第21話:ミッドナイトトレント討伐戦③
長い間更新が滞っておりましたが、この話についても更新を再開することにしました。
できる限り更新したいと思います。
またお付き合いして頂ければ幸いです。
アイスブロックの魔法によって、私たちを襲おうとしていたナイトトレントは排除された。
「殿下、少しお待ち下さい。他の奴らも討伐してきますから。」
ライナスは落ち着いた口調でそう言うと、リュークの方へ向かった。去り際に私に回復魔法を施してくれたようで、体力が回復しているのがわかった。フロリーナも回復魔法をかけてくれていたが、彼のはそれよりも性能が高いことが伺えた。
「殿下、大丈夫ですか?」
フロリーナの言葉に返答しつつ、身体を起こした。リュークがこちらに向かっているのが見えた。どうやらリュークのまわりにいたナイトトレントも、彼が討伐したようだ。
「ライナスはすごい人だね。ナイトトレントをいとも簡単に討伐している。この分だと、他のメンバーも何とか切り抜けられるかもしれない。」
リュークは少し興奮した面持ちだった。リュークやフロリーナにナイトトレントが集まっていたとはいえ、他の捜索隊メンバーも全員戦闘中だったのだ。そのことに今更ながら気付いたのだった。
それほど時間も経たず、ライナスが戻ってきた。
「殿下、もう怪我はありませんか?」
「はい。大丈夫です。助かりました。その他のメンバーは大丈夫ですか?」
「ええ。怪我人はいますが、全員無事です。回復魔法を施していますが、休憩が必要だと思いますので、一旦、この場を離れましょう。ミッドナイトトレントのことでお話ししておきたいこともありますし…。」
「そうですか。わかりました。休息場所まで戻りましょう。」
―――――
結論から言えば、ミッドナイトトレントとは遭遇しなかった。満月の光によって、凶暴化したナイトトレントは多くいた。私たちはそれらに襲われたかたちとなったが、進化したモンスターには遭遇しなかったのだ。ミッドナイトトレントが発生しない可能性はゼロという訳ではなかったが、正直この状況は芳しくない。
「そうですか…。今回は現れませんでしたか…。」
「はい。但し、明日も満月です。もうすぐ夜も明けますし、まずは休息を第一としましょう。昼頃からナイトトレントの捜索を始めましょう。おそらく明晩が最後の機会になると思います。」
「わかりました。まずは交代でメンバーに休息を取らせましょう。」
殿下の号令で、捜索隊メンバーはターニャさんと討伐に参加しなかったメンバーが待つ待機場所まで戻った。そこでは、ターニャさんたちによって、簡素だが暖かい食事が用意されており、それを取ったメンバーは、交代で休息を取った。
殿下自身も戦闘が堪えたのか、食事を早々と切り上げて、テントに戻っていった。二人の副団長は、それぞれ交代して休むようで、まずはリューク副団長から休息に入るようだ。
私も仮眠を取ろうかと思った時、フロリーナ副団長が「少しよろしいでしょうか」と話しかけてきたので、たき火の近くで腰を下ろして、ふたりで話をすることになった。
「ライナス殿。先程は本当にありがとうございました。あのままでは、殿下も私も危険な状態に陥るところでした。」
「いえいえ。副団長も大した怪我ではなくて良かったです。」
「正直申し上げて、ライナス殿の戦闘を見た限り、とてもEランク冒険者とは思えません。ナイトトレントの討伐を踏まえると、最低でもBランク以上の実力はあるように思います。私は今回の戦闘で自身の未熟さを痛感しました。」
「いえ、そんなことは…。」
「ふふ。気を使わなくても大丈夫です。自分のことは自分が一番わかっているつもりですから。もしライナス殿さえ良ければ、この旅の間、私に修行を付けてくれませんか。正直、魔法の実力はライナス殿の方が上だと思っています。」
「そんなことはないと思いますが…。ただ、もし私でお役に立てるのでしたら、一緒に鍛練していきましょう。」
「はい!よろしくお願いします!」
彼女は元気にそう答えると、たき火を離れていった。
―――――
仮眠を終え、自身のテントを出ると、すでに殿下や両副団長は休息を終えていたようで、たき火のまわりで談笑していた。
「ライナス、しっかり休めましたか。」
「はい、殿下。少し寝すぎてしまったようです。申し訳ありません。」
「いいえ、ライナスは昨晩大活躍でしたから…。今晩もお願いします。」
殿下のその言葉に頷き、私はたき火を挟んで、殿下の向かい側に腰を下ろした。
「ライナス。早速ですが、これからどうした方が良いと思いますか。」
「そうですね。明るい内に移動を開始して、ナイトトレントの群れを見つける必要がありますね。ご存じの通り、おそらく明日も満月でしょうが、それは最終手段として考えたいので、今日が最後だと思って行動した方がいいでしょう。」
「わかりました。しかし、ナイトトレントの群れはすぐに見つかるか心配です。」
