僕と一緒に働く仲間達
僕の父の小島卓一は厳しい面が多い。特に仕事のことに関しては。病気になる前も疲労が酷くてさぼろうと思い頭痛いから休むと嘘をついても、どうせ嘘なんだろ? と見透かされてしまう。勘の良い父だ。母以上だと思う。うつ病のことはまだ話していない。怠けているだけだと言われそう。今回ばかりは本当のことだから貫き通すつもりだ。仕事だって短時間勤務にしようと思っていたがそういうわけにもいかなくなり、八時間勤務だ。十時から十九時までで休憩は一時間。煙草を吸う従業員はその都度、暇な時を見付けて吸いに行っている。
従業員は店長を入れて五人いる。男性は店長を入れて三人。女性は二人。男性は鈴木恒夫、四十六歳。電器屋の店長。頭は禿ていて、中肉中背。息が臭い。これには参る。きちんと歯を磨いているのかな。性格は神経質で気難しい。確か、電卓の資格を持っているはず。彼は高血圧で薬を昼休みに飲んでいる。店長だけにいい給料をもらっているだろうから食べ物も贅沢なのだろう。前に飲み会で聞いたのは、子どもはいなくて奥さんとは離婚しているらしい。店長の浮気が原因らしい。事務所にいる時は、頻繁に煙草を吸っている。それで、息が臭いというのもあるのだろう。
僕と同じパソコン担当の辰巳秀介二十二歳は勤続三年目だったと思う。高身長でイケメン、痩せていて女性にモテるようだ。モテるだけあって彼は女性との会話が得意なようだ。逆に僕は女性と話すのは緊張して少し苦手。女性は好きだけど。辰巳さんは僕と同級生の彼女がいる。羨ましい。その子は僕の好みではないけれど。持病はないと思う。それだけ楽しい思いをして病気にはならないと思う。前に誘われて遊びに辰巳さんの家に行ったら、既にビールを飲んでいた。訊いたら毎晩飲んでいるようだ。煙草も吸っていたし。彼の人生は楽しそうだ。人のことを羨んじゃいけないと聞いたことがあるけれど、これだけ僕との人生を比べるとやむを得ないと思う。
他には、駒木亜由という従業員がいる。二十三歳なはずだ。飲み会で亜由さんが言うには高校を卒業して今の職場に就職したらしい。勤続四年だと思う。見た目は黒髪で可愛い顔立ちをしていて清潔感がある。でも、結構短気なのではと思う。我慢しているようだけれど。去年のバレンタインデーにお菓子をもらった。嬉しかった。もしや? と思ったけど淡い期待だけで終わった。
店では彼女が煙草を吸っている姿は見たことがない。プライベートでは吸うのかな。仕事中でしか会ったことがないからよく分からない。でも、以前休憩が一緒の時に未婚で子どももいなくて彼氏もいない、と言っていた。意外と寂しい生活を送っているのかな、と思った。
本人がどう思っているかは分からないけれど。
あと一人は、山川瑠璃さん、三十八歳。熟女だけど、スタイルがいい。自分でも言っているけれど、ボン、キュッ、ボンな感じの体型だ。茶髪でセミロング。身長は女性にしては割と高い方だ。結構はっきりと言うタイプの人なのでたまに心に刺さることを言われる。何を言われるかと言うと、主に仕事のことだ。ああいう接客はまずいと思うとか、否定される。だから、苦手なタイプ。気も強いし。この前、休憩が一緒だった時飲みに行かない? と煙草の煙を吐きながら誘われた。でも、それは僕が長期休暇を取る前のこと。だから、実現はしていない。あまり行きたいと思ってなかったのでちょうどよかった。でも、旦那がいるのにいいのかな、と思う。小学六年生の子どももいるみたいだし。
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午後から社長と店長で話し合いを予定通りしたらしい。僕のことも含めて。
そして、結果の電話がさっき来た。内容は、隣町とこの町にある店を両方に籍を置く形になるらしい。要は、チラシの入った前の日と当日に隣町の店舗に行って働くようだ。それ以外は今まで通りという話だ。話が変わった理由は人件費の問題らしい。結局のところ、僕ら従業員は会社の都合で動かされる将棋の駒のようなものだと感じた。