8.最初の仲間
街に入ってから初めての戦闘の後、俺は噛み千切られた足に彩華に治癒属性を付与させて治した。
俺は、街の中を進んでいく途中、幾度か光が空に昇って行くのを見た。
「あれは···パンドラの箱から出た光と同じ···、能力を得たやつらも殺されてるって事か。」
「そう···なんだろうね。私たちも早く他の人と合流しないと。」
「ああ、そうだな。」
俺たちは街の端の方だが、もう少し行くと、商店街がある。今のところ生きた人に会えていない。見たのは無惨に殺された人達。壁にぶつけられたのか、頭の半分が潰れた死体。腹を引き裂かれ、腸をぶちまけている死体。手足が潰された死体。体のあちこちに穴を空けた死体。他にも、体のパーツや血が散乱し、もはや地獄絵図に近い風景が広がっていた。彩華も、最初こそ吐いていたが、もう慣れたのか、それとも吐くものすらなくなったのか、それは、聞いていないため、分からない。
※※※
俺たちは途中サイカルグに襲われる事も無く、街の商店街にやってきた。そして、俺たちが荒れた商店街を歩いていると、突然、人の声が聞こえた。
「ああ!ホントに何なンだよ、この街は!どうなってんだよ。」
明らかに男性の声。そして、あれだけ元気に生きているということは、能力持ちの可能性が高い。俺たちは、声が聞こえた辺りに行って、確かめることにした。
少しして声の主を見つけた。果たして、俺の予想は当たっていた。サイカルグと戦った後だったらしい彼は、筋肉質で、背は高め。少し長い、茶色っぽい髪は、所々、血にまみれていた。
俺は、タイミングを見計らって声をかけた。
「あの、すみません、あなたも能力持ちなんですか」
話しかける言葉が特に見つからなかったので、とりあえず、話しを持っていきやすいように話しかけた。
「何だ?お前らもこの変なの持ってんのか。つーか子供じゃねえか。」
「はい、そうです。それで、あなたにお願いがあるのです。」
「何だ」
「単刀直入に言いますが、私たちの仲間になってくれませんか。こんな状況になっている以上、能力を持っている人たちが一人でも多く集まった方が良いと思いますから。」
それを聞いて男は少し考え、
「···その考えのった。但し、2つ条件がある。」
「何ですか。」
「まずお互い名乗ろうぜ。俺は界斗だ。」
「ああ、そうだな。俺は神夜。で、こっちが」
「彩華です。よろしくです。界斗さん。」
「ああ、こちらこそだ。」
お互いに名乗った後、2つ目の条件に移った。
「で、もう一つの方は。」
「···お前らが作ろうとしているグループの頭は、お前らがやれ。少なくとも適任の奴が見つかるまでは。」
「あんたは?俺たちより年上だろう?」
「俺は無理だ。今の現状からも判断できる。俺は今、この街がいきなり変な化けもンに襲われてパニックになってただけだった。だが、お前らは冷静に考えて俺を仲間にしようとしている。なら少なくとも俺が頭になるのは適切ではないだろう。」
「···そうか。分かった。あんたがそれで良いならそうしよう。」
こうして、最初の仲間ができた。