「その点についてですが、植物系モンスターは、普通の植物の同様に『群生地』みたいのが存在することが多いです。したがって、この周辺に別の群れがいても不思議ではありません。それにナイトトレントは夜行性、昼間であれば、そこまで凶暴化はしていないでしょう。」
「なるほど。それでは早速行動に移した方がいいですね。」
「はい。この場所を中心にして、捜索隊を分けて探した方がいいですね。本当は戦力を分散させたくはありませんが、時間もありませんので…。」
「わかりました。それでは、リューク、フロリーナ、そして私の3つに分けて探しましょう。ライナスは私と一緒に来てくれますか。」
「承知しました。それでは、両副団長にはクルトとドーアンを付けましょう。」
「それでは、1時間後に捜索を始めましょう!」
殿下の号令を合図に、捜索隊は再び動き出した。
―――――
「リューク、奴らの群れを発見したのは本当ですか?」
「うん。ここから更に南東に進んだ場所に小さな川が流れているけど、その周辺に奴らの群れを発見した。昨晩と比較すると小規模のようだけどね…。」
「そうですか。それではそこに決めましょう。ライナス、何か意見はありますか?」
「いいえ、殿下。特にありません。」
「群れが小規模というのが、どうしても気になりますね。ミッドナイトトレントに遭遇できるといいのですが…。」
「そうね、フロリーナ。そこは賭けになるわね。でも小規模というのは決して悪いことばかりじゃないと思うわ。それだけ戦闘に集中できるから。」
「そうですね。殿下のおっしゃる通りです。実際にミッドナイトトレントに遭遇した場合は、苦戦を強いられると思いますので、できる限りこちらが有利な状態で戦闘に持っていければと思います。」
私の言葉に、殿下は頷いてくれた。
すでに時刻は夕方に差し掛かっていた。
殿下を始め、討伐に参加するメンバーは、簡単な食事を済ませ、出発まで休息を取ることになった。その間、発見した群れはドーアンに空から監視させることになっている。
私は仮眠を取り過ぎたせいか、あまり疲れを感じていないので、たき火の近くに座って、その小さく燃える火を眺めていた。
前世でもそうだったが、このような野営の時に、たき火を眺めるのが好きだった。その火は、まるでひとつの生命であるかのように感じ、ずっと眺めていると、今日あった出来事などが映し出されるような気がするのだ。嫌なことがあれば、なかったことにしてくれるように燃え、良いことがあれば、まるで祝ってくれているように燃えていると感じた。
そんなことを想い、少し懐かしさを感じていると、こちらに近づいて来る気配を感じた。それはアメリア殿下であった。すでにあたりが暗くなり始めているので、姿全体は確認できないが、たき火の明かりでその表情は容易に読み取れた。そしてそれは焦燥の表情だった。
彼女は何も言わず、私の隣に腰を下ろした。
「殿下、眠れませんか?まだ出発まで時間はありますので、少しでも休息を取られたほうがよろしいですよ。」
「ライナス、私は少し、いや、とても不安なのです…。」
「ミッドナイトトレントのことですか?確かに、昨晩は遭遇しませんでしたが、今晩は…」
「いいえ。今晩のことではありません。もちろんミッドナイトトレントのことも心配ではありますが、それよりも妹のモニカのことが非常に不安なのです。」
「それは病状のことですか?それとも…。」
「はい…。妹は本当に回復するのかという不安です。ライナスのおかげで、微かに希望が見えたのは事実ですし、何とか捜索もここまで進んでいます。しかし、仮に霊薬の材料が揃ったとしても、妹が完全に回復するかどうか…。」
「なぜ、急にそのようなことを?」
「ナイトトレントに捕まった時に、急に妹のことを思い出しました。あの時は、無我夢中でしたし、結果的にはそれがきっかけとなって、窮地を脱することができたのではないかと思っています。しかし、いまも苦しんでいる妹の姿を想像すると、どうしても怖くなってしまうのです…。」
殿下は私ではなく、たき火を見つめ、祈るかのように言葉を発していた。その大きな不安と恐怖を表現するかのように、たき火は小さくなっているようだった。
私は小枝をたき火に放り込みながら、殿下と同じように、たき火を見つめながら、ある魔法を唱えた。
「リラクゼーション」
殿下を薄い黄緑色の光が包み込んだ。
「この魔法は光魔法の一種で、精神を落ち着かせる効果があります。殿下、モニカ殿下のことがとても心配なのは当然です。私が偉そうに申し上げることではありませんが、モニカ殿下はきっと助かります。だから、殿下も弱気にならないで下さい。確かに道は険しいですが、不可能というわけではないのですから…。」
魔法の効果はあったのか、殿下は少し微笑みながら、私の言葉に頷いてくれた。
「何だか、ライナスには何でも話せるような気がします。このことはフロリーナたちには内緒にしといて下さい。」
私が「もちろんです。」と答えると、殿下はテントに戻っていった。
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