理解のない父
この調子の悪さはもう父に黙っていられるレベルじゃなさそうだ。いつかは話そうと思っていたがこうも早くこの時が訪れるとは……。
今日は日曜日だから父は休み。僕は仕事で午後八時まで仕事。でも、体調不良のため早退した。店長には、
「あまり続くようだと病院行けよ」
と言われてしまった。言われなくても行こうと思っていたから頭にきた。でも、反発はせずに我慢した。
「わかりました」
冷静を装って言った。
自宅には午後五時過ぎに帰宅した。父は僕が早く帰ってきたので、
「達郎、早いな。どうしたんだよ」
僕は父の表情を窺いながら、
「体調悪くて早退したんだ」
父の右の眉が上に上がった。
「なんだ、風邪でもひいたのか?」
僕が言い辛そうにしていると、
「違うのか?」
父はこちらを見ている。厳しい父だから今から言うことは受け入れて貰えないかもしれない。勇気を出して打ち明けた。
「この前も調子悪くて病院に行ったんだ。そしたら……うつ病と医者に言われた」
父の顏は見る間に険しくなった。
「お前、医者に言われてどう思った?」
僕は俯きながら、
「そうなのか、やっぱり病気なんだと思った」
「うつ病なんてそんなの気の持ちようだ。薬飲んでるなら薬に頼るな! 自分の気持ちで何とかしろ!」
やはりそう来た。理解を全く示さない。
「今は薬の力が必要なんだ。良くなったらやめるけど」
父は相変わらず険しい表情だ。
父の様子を窺いながら、
「やっぱり理解してもらえないよね」
「理解も何も医者が勝手につけた病名で、お前はそれでいいのか!」
だんだん父はヒートアップしてきた。
「仕方ないじゃないか」
父は苦虫を嚙み潰したような顏をしている。僕は何で分かってくれないんだ! と内心強く思った。でも、案の定だ。理解してもらえないのは。仕方がない。父のお金で生活させてもらっているからあまり反発はしない方がいいだろう。こちらが不利になっても困るから。
「仕方ないで済ますなよ。もっと頑張れ」
父の言った、もっと頑張れ、に腹がたった。充分頑張っているのにこれ以上まだ頑張れというのか! だが、それも言わず仕舞い。なので、ストレスが溜まりに溜まる。発狂しそうなくらいに。僕の気分は最悪だ。
畜生! クソ親父! 一瞬、父に殺意が芽生えた。でも、さすがに殺すという行動には移さないが。一時の気分だけでそんなことをしたら大変なことになる。それこそ犯罪者だ。
こういう場合は友人に愚痴ろう。中学時代の同級生、大石啓介に。今、外は曇り空。彼は自宅の農家の後継ぎだ。トマトと米を作っていて、家族経営のようだ。啓介には両親と妹家族、祖父母の九人暮らし。大家族だ。彼の家に行くといつも賑やか。
とりあえず、夜、会えるかLINEしよう。