表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

第13話:出発と魔道具と食事

ブクマが増えておりました。ありがとうございます。

 ライナス殿との最終打合せは無事に終わった。出発は2日後と決まり、彼も捜索隊に参加することになった。


 その日の夜、夕食を終えた私たちは、リューク、フロリーナと共に用意された部屋にいた。部屋は一人ずつ用意され、今は私の部屋に集まっている状態だ。


「ねえ、ライナス殿のことどう思う?」

 今日初めてライナス殿とお会いしたが、ハリス殿から聞いていた印象とは大分違うように感じた。病気の療養のため、中等学院を「休学」していると聞いてはいるが、要は「退学」であろうことは容易に想像できた。妹のそれとは違う。

 私も王族の一人。それなりの情報網は持っている。彼が学院の「落ちこぼれ」であったことは出発の直前に知った。引き籠っていた時期もあったという。

 だから、勝手な想像だが、「暗い」人間であろうという印象を持っていた。この情報は彼らとも共有していたので、同じ認識だった。要は、今回の世話役が務まるのかと心配だったのだ。

 妹の病状は改善することはなく、悪化するばかり…。予断を許さない状況と言えた。だからこそ、今回の捜索は絶対に成功させねばならないと強く決意していた。そういう気持ちもあって、抱えた心配は大きくなるばかりだった。


 しかし、今日会ってみて、その印象は180度変わることになった。冒険者として活動していることが影響しているのか、暗いなどということはなく、受け答えもはっきりしており、精悍ささえ感じた。それにあの知識。本当かどうかはわからないが、もしその情報が本当なら、博識であると言える。

 その発言のひとつひとつが、彼が「落ちこぼれ」ではないと物語っているようだった。

 彼の話を聞き終えた私は、思わず彼を捜索隊に誘っていた。そして彼は、その誘いに間髪入れず「はい。」と答えたのだ。その表情からは戸惑いや不安は感じられなかった。


「そうだな…。印象は良かったね。何か聞いていたのとは違うようだね。とりあえず情報を与えてくれたのには感謝だね。それに殿下の誘いを迷うことなく了承したことから見ても、戦闘能力にはそれなりに自信があるみたいだよね。」


「リュークの言う通りですね。私も好印象も持ちました。確かに情報の信憑性には疑問はありますが、彼が学院の『落ちこぼれ』だとは信じられません。こちらに来てから何かあったようですね…。」


 彼らの印象も悪いものではないらしい。

 それはそうだろう。彼から与えられた情報によって、捜索隊にしっかりとした目的地と少しの希望が与えたのは事実なのだから。


―――――


 トーマスとセバスは少し怒っているというか、不満を持っている様子だった。

 私が急遽、捜索隊に参加することになったが、彼らは心配してくれているようだった。トーマスは「ライナス様がわざわざそんな危険地帯に赴かなくても…。」と不満を漏らしていた。「これも臣下の務めですよ。」と私は彼を慰めた(笑)。


 2日後の出発に向けて、しっかり準備する必要があった。食糧や野営道具、武器や回復薬等だ。それらはすでに捜索隊のために滞りなく準備されていたが、私が彼らに迷惑をかけるわけにはいかないから、自分の分は自分で準備した。私にはインベントリがあるため、物資の収納には困らないのが幸いだった。これなら食料も新鮮な状態で運ぶこともでき、何なら料理も出来立ての状態で運ぶこともできる。「大森林」地帯での活動は、死と隣り合わせと言っても過言ではない。食事時ぐらいは、皆さんに安らいでもらいたいと思う。


 しばらくの間、レイカールを離れることになるから、アンジェラたちや孤児院の皆さんに一応挨拶はしておいた。

 

 アンジェラたちからは「まだEランク冒険者なのに、あんな危険地帯に行くの!?」と驚かれ、「まあライナスなら…」と変に納得もされた。だけどリサからは「ちゃんと帰ってきてね…。」と涙ぐまれながら、手を握られた。「ちゃんと帰ってくるよ。」と優しく答えた。


 クロエたちからも同じようなことを言われた。彼女たちも少し涙ぐんでいたように思える。院長は「どうかご武運を。」と言ってくれた。


 もちろん死ぬつもりはないけど、これで何が何でも無事に帰ってくる理由ができた。


―――――


「よーしっ!ここで停まれ!今日はここで野営する。」

 

