第22話:ミッドナイトトレント討伐戦④
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時刻は夜半を迎えた。全員が交代で休憩を取ったおかげで、体力は回復している。昨晩必死で戦ったメンバーも気力・体力ともに充実しているようだ。
「それでは、これより南東部に移動して、ナイトトレントと再戦する。目指すはミッドナイトトレントの討伐だ。皆、心してかかれー!」
「「「はっ!」」」
アメリア殿下の掛け声で捜索隊の士気は高まり、奴らとの戦闘に向けて移動を開始した。
(ドーアン。奴らはどんな感じだ?)
(主。奴らはあれから場所を移動しておらず、数もそんなに変わっておりません。数は20~30匹程度確認できます。)
(わかった。そのまま偵察を続けて。)
(承知しました。)
「殿下、ドーアンの偵察によれば、奴らは昼間と同じ場所にいるようです。空から確認したところ、その数は20~30匹程度です。あと1時間もすれば視認できるようになるでしょう。ちょうど満月の南中時間です。」
「わかりました。それではこのまま進みましょう。念のため哨戒を最低限出しておきましょう。奴らに遭遇する前に無駄な戦闘は避けたいです。」
「その考えで問題ないと思います。こちらにはクルトもいますので、索敵には問題ないかと思います。」
「ふふふ。本当にライナスの召喚獣は有能ですね。この暗い森の中では大いに助かります。」
「ありがとうございます。今夜こそ、必ずミッドナイトトレントを討伐しましょう。」
「はい。もちろんです!」
野営地を出発して約1時間後、件の奴らの生息地付近に到着した。こちらからすでに視認できる距離だ。
時刻は真夜中。満月が南中する時。
その時であった、奴らの中心で白く輝くそれが見えたのは。ミッドナイトトレントである。今回は当たりのようである。
「殿下、あれがミッドナイトトレントです。あいつを討伐して花の蜜を採取しなくてはなりません。」
「あれがミッドナイトトレントですか。こんな時にこういうことを言うのは不謹慎かもしれませんが、思った以上に綺麗に輝くのですね。」
「はい。しかし、くれぐれも油断なさらずに。あれはAランクモンスターで性格は凶暴残忍です。」
「はい。わかっています。」
「それでどうすればいいかな?やはり作戦通りで?」
「はい。捜索隊は騎士と魔術師の混合部隊でナイトトレント討伐に当たります。私とリューク、フロリーナ、クルトも同じです。申し訳ありませんが、ライナスには初手攻撃とミッドナイトトレントの討伐をお願いします。」
「はい。わかりました。」
「ライナスには本当に申し訳ありません。本来であれば私たちが奴と相対するべきなのですが…。」
「殿下、それは言いっこなしです。お互いにできることを果たしましょう。」
「!そうですね。ではよろしくお願いします。」
―――――
「アイスミスト」
前回と同様、この魔法で相手の動きを鈍らせる。そこに捜索隊メンバーが斬りかかる。殿下はそれを見て、自分たちも戦闘に向かった。すでにあちらこちらで戦闘音が聞こえている。
「さて…。」
件のミッドナイトトレントはこちらの攻撃に動じていない。ずっと満月を見つめながら、その光を全身で浴び、気持ちよさそうにしているように見えた。私たちのまわりは戦闘が間断なく行われているが、ここの空間だけ、それとは無縁の世界が広がっているようだった。
「グギャ、グギャ、グギャ…」
その静寂を切り裂いたのは、奴自身の不気味な声だった。何ともいいようのない声を発しながら、こちらを振り返る。さすがAランクモンスターというべきだろうか。その視線には十分な殺意が込められていた。それと同時にこちらを小さな存在としてしか見ていない傲慢さも垣間見ることができる。
「こちらも舐められたものだね。そっちからこないなら、こっちからいくよ。ウインドカッター。」
放たれた風の刃は、奴の枝を切り裂き、幹まで到達。そこに大きな傷を残す。
「ギィィィィー!」
それが単なる痛みからきているのか、格下だと思っていた相手からの予想だにしなかった攻撃への苛立ちからきているのか、どちらともわからない叫び声だった。奴はすぐさま切断された枝を再生させた。やはり再生スピードはナイトトレントの時よりも速い。Aランクモンスターは伊達ではないようだ。
「ギィィィィー!」
奴は再生した枝で素早く攻撃を仕掛けてくる。それを剣で斬りながら捌いていく。切断された枝を素早く再生させようとするが、今度はそうはならなかった。それは私が切断時に、剣自体に氷魔法を纏わせ、枝を凍結させていたからだ。
「グァァァァー!」
枝での攻撃が不利だと悟ったのか、奴は枝での攻撃を止め、その大きな口から紫色の煙を出した。毒霧だ。私は風魔法で霧散させるのではなく、回復魔法「ハイキュア」を自身の身体に纏わせた。
魔法は使いこなすと武具はもちろん、自身の身体へも纏うことができる。これは高度な技術だが、前世の記憶と経験がある私は、それが可能だった。先程の剣に氷魔法を纏わせたのもこの一種だ。
回復魔法を直接身体に纏わせたおかげで、奴の毒から身を守りながら攻撃に移ることができる。そして、その毒攻撃が奴に致命的な隙を与えた。毒自体が奴にとって目隠しになったのだ。
私は、奴の気配を察知しながら近付いて攻撃を放った。
「武技 氷破断!」
「ギィァァァー!」
それが奴の最期の言葉となった。奴の切断された幹から一瞬に凍り始め、奴は物言わぬ氷のバケモノに成り下がったのだから。
―――――
「これがムーンシャインの涙ですか…。とてもあの凶暴なモンスターから採取できたとは思えない程、綺麗なものなのですね…。」
ミッドナイトトレントとの一戦の後、急いで殿下たちのもとに戻ったが、今回はこちらの支援は必要なかったようだ。昨日の戦いで慣れたのか、彼女たちもナイトトレントの軍勢を制していた。
「殿下、やりましたね。これでエルフツユクサとムーンシャインの涙が揃いました。あとは白クサノオウだけです。」
「そうね。やっとここまできました。これもライナスのおかげです。」
「そんな…。私は自分の役目を果たしただけですから…。」
「もっと君は誇らしくしてもいいよ。あのAランクモンスターを単独で倒したんだからね。」
「はい。」
私たちはその場を後にし、野営地まで戻ってきた。ターニャさんもムーンシャインの涙が無事に採取できたことを喜んでいた。もちろん今回の討伐戦に参加しなかった捜索隊のメンバーもだ。捜索隊の士気は否応なく上がることになった。
残りは白クサノオウのみ。
私たちは少しの休息を取った後、ベヤズ様が言っていたビル湖の南部にあるという群生地に向かった。
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