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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
呪われし荒野戦記(粗暴なオーク達の戦い)
13/82

13.

 殲滅を逃れたオーク共は逃げもせず素直に降伏し我が軍門に下った。


 オーク社会は“生きて虜囚の辱めを受けず”な部分はあるが、それ以上に“強い物に巻かれて勝ち馬に乗れ”な所がある。彼らは強い勝ちこそが正義で、負けたならば素直に勝者に従う所もあるようなのだ。


 まるで将棋の駒の様である。


 しかし裏切者の大将は、我の許可を得ると早々ボンガーによって殺された。そして仇討の焼首(やきこうべ)である。喧嘩でトップになればなる程、()の強い者であればある程オーク社会は、降伏など許されず、次の残忍な勝者の焼首となるのである。これは本質的には、人間社会でも変わりはないだろう。責任者は、責任者らしく責任を取らされるのである。


 そしてボンガーは我等の仲間になった。


 ゴッズフィストは面白くなさそうであるが、とにかくボンガーはこれから晴れて底辺再スタートである。よかったね。


 まぁ、それはさておき、我の指揮ぶりに女オーク戦士共は惚れ惚れとしている様だ。モテモテで何よりである。我の抱っこ係に事欠かないので助かるのである。だが、本音は少々複雑でもある……。


──とまれ、我の指揮系統は見せ掛けの信仰から、事実、実力を伴う盤石なものになった。


 我のやりたい事がスイスイ進むのである。


 木材資源の為の伐採、ついでに開墾、安定的な食料資源確保の布石に、出た土砂は前の戦場に置いて土嚢の仮説防壁とする。それまで食料はなんとか狩りで凌ぐ。そして上の首がすげ変わっただけだと嘆くゴブリン共に鉱床を掘らせて製錬炉に火を灯す。が、我は出来得る限りの給料と自由を提供してみる。すると、またもや我への信仰が生まれ神扱いである。


 こんなの人間相手では上手くいかないだろうと思いつつも、ドワーフの忘れていった本物の鉄床と鉄槌で次の戦いの為の武器防具を鍛え上げてゆく。そうして労働に脈動する筋骨隆々であるが、やはり病気の無い安息は必要である。故に住処は、日当たりの良い場所に作る。暑くなり過ぎないよう、避暑の手段は確保しておく。


 ……いやちょっとまて、本当に我のやりたい事とはこんな事だったのか? 我はふと疑問に思う。しかしそれは考えるだけ無駄なのである。いつもの悪い癖が出た。今の我は、とにかく今できる事、したい事に集中すべきなのだ。忘れてはならない。それは、我のニート時代からの反省で得た教訓である。


 我は、今日の抱っこ係に抱っこされながら静かに考える。


 未来、息吸う事を考えるよりも、今、息吸う事をやらねば、未来、息吸う事も出来ない。過去、反省を込めて振り返って見ても、やはり、その時の息の吸い方をしていたはずなのである。


──よし。


 我は、ジト目の無愛想顔でありながら、内心妙にガッツポーズである。ふっふっふ。


 とか考えていると、オーク共が我の指揮の合間合間に喧嘩してマウンティング合戦をしている。いつもの序列争いだ。が、しかし思えば可笑しい。オーク社会は強い勝者が支配する。なのに我は背も小さくクソ雑魚な(よわい)3ちゃいである……。そんな我を、オークシャーマンのブァブァ様はニヤニヤして見ている。そのニヤニヤに察して我は思う。


──信仰とはかくも恐ろしい物か。これは決して察すべからず、と。


 そうしてこの寄って立つ地は次第に様になってきたので、我は軍制改革に乗り出す。我にたいするお供え物も、ゲテモノから我好みの物へと変化しだした頃、装備もある程度充実しだしたので、本格的に新訓練を始める事にしたのである。


 重い投げ槍に大きな盾、そして敢えて重く短くした密集乱戦に強いショートソードで武装した歩兵。古代ローマに倣うその歩兵はディフェンダーでありながら、柔軟性と機動力があり攻撃的運用も十分可。非常に汎用性の高い兵科に仕上げて、約二百人1ユニットと小分けにして大隊とする。これをオークレギオンとする。


 オークレギオンの弱点は対騎兵。鉄床戦術中央の対飛び道具防衛と対歩兵への主戦列として運用し、弱点である対騎兵は他兵科で補う。もはや肉壁とは呼ばせない主戦列軍団歩兵大隊である。


 余談だが、ショートソードは初期の雑魚装備と言うイメージが強くないだろうか? しかし、みっちみちでの密集組織戦では、長物と比べてショートソードは非常に取り回しが良く、そしてその短い分、重く作っては刺突斬撃にと、実はかっこいいロングソードよりも凶悪だったりするのである。


 侍でも、屋内とかの限られたスペースしかない場所では、打刀より、小太刀の流派の方が断然有利なのは、その筋では有名な話なのではないだろうか。とまれ、古代ギリシア・ローマではこのショートソードを“スパタ”もしくは“グラディウス”と言った。

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