3話 クラスメイト
改めて教室 (というかクラスメイト)を眺めてみる。
やはり一番上の進学クラスのため、男子の割合が高かった。クラスメイトは私を含めて40人いたのだが、女子は10人だった。
しかし、4人中1人女子がいるというのは、前世では男子校かつ理系だった私にとっては随分と多いと感じた。
普通の女子高校生ならば女子が多い方が嬉しく思うのだろうか?私は特に嬉しくも悲しくも感じないのだが。
クラスメイトに関しても、創作物によくあるような美男美女揃いというわけではなく、普通だった。美男美女がいないわけではいないが、普通のどこでもあるクラスの美男美女の割合と同じという感じである。
見た目をまず気にしてしまうのは私が元男だからなのだろうか?
……普通に性格が悪いからとかは言わないで欲しい
まあ、私自身はずば抜けて美人であるのだが。
……それはさておき、少しして担任の山田先生がやってきた。
山田先生も妙に若いとかではなく、普通の40代後半くらいの男性だった。
先生のひどく当たり障りのないお話を聞き、クラスメイト一人一人で軽く自己紹介をしたところで、今日はこれで解散とのことだった。
そのため、帰宅準備をしていたところ、私の隣の席の女の子が話しかけてきた。
確か高橋さんだったか。名前は思い出せない。
自己紹介したのでは?しかも隣の席で数少ない女子だろう?と思うかもしれないが、この娘は特に目立つところもなく、もしお互い知り合いでなければ、すれ違っても特に何も思わず一瞬で忘れるような感じの娘であると言えばわかってもらえるだろうか?
……我ながらひどいな。しかし、考えているだけだから許してほしい。意外かもしれないが私は優しい娘との評判なのだ。そのような発言や行動をとっている。ちょっと失礼なことを考えるだけならばみんなしているだろう?
「北条さん!」
「……なにかしら。高橋さん」
「自己紹介で覚えてくれたんだ! 嬉しい!」
……名前は憶えていないが。しかし元気な娘である。自己紹介だとこんな感じではなかったのに。勇気を出してくれているのだろうか?だとしたら嬉しいことだが。
あと、お前口調おかしくないか?とか言わない。私はクール系美人なのだ。
「えっとね、私、北条さんみたいな綺麗でお姫様みたいな娘初めて見たの! だから私とお友達になってくれないかな!? 高校生活最初の友達は北条さんみたいな素敵な人がいいなと思って!」
……いちいち「!」を付けなくてもいいのでは?と思うかもしれないが、彼女の声のボリュームはそれだけ大きいのだ。みんなに見られている。
そして高橋さんは何を言っているのだろう?論理というか順番が明らかにおかしい(並び替えてもちょっと変な気がする)。緊張しているのだろうか?
私が綺麗で素敵だというところは正しいが。
「……ありがとう。ぜひ、お友達になりましょう」
「あ、綺麗とか素敵とかは否定しないんだ」
「…………」
……暁光学園にてできた初めての同性の友達。
これから彼女を中心に私の高校生生活が送られていくのだろうか?
……私は転生者であり、預言者ではないのだが、そんなことはないと断言できる。
「……北条さんってやっぱりいじられキャラなんだ。かわいい」
……そして君。なぜか君とは長い付き合いになりそうな気がするんだ。それこそ高橋さんよりよほど。いや、別に嫌なわけじゃないのだけれど。
そして、そのあと、元々の知り合いである秋山君と、高橋さん以外のクラスメイト全員が私の机まで群がってきて友達になろうと口々に言ってきたのは言うまでもあるまい。
私は秋山君とそんなに何度も話した記憶はないのだが、彼が既に友達だと思っていてくれているなら嬉しいことだ。
ちなみに、例の彼の名前は……いや、みなまで言うまい。なぜかしっかりと覚えてしまったのが悔しい。いや、別にいいのだけれど。
……これが高橋さんのおかげというのなら感謝すべきかもしれないな。こういうところが彼女の魅力なのかもしれない。そこまで考えてのことだったとは思わないけど、偶然というものの大切さを私は他人よりも理解しているつもりだ。
けど、苗字すら覚えていない人もいるからどうしようか。
「ねえ、早紀。お友達は早速できたりした?」
「うん。38人ほど。名前はこれから覚える」
「(……この娘は一体なにを言っているのかしら……)」
「あと、秋山君が同じクラスだった。テストの成績が良かったから同じクラスになったんだって」
「へえ、秋山君が! 知り合いがいてよかったわね! 彼凄く優しくて面倒見よくて野球上手くて頭もよくていい人だし!」
「秋山君のせいでなぜか私はいじられキャラになった」
「…………」