第11話:捜索準備
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霊薬の材料が「大森林」地帯に存在することがわかった翌日、アメリアは王宮でとある人物と会っていた。
「ハリス・ロックハート殿、今回はご協力感謝します。」
「もったいないお言葉です、アメリア殿下。モニカ殿下の治癒は我々臣下だけではなく、国民全員の願いでもあります。それに協力するのは臣下の務めです。」
「そう言って頂けるとありがたいです。何しろ『大森林』地帯は未開の地。しかも霊薬の材料の捜索には、ある程度の時間を要することになるでしょう。そうなると、どこか近い場所に拠点が必要になります。」
「はい。ロックハート家として、最大限協力させて頂きます。」
今回の霊薬材料の捜索にあたり、アメリアは拠点をレイカールにあるロックハート家の屋敷に置くことに決めた。
「大森林」地帯は、レイカールの南西部に位置し、スナイデル王国とクラフ公国の間に広がっている。両国の国境は「大森林」地帯となっているが、その地帯自体が広大な国土を持っており、両国で明確な国境は定まっているわけではない。
過去においては、両国で「大森林」地帯の開拓が行われた時代もあったが、そこに生息する獣やモンスターが平均Bランクと高ランクなものばかりであり、早々と開拓計画は白紙になった。そこまでして開拓する必要もなかったのである。それ以降、「大森林」地帯は、未開の地であると同時に危険地帯として認識されるようになったのである。
妹であるモニカの病気を治す霊薬「冷涼の風」。その材料が「大森林」地帯にある。材料の獲得は難しく、正直存在するか断定もできない。しかし、今まで何の目途も立っていなかった治療に少しでも希望が湧いたのである。アメリアの決意は並々ならぬものがあった。
父親である国王レオポルト・ファン・スナイデルもそれは同じであった。
当初、アメリアの捜索隊への参加には否定的であった彼であったが、彼女の熱意に根負けし、その参加を認めた。
そして、未開地の捜索、第一王女の参加ということも重なり、捜索隊は王国騎士団副団長、宮廷魔術師団副団長を筆頭に、軍部のエリート30名程で構成されることになった。
アメリア自身も現在「アルトゥナ高等学院」に在籍し、文武両道の模範の生徒として有名であったため、この捜索隊は王都ではすでに有名になりつつあった。
大規模な捜索隊となったため、「大森林」地帯から最も近い都市であるレイカールを治めるロックハート家が拠点や物資提供等、様々な支援を実施することになった。ちなみ費用負担は大部分が国庫から出るが、その国庫を司っているのはロックハート家当主であるハリス・ロックハート財務大臣であり、今回の捜索隊支援には最も適した人選であると言えよう。
「そう言えば、ロックハート殿にはモニカと同期のご子息がおられると伺いました。」
「はい、三男のライナスでございます。モニカ殿下と同じアルトゥナ中等学院の1年生に在籍しておりましたが、現在は『休学』しております。」
「まあ、そうなのですか…。どこかお身体でも?」
「ええ…。半年ほど前に体調を崩してしまいまして、療養のために領地へ帰還させました。」
「そうですか。それは心配でしょうね。」
「愚息のこと、ご心配して下さり、ありがとうございます。ただ、領地の気候が良かったのか、最近では体調も良くなり『冒険者』として活動しているようです。」
「まあ、『冒険者』に。あの職業は場合によって命の危険もあると聞きます。」
「はい。ライナスはアメリア殿下のように武芸に秀でていたわけではないのですが、何やら自主的に鍛練に励んでいたようでして…。まだまだEランク冒険者ではありますが、先日、奴隷商団『イル・ウルス』の幹部を討伐したと報告を受けました。」
「まあ、それは本当ですか?それはこの前王都に送られてきたヨスとかいう人ですよね?確か100万テーレの賞金首だったとか。」
「ええ。まあ、一緒に討伐にあたった衛兵団長が気を利かせて、愚息の手柄にしたのだと思いますが…。」
「レイカールに赴いたら、ぜひ一度会ってみたいですね。」
「はい。愚息には、今回の捜索隊の支援を手伝うよう指示をしておりますので、何なりとお申し付け下さい。」
