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幼児に転生し三歳になった誕生日、ゴリゴリに軍団を指揮する事になった話。  作者: 怒筆丸 暇乙政
呪われし荒野戦記(粗暴なオーク達の戦い)
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1.事の始まり

 空から冷凍マグロが降ってきて俺は死んだ。


 それは、俺の頭部ではなく腹部に命中した。それなりの質量と運動エネルギーに負けて、地面に勢いよく叩きつけられた俺の死因は、恐らく内臓破裂だったのだろう。最初は訳が分からない。だがすぐに激痛が走る。死ぬほど痛かった。そして薄れゆく意識の先に冷凍マグロが見えたので、それは冷凍マグロと俺は認知する事が出来た。


 数字とは不思議である。


 現実ではありえないとんでもない確率も、ゼロでなければ起こり得るのである。例えば、台所で無くした結婚指輪が数年後、たまたま買ったリンゴの中に入っていて、証拠となる特有の傷と刻まれたイニシャルもあった……。この様な話も実話であるらしい。


 そんな馬鹿な。いや、あり得るのである……。


 俺は、仕事大好き年間仕事量五千時間数十億単位経営者を父に持つ家庭で育った。それと比べ俺は大学中退ニートのロクデナシだった。父は家庭を顧みず、母は異様に俺に甘い。資産の多さから、俺も一生働かなくても生きていける程家庭は裕福で、ニートの原因はこのあたりにあるのだろう。


 ただ、母は若くして病気で死んでしまった。俺はその後、せめて自分で食う飯代ぐらいは自分で稼ごうとフリーターとなる。とはいえ、俺の習性はそうそう変わるものでもなかった。俺の人生の大半の時間はPCゲームに費やされるしょうもない感じはどうも治らない。特に好きだったのは古典的な野戦を再現したゲームだった。


 しかしそれはもう過去の話。


 スーパーのお惣菜コーナーで安くなりだす丁度良いころ合いに、俺は空から降ってきた冷凍マグロにやられるのである。そうして死んだはずの俺は、何故か目の前にブラックホールがあって、膠着円盤が異様な凄まじさを醸し出していて、それはもうすごすぎて謎すぎだった。当初俺は死の床で気でも狂ったのだろうかと思った。と、同時に、しかしまったくもってこの俺が、事象の地平面を超える栄誉を得られるとは、すこぶる光栄であるとも感じた。


 そして飲み込まれる……。思ったより穏やかだった……。その後何があったかは覚えていない……。とにかく俺の第一人称はこの時に“俺”から“我”に切り替わったらしい。これも何を言っているか意味が分からないだろうが、うぅむ……とにかく我は現在、なぜか幼児となった。そう幼児である。生まれたての赤ちゃんである。……ふぅ、これもまた……ますます謎である。


「…………」


 オギャとかバブゥとか言うのを期待して見ているのであろう我を覗き込む面々。おそらく、おそらくだが彼らは我の新家族だろう。確かな根拠などないが、見知らぬ母らしきが我を抱えていて、弟が出来たなんだと兄らしきや姉らしきは騒ぎ立てている。はぁ? これは一体? と、混乱している我は何を思ったのか、とにかくしかめっ面全開でこう言い放つ。


「象の鼻は長い」


 新家族らしきは笑うどころか異様に驚きおののいた。無理もないか……幼児がいきなり喋ったのであるから……。

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