7話 女子デート
今日は日曜日。
華の女子高生生活における日曜にふさわしい快晴である。
……意味がわからないだって?私にもよくわからない。少々テンションが高すぎるのかもしれない。
仕方がないだろう?なぜなら、これからいわゆる女子デートというやつが行われるのだから。私を含めた3人で行われる、女子高生生活初めての同性の友人との休日ショッピングというやつだ。これから、 「キャー可愛い!」 などと言いながらお買い物をするのである。現時点で既に少々おかしなテンションをしていたとしても許してほしいものだ。
本日の私の服装は水色の花柄ワンピースに白のパンプス、薄ピンクのショルダーバッグである。前の日曜日と同じように高校生にしては少々大人びてはいるものの、春らしく、非常に可愛らしい恰好といえるだろう。
……クラス会の時と比べて随分気合が入っていないかって?何を言っているのかね。確かにメンバー自体は3人ともクラスメイトであり、当然全員参加であったクラス会の時もいたために目新しさはない。だが、今日行われるのは高校生活初の女子デート。クラス会などより気合が入っていて当然だろう。
そんな可愛らしい恰好をして集合場所であり、デート会場でもあるショッピングモールへと向かう。
道中、いつものように多くの見知らぬ方々の目線を集めたり、
「ものすごい美人が1人でなんか凄く楽しそうにしている」
というような話し声を耳にしたりした。いつもと比べなにか微笑ましいものを見るような目を多く感じるような気がしたが、別に構うことはあるまい。
そうしてショッピングモールに到着。どうやら私が一番最後に着いたようだ。現在の時刻は午後1時50分。集合時間は10分後のはずだったのだが、2人とも私と同様にこのデートを楽しみにしてくれていたということだろう。一体何分前から来ていたのだろうか?
「こんにちは、小林さん、岡田さん。待たせてしまってごめんなさい」
「こんにちは、北条さん! いやいやまだ集合時間前だから!」
「こんにちは! そうそう。楽しみ過ぎて30分前から来てたあたしたちが悪い!」
本日の私の女子デート相手は、以前のクラス会の発起人であり、クラス委員である小林理央さんと、普段からよくクラスで小林さんと仲良くしている女子である岡田春香さんである。
しかし30分前に2人とも着いていたのか。彼女たちがそこまで楽しみにしてくれているなんて、非常に嬉しいことである。
冷静に考えると、すること自体は単なる買い物に過ぎないのだが、彼女たちも私と同じように初の女子デートという響きに魅力を感じているのだろう。
「ふふふっ。私もだけど、二人とも楽しみにしてくれているのね。それで、まずはどのお店から見てまわりましょうか。」
「あ、それはね、春香がまず行きたいお店があるみたい」
「そうなんだよ! 凄く可愛い服を売っているお店があってね……」
この広いショッピングモールには非常に多くのお店が存在しており、女性用洋服や靴、雑貨など女子高生の興味を引く物がたくさん販売されている。
そのため、ある程度店を選んでから見てまわらなければ、時間を無駄にしてしまう。ただ無目的で話してまわるのもそれはそれで楽しいものなのだが、せっかくの初めての女子デートなのだ。極力移動時間などは短くして少しでも満喫したい。
それら多くの店の中で、岡田さんが最初に選んだ店は流行りものの可愛らしい洋服が売ってあるブティックだった。
非常に女子高生らしいチョイスと言え、女子デート最初の時間を彩るにふさわしいお店だろう。
「これ可愛い~。北条さんこれ着てみて! 絶対似合うから!」
「理央の持っている服もいいけど、このチュニックも絶対可愛いから着てみて!」
などと言い小林さんも岡田さんも各々私にさまざまな服を着せようと持ってくる。
これがあの、いわゆる女子同士の着せ替えっこというやつか。
ふっ……よかろう。小林さんに岡田さんよ、どんな服だろうと完璧に着こなす私の美しさに恐れ慄くがいい。
と、新たな服を着るたびに可愛いと称賛されるため、私は調子に乗って次々とされるがまま着せ替え人形となっていたのだが、時間的にそろそろ別のお店に行った方がいいだろう。非常に名残惜しいことではあるが。
「とても名残惜しいのだけれどお洋服選びはこの辺りにして、次はどのお店に向かいましょうか」
「は~北条さんほんと可愛かった。春香、次のお店ってどんなところだったっけ」
「えっと、次のお店はね……」
前世では男であり、買い物に行くときは何か明確に買う目的のものがあった上で訪れていたため、女性たちのウィンドウショッピングだの、非常に長い買い物だのに対して何が楽しいのかさっぱり理解できなかったものだ。
しかし、女子となった今なら少しだけわかる。
仮に今見ているものを実際に購入するわけではないのだとしても、可愛いものをただ愛でてキャッキャしているだけで楽しいのだ。
特に友人と一緒であればなおさらで、冷静に考えると特になんでもないようなことをしている時間であろうと友人とそれを行っているというだけでなぜか非常に楽しくなってくるものなのである。
このような気持ちにさせてくれる彼女たちと一緒に過ごすことができ、いつものことながら私は本当に恵まれていると感じる。
「小林さん、岡田さん。今日はありがとう。2人と一緒にいろいろなお店を見てまわれて本当に楽しかったわ」
「こっちこそありがとう! 北条さん本当に可愛くて一緒にいて楽しかった!」
「理央は本当に北条さんのことが大好きね。もちろんあたしも凄く楽しかった! また3人で一緒にどこかに遊びにいこうね!!」
このようにして私は女子デートを存分に楽しむことに成功し、ホクホク顔で帰宅したのだが、家でもしばしばデートのことを思い出してニヤニヤしていた私の顔を見た母と弟に、 なんだこいつ という感じの非常に微妙な顔をされた。
……失礼な連中である。
これからは多分2~3日に1話投稿していくペースになりそうです。