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ボアファイターは今の所、ボアファイターのままでよい。運用も今までと大差ない。
強いて言うのならば、片手で運用する急ごしらえの使い捨て馬上槍を持たせて、突撃によるファーストコンタクトや馬上戦を有利にするぐらいである。しかも馬上槍と言っても、細長い円錐状のアレではなく、初期型の長い槍程度の物である。馬上槍と言っても、新旧様々な形状があるので注意が必要である。
では、対騎兵兵科は何であろうか? 欲を言えば二種類作りたい。まず一つは、機動性を持たせつつも強力な攻撃力と汎用性のある対馬上攻撃要因で、武器はハルバードと言いたい所。だが、まだ鍛造スキルが足りない様なので、武器は刃広にして重くした背の高さ1.5倍から2倍位の矛を作らせ持たせた兵科。これを“杖剣隊”とでも呼んで後方に数隊配備する。
次にもう一つやりたいのは、槍衾戦術、及びファランクス戦術を行う長槍のリーチを利用した部隊兵科創設である。
個人的に“槍衾”と“ファランクス”は別戦術としている。また“ファランクス”は二種類あり“ギリシア式ファランクス”と“マケドニア式ファランクス”と我は呼び分けている。槍衾とファランクスの違いを厳密に言えば、槍衾と言う戦術グループに、マケドニア式ファランクスが含まれるといった具合である。
まず“槍衾”から説明すると、簡単に言えば槍の先を隙間なく並べて前に突き出し壁を作る戦術である。しかし我の解釈はこれに少し付け足しがいる。
槍はリーチの長い武器である。そして槍は一般的に突いて攻撃するイメージであるが、実は、その長さを利用して叩き付けると、その切っ先の運動エネルギーは長ければ長い程凄まじく強力となる武器でもある。当たれば鉄兜でさえ危うい程である。ハルバードの強さの秘訣はそこにもあり、先に創設した“杖剣隊”は、これをする隊でもある。
また、その槍のリーチを生かすためにどんどん長大となった長槍は、工作技術によっては、たわわと実った稲の様に柄がしなってしまう為、実は突く運用に向かなくなってしまう弊害が発生する。しかしそのしなり、叩き付ける事に何ら問題がない処か、しなりが逆に威力を増させる要因になり得る。故に“槍衾”戦術は突くだけではなく、叩き付けることを想定した戦術と我は解釈している。
“衾”と言うのであるから、迫る敵兵に布団を“かけて”やるのである。故にまつ構図は、いつでも叩き付けられるように槍を立ててもつ場合もあるとしている。しかし我がやりたいのはそこまでの物ではない。……因みに“衾”は掛け布団みたいなものである。戸の一種である“襖”と混同してはならない……。
そして今の我には、マケドニア式ファランクスで十分である。
槍がたわわと稲の様にしならない様、弾性の高い木を利用し、槍先の刃は小さく軽量、柄は重くなり過ぎないようギリギリまで太くして、しならない限界まで長さを伸ばす。それでも5メートルもの長さを誇るマケドニア式ファランクス用の長槍“サリッサ”。マケドニア式ファランクスとは、それを隙間なく槍先を前に並べて迫る敵へブッ刺してやる突撃反射戦術である。
無論、突撃反射だけでなく、ズイズイ迫ってブッ刺しまくる戦術でもあり、そのリーチで騎兵への相性も抜群である。なので、実は防御的でも攻撃的でもあるマケドニア式ファランクスは、アレキサンダー大王の元、当時のオリエント世界(ギリシア、エジプトからインドの西まで)を征服するに至った超有名兵科戦術である。
弱点は、隊形を維持しての移動がとにかく鈍足、正面である攻撃防御方向以外はめっぽう脆弱、過密隊形である為飛び道具に弱く、それなりの規律と訓練が必要で、使える状況が限定的と、運用が超難しい兵科・戦術となっている。
ただし、攻撃防御方向に関しては、肉弾戦での突破がまず不可能である。これを真正面から肉弾戦で突破するには同じ兵科かそれ以上の長槍が必要である。やはり飛び道具か迂回する機動性が必要となってくる。故に無論、もしもの乱戦に備えてサブウェポンは必須とし、またこれの弱点を他兵科で補う必要がある。また、飛び道具に関しては、盾を肩に背負わせて間に合わせればよい。
それだけしてでも我はこのマケドニア式ファランクスが欲しい。




