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第25話:エルダーエルフの依頼②

ブクマや評価、ありがとうございます。

 大森林地帯の奥地で出会ったエルダーエルフのセルマさんが出した交換条件。それは「コワードスワローの巣」の採取だった。


「コワードスワローの巣ですか…?」

「なんだい。コワードスワローがわからないかい?そこのライナスっていう坊やなら知ってるんじゃないかい?」

「はい。殿下、コワードスワローというのはその名の通り燕のモンスターです。討伐ランクはEランクなんですが…。」

「なんだ。それなら、大丈夫じゃないかな。断然ナイトトレントよりも討伐ランクは低いじゃないか。ねえ、リーナ。」

「そうね…。Eランクモンスターなら問題なさそうね。それから何度も言っているけど、私のことはフロリーナと呼びなさい。」

「はっはっは。そこの二人は能天気でいいさね。ねえ、ライナスとやら。」

「「「?」」」

「はい…。リューク副団長、フロリーナ副団長。確かにコワードスワロー自体はEランクモンスターなのですが、その巣の採取となると、ランクはAランクに跳ね上がります。」

「えっ、なぜだい?」

「それはコワードスワローの特性にあります。コワードスワローは、Aランクモンスターであるヒヒイロカネタイガーの背中に巣を作ります。なぜそんなところに巣を作るかはわかりませんが、コワードスワローはそうやって天敵から雛を守るのです。そういうことからコワードスワローは別名『虎の威を借る燕』と言われています。」

「ほう。やはり坊やは物知りだね。その別名を人間から聞くのは久しぶりだね。」

「どうも…。」

 セルマさんは自分が出した交換条件だというのに、どこか他人事のように笑っていた。


「どうだい?この依頼を達成してくれたら、シルバーバタフライを貸そうじゃないか。」

「どうですか、ライナス。コワードスワローに詳しいのはあなただけです。この依頼は私たちで達成できそうですか?」

「そうですね…。このメンバーであれば可能性はあるかもしれません。必ずしもヒヒイロカネタイガーを討伐する必要はないわけですし。ただ…。セルマさん、ひとつ確認したいのですが…。」

「なんだい?」

「コワードスワローはともかく、ヒヒイロカネタイガーはシルバーバタフライ以上に希少種だったはずです。それをこの大森林地帯で探すのは相当の労力が必要です。何か手掛かりはあるのでしょうか?」

「私がわざと達成できないような依頼を出していると疑っているのかい?久しぶりの訪問者にそんな意地悪なことをする趣味はないさね。手掛かりならあるよ。というより生息場所を知ってる。ここから半日程行った洞窟に住んでるのさ。コワードスワローの姿も確認したから問題ないさね。」

「なるほど。それならご自身で採取されては?なぜわざわざ突然訪問した私たちにそんな依頼を?」

「自分がもっと若ければね…、そんな無茶もできたけどね。この年齢になると、いろいろ出来ないこともあるのさ。ただ、コワードスワローの巣はある霊薬に必要な材料でもあってね。運が良ければ手に入れたいと思っていたところに、ちょうどお前たちが来たというわけさ。」

「わかりました。殿下、その依頼を受けるしかないようです。」

「そのようですね。それでは今日はもう夜になってしまうので、明朝出発しましょう。セルマさん、外で野営をしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、構わないよ。今日は外で焼肉パーティーでもしようかね。」

「焼肉ですか…?」

 何だろう。嫌な予感しかしない。


「ああ。この辺はフォレストボアの生息地でね。そいつらを獲ってくれば、贅沢な焼肉パーティーができるよ。」

「そのフォレストボアを獲ってくるのは…。」

「もちろん。お前たち男どもの仕事に決まってるだろ。外にも男どもはいるんだろ。さあ、行った、行った。陽が暮れちまうよ。」

 セルマさんに無理矢理押し出されたかたちで、私たち男性一行は急遽フォレストボアの捕獲に向かった。


―――――


「これで準備はOKだね。あとは男どもが獲物を狩ってくるだけさね。」

「セルマさん、いろいろありがとうございます。」

「なんだね、姫さん。まだ礼を言うのには早いよ。まずはお前たちが巣を取ってきてからだ。」

「はい。それはそうなのですが…。最初は漠然としていた霊薬の材料集めが、ついにここまで来ることができました。シルバーバタフライを貸して頂ければ、白クサノオウも見つかると確信しています。ライナスもそう言っていましたし…。」

「姫さんはライナスの坊やを随分と信頼しているんだね。確かにあの子はすごい子だと思うよ。まだ子供なのにあの知識量。それに戦闘技術も相当なものなんだろう?」

「わかりますか?」

「ああ。こう見えて無駄に年齢を重ねたわけじゃないからね。これまでいろんな猛者を見てきたけど、ああいうタイプの子は初めてだ。あれは博識というレベルじゃないね、たぶん。なんか前から知っていたという印象を受けたよ。」

「前から…ですか?」

「そうさね。子供がいくら小さい時から勉強したとしても、あの年齢であの知識量はあり得ない。しかも言葉からは実体験が込められている気さえしたよ。何者なんだい?あの坊やは。」

「スナイデル王国に使える貴族の子弟で、レイカールという街で冒険者として活動しています。」

「ほう、冒険者かい。これはまた懐かしい名前が出てきたね。それで?」

「それだけです。確かに彼の博識さと戦闘能力は冒険者として突出しているみたいですが、彼に言わせれば『冒険者として活動していると身に付くもの』だと言っていました。」

「はっはっは。もしそれが本当なら、今頃世界は手練れの冒険者で飽和しちまってるよ。姫さん。これだけは言っておくよ。あれは貴重な力だ。あれを単なる冒険者と思わない方がいい。坊やのためにもね…。間違っても敵に回さない方がいいよ。」

「…はい。わかりました。いまの言葉、心に刻んでおきます。」

「はっはっは。まあ年寄りの戯言だけどね。」


 前々から思っていた。彼のあの力は、決して普通の冒険者のそれではないと。だからセルマさんの言葉は、はっきりと重く私の心に響いたのだった。


―――――


 焼肉パーティーを盛大に行った翌朝、私たちはセルマさんの家を出発した。今回は少数精鋭ということで、殿下と両副団長、そして私のメンバーでパーティを組み、依頼をこなすことになった。


 昨晩から殿下の様子がおかしい気がする。はっきりこれがというものはないが、何か気を遣われている感じがした。今までも私を含め、捜索隊のメンバーを気に掛ける場面は度々あったが、昨晩は特に私に気を掛けているようだった。


 殿下に「なにかありましたか」と聞いたら、「なんでもありません。ただライナスにはこの捜索でとてもお世話になっているので。」と回答があっただけだった。特に問題があるわけではないので、私もそれ以上の質問はしなかった。


 家を出発して半日。セルマさんが言っていた大きな洞窟を発見した。ここにいるヒヒイロカネタイガーからコワードスワローの巣を採取しなければならない。


 私たちの緊張は否応なく高まった。

読んで下さり、ありがとうございます。


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もし「おもしろい」「続きを読みたい」と思われた方は、宜しくお願い致します。


また、感想もお待ちしております。

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