 今朝レイカールを出発した捜索隊は、特に問題なく一日の工程を終えようとしていた。「大森林」地帯の入口までは、レイカールから徒歩で約5日間程度を要する。捜索はまだまだ始まったばかりだ。


 捜索隊の一行が手際よく野営の準備をしている。殿下のお付きのメイドたちも、殿下が使うテント、そして食事の準備をしている。彼女たちは殿下の専属メイドであるが、今回はそれ以外に食事の準備も担っている。ちなみ、普段は殿下のお世話に以外に護衛も兼ねているとのことで、その戦闘能力は高いらしい。


「さてと…。」

 私も自分の野営準備を始めた。殿下からは私の分も準備すると言われたが、あまり迷惑をかけるのも気が引けたので、「自分でできますから大丈夫です。」とお断りした。


 実は、冒険者活動をしている中で、インベントリを多用していたのだが、最近になって、そのインベントリにアルバート・ヘーゼルダイン時代の道具が残っていることに気付いたのだ。前世の記憶を辿ると、それはアルバートが使用していたもので、不要となったものだった。不要になった理由は様々あるが、新しいものを購入したり、もっと便利なものを見つけたりとそんな理由だった。だから、決して不良品やゴミというわけではない。それらを整理していくと、昔の野営道具も残っており、まだ使えそうだったので、今回持参することにした。

 いや、使えそうというレベルではなく、とても便利なものだった。それらはほとんどが「魔道具」であったからだ。


 魔道具は、その名の通り魔法を付与された道具を指す。その種類は多岐に渡り、魔導コンロや魔導蛇口等の生活必需品から、魔法の剣や弓、盾など武具類も存在する。アルバートが残していたそれらは、数こそは多くはないが、生活必需品や武具類等があった。


 現在私は、魔導テント(1人用)を設置し終えたところだ。ただ、普通のテントのような作業はなく、インベントリから取り出すだけでいい。見た目は1人用の小さなテントだが、中はそれなりに広い。リビングと寝室が1つの部屋にまとまったような感じとなっており、簡単な料理であれば自炊をできる。しかもシャワー、トイレ付きという有難さ。このテントのまわりに結界魔法でも行使すれば、まるで自宅にいるのと同じような快適さで野営をすることができる。


 それから、魔導コンロとスープが入った大鍋を取り出し、それを温め直す。出発前に屋敷の料理人にお願いしていくつか作ってもらった。これで30人分ぐらいがあるだろう。せっかくだから捜索隊の皆さんにも召し上がってもらおうと考えている。本当は出来立てをインベントリに収納したから、温め直す必要はないんだけど、気分の問題だと自分に言い聞かせている(笑)。


 スープからのいい匂いがあたりに広がるせいか、皆さんの視線がこちらに集まっている。すると、殿下の専属メイドでメイドリーダーのターニャさんが、こちらに近付いてくる。


「失礼します、ライナス様…。その…、もし良かったら、殿下のためにスープを分けて頂けますでしょうか。今回はパンや塩漬け肉など、保存がきくものがほとんどなので、最初くらいは温かいものを召し上がって頂きたくて…。」

「もちろん構いませんよ。殿下だけではなく皆さんの分もありますので、ぜひ召し上がって下さい。」

 そう答えると、皆さんから「よっしゃー!」という元気な声が聞こえた。やはり美味しい食事はテンションを上げるものだ。


―――――


「ライナス殿、先程は美味しいスープ、ありがとうございました。」

 食事を終え、あたりを警戒する者以外はすでに休憩に入っている。野営時に警戒は交代で行われるとのことで、私も志願したが、「こちらに任せて下さい。」と殿下からは断られた。そのお言葉に甘えることにした。


「それにしても、ライナス殿は収納魔法が使えるのですね。それに魔道具もお持ちのようで。正直驚きました。」

「いえ、そんな…。たまたまです…。」

 アメリア殿下は、きれいな顔立ちをなさっている。相手が王族で、しかもきれいな人から褒められると、正直どう反応すればいいか迷い、ちょっと片言の返しになってしまう。今世はもちろん前世の私は、女性の扱いに長けているわけではない。


「ふふふ。やはり冒険者として活動するには必要なのでしょうね。」

「まあ、そうですね…。」

 冒険者全員が収納魔法を使えるわけではなく、魔道具を持っているわけではない。むしろ少数派だろう。だけど、適当にごまかしておく。


 殿下と少しお話をした後、翌日からの行動に備えて就寝することにした。


 旅はまだ始まったばかりだ。

読んで下さり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