はい、あ~んして。
痛かったら 手を挙げてくださいねって
本当に辛かったら そんなの無理
きゅいいいい きゅいいいいいいん
きつく閉ざした瞼 見守る母親
滴る血潮 苦痛にまみれた眉間の皺
もうすぐ出番だ 逃げたい 帰りたい
泣き喚き 暴れていた
聴こえていたから 予約を取り消したい
「は~い、終わりましたよ~」
しくしく泣き 頬を擦る じつに痛々しい
覚悟を決めてーー 飛び込んだ
「あ~んしてくださいねー」
こどもじゃねえんだよ 馬鹿にしてんのかって
大人なのに 泣いた
やがて訪れる宿命。
完全なる麻酔があれば良いのにねぇ。