「ありがとうございます。頼りにさせて頂きます。」
アメリアとの話を終え、部屋を出たハリスは疑問に思っていた。果たして、ライナスの活躍はどこまでか本当なのかと。トーマスやサイモンから同じ報告を受けているため、本当に賞金首を討伐したのかもしれないが、はて…。
もしかしたら本当なのかとも思ったハリスであったが、捜索隊への支援を滞らせないことが先決であると、頭を横に振ってそのことは忘れることにした。
―――――
「アメリア殿下が逗留される?」
今朝、トーマスが緊急ということで来訪したと知らせを受けた。彼は少し慌てた様子で父ハリスからの手紙を見せてくれた。そこには、病気で臥せっておられるモニカ殿下の霊薬の材料が「大森林」地帯にあるかもしれないこと、その捜索隊としてアメリア殿下と騎士団・魔術師団が来訪されることが書かれていた。
「ハリス様曰く、この屋敷及び周辺施設を捜索隊の拠点とするようです。今後、王都から具体的な指示が順次為されるとのことでした。」
「父上や兄上はいらっしゃらないのか?」
「はい。この時期は予算決定等、繁忙期にあたるとのことで、ライナス様がハリス様の名代を務めるようにとのことでした。」
「父上も思い切ったことをなさるな…。一応、こっちは『療養』のために滞在しているのだが…。」
「ははは。それはもう過去の話では(笑)。Eランクとはいえ、今では冒険者として活動されておりますし、先日は賞金首討伐の手柄も挙げられましたから。」
「まあ…、それはそうだが…。それで殿下はいつこちらに?」
「2週間程度後のことのようです。」
「わかった。セバスやシエスタとも協力しながら受入準備を進めよう。セバス、シエスタもいいかな?」
「「「はっ!!!」」」
―――――
王都出発前日。
アメリアは、王都騎士団副団長リューク、宮廷魔術師団副団長フロリーナと共に、最後の確認を行っていた。
「殿下、これで明日の準備は大丈夫でしょう。後は現地で調達しましょう。ロックハート家でも様々準備してくれているようですし。」
「そうですね。リューク、フロリーナ、よろしくお願いします。」
「まあ、まかせてください殿下。きっと材料を見つけてみせますよ。」
「またリュークは殿下に対してそのような言葉使いを。何度注意したらわかるのです。」
「別にいいじゃないか、リーナ。アメリア殿下はそこらへんの貴族様とは違って、そんな小さいことを気にしないお人なんですよ。」
「ふふ。ええ、そうね、リューク。頼りにしてるわよ。」
「ういっす!」
「はああ…。殿下もリュークに甘いのですから…。それとリューク!私のことは、『リーナ』ではなく、ちゃんと『フロリーナ』と呼んで下さい!」
「はいはい。」
アメリアは幼少の頃から、リュークから剣術を、フロリーナから魔法を教わっているため、3人の仲は身分の違いを感じないほど良いものになっている。
「そういえば、ハリス殿から興味深い話を伺いました。」
「何です?殿下。」
「何でも、今回ハリス殿の名代として三男のライナス殿が世話役となるとのことでしたが、彼はモニカと同年齢にも関わらず、レイカールで『冒険者』として活動しているとか。」
「その年齢で『冒険者』というのは珍しくないのでは?王都では子供で『冒険者』として王都内の清掃等に従事している者もいると聞きます。」
「それが、先日王都に送られてきた『イル・ウルス』のヨスという人がいたでしょう。何でもあの賞金首を討伐したのが彼らしいんです。」
「それはいくらなんでもハリス殿は見栄を張り過ぎってもんじゃないですか。多少武芸を習ったことがあったとしても、実戦で賞金首を討伐なんて無理なんじゃ?」
「確かにハリス殿も『部下が忖度しただけだと思います』と言っていましたが…。少し気になりませんか?」
「そうだね…。もしそれが本当だったら、一度手合わせしてみたいな。」
「また始まった。リュークの悪いクセが…。」
フロリーナはため息をつきながらも、その少年がちょっと気になるのであった。
明日はいよいよ出発の日である。
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