているが、これで次の敵は決まったも同然である。で、あるならば、さっそく話を進める。


「では、叔父のローニ殿。攻城兵器の製造と技術の教示をお願いしたい」

「はん! 陛下の仇打ちだ! 当然だぜ! だが、それは構わねーが、“殿”呼ばわりは癪に障る!」

「ではなんと?」

「“ローニおじさん”と呼べ!」

「いいだろう。ローニおじさん」

「お? おははは! 今回はやけに素直じゃねーか。ははん!」

「で、父は──」

「俺は弓を教える。作り方もな。幸いここにはイチイの木が群生している。因みに言っておくが、俺は明星の戦士ギリスマエソールの弓師だ。父の名はゴルウェンギールで、俺はカラドクーと呼ばれている。ロフノスト家の当主が嫁だ」


 父はオーク共に、ついでに自己紹介を済ませる。そしてウィザードが続く。


「うむ。失礼、遅ればせながら、儂は風白髪のウィザード。名はフレグル。かつてはアルフヘイム魔導学園で講師をしていた。魔法は得意ではないが、知っている知識は提供できるでの。何でも聞いてくれ」


 ほう。アルフヘイムの講師とな……。我は影の薄い騎士へ命を下す。


「うむ。では騎士マテウスは我の身辺を頼むぞ」

「──ハッ! 私は卑しいあなたの僕でございます!」


 すると


「──ちょっと待て!」

「どうしたゴッズフィスト」


 ゴッズフィストは我の前に立ち、凄い鬼の様な形相で彼らを睨みつけては言った。


「父だが叔父だがしらねーが、イエア様はイエア様だっ! いいか!? ──見張ってるからなっ! 妙な真似をしたら直ちに、ぶっ殺すッッ!!」


 我はすかさず注釈を入れた。


「──ゴッズフィストはあなた方を歓迎するそうだ」

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