1話 華の女子高生生活
超の付くエリートがまさかのTS転生
私の名前は北条早紀。
春からは華の高校1年生であり、転生者である。
名前で明らかなように、私の性別は女だ。
前世では男だったのだが。
前世では男だったのだが。
前世における死因は交通事故だった。そして死の直後に女の子の赤ん坊として転生した。
死の直後というのは、私の感覚的なものではなく、時間的なものであり、前世で死を迎えたのは西暦2x10年、今世において記憶を取り戻した1歳時点では2x11年であった。
この説明から察することができるだろうが、私は前世と同じ世界に転生を果たした。
女として。
まあ、性別が変わってしまったといえ、転生して、更に同じ世界で2度目の人生を歩むことができることは非常に幸運なことであるということぐらいは理解できている。
そのため、転生直後は混乱していたが、転生できた幸運に感謝し、女としての第二の人生を全うしようと考えた。
私は前世からその手の割り切りをするのが得意であった(能天気とも言えるかもしれないが)ため、一人称や口調などを女性のものにすることに対する抵抗は少なかった方だと思う(比較対象がいないのであくまでそう思うだけだが)し、前世に対する未練もないわけではないのだが、自分はもう北条早紀であると考えることができていると思う。
とはいえ、基本的な考え方は前世の男のそれを基にしているため、男の趣味趣向を持った女となってしまっている。
恋愛観に対しては、女の体になってからというもの、女性を恋愛対象として見ることがなくなった。
ならば男性に恋をしたことがあるのかというとそうでもなく、そっちの方面に対しては今後どうしていくのか自分でもよくわかっていない。
まあなるようになるのだろう。
そうして、女としての第二の人生を全うしている最中なのだが、その人生を語るにおいてまずは私のスペックについて簡単に説明させていただく。
前世において、自慢ではないのだが、私はいわゆるエリートであり、日本一の大学である帝国大学の大学院生だった。そんな人間が転生したため、勉強は3年生含めて普通の高校生には負ける気がしないという程度にはできる。無論、すべての試験で満点を取り続けるのは明らかに不自然なため、前世の自分を思い出しながらほどほどに間違えるくらいの小賢しさもある。
また、顔についてだが、前世でも上の下程度はあり、勉強面でのスペックも相まってかなり女性にモテていたのだが、今世における私の顔はそんな自分でも驚くほど良く、2度の人生を合わせて今の私よりも美人な女性は見たことがないほどである。
スタイルも非常によく、足がすらっと長く、胸も大きく、ばっちりくびれており、色白で、お肌もピチピチ、特に食事に気を付けなくても太らない。
また、これは前世からのことではあるのだが、基本的に何をやってもそつなくこなすことができる。
要するに今の私は自他共に認める超ハイスペック女子だということだ。
……勘違いして欲しくないのだが、私は自分のことは好きだが、決して自分を過剰に評価しているというわけではない。スペックがありえないくらい高いのは他人からもいつも言われていることだ。
そのため告白された回数はもはや数えきれない。
しかし、先に述べたように男性に恋をしたことがなく、すべて断っている。
別に私が男性と恋愛をすることに対する嫌悪感自体はないのだが、この体になってから恋愛的な意味で誰かを好きになったことが未だないのだ。
今世における唯一にして最大の懸念点がそこであるのだが、まだ15歳、焦る必要はないだろう。
そんな私だが、今日から私立暁光学園の1年生。2度目の高校生生活をどう歩んでいくか楽しみにしているところだ。
「早紀~もう準備できた―?」
1階から母の声が聞こえる。
「うん。今行くよ」
軽快に階段を降りていく。今日は快晴で、新たな高校生活を迎えるにあたって非常に幸先の良い朝と言えるだろう。
リビングのテーブルの上に朝食が用意されているのが見えた。
今日のメニューはご飯とみそ汁とハムエッグである。
私の好きな組み合わせで、大いに今日の活力となってくれること間違いなしだ。
「おー。姉ちゃんの制服姿初めて見るけど着こなしすげー」
リビングに入った瞬間、弟の勇人がそんなことを言ってきた。
「おはよう。勇人には見せたことなかったっけ。似合っているでしょう?」
と軽く一回りして制服姿を見せつけてから私は席に着いた。
……重ねて言うが、私は過剰なナルシストではない。自分からも他人からも見て私が美人すぎるのが悪い。事実を言っているだけである。
「おはよう。その通りだけど、いつものことながら自分でそれ言う?」
私が美人すぎるのが悪い。
「早紀が可愛いのはわかったから、それより早く食べて学校行こう?」
と、母が急かしてくる。なんか軽く流されている気がするがまあいいだろう。
食べ終わり、歯磨き等の準備が終わったところ、弟が何か面白いことでも起こること期待したような顔で
「姉ちゃん高校でどんなトラブル起こすか楽しみだなー」
などと言ってきた。
「……別に何もするつもりはないのだけれど」
「うっそだあ。中学の入学式で当時の生徒会長に一目ぼれしましたとか言われて告白されたの忘れたの?あのときの姉ちゃんの顔ほんと面白かった」
「……あれはあの人がおかしかったのであって、私が問題を起こしたわけじゃない」
……懐かしい記憶だ。確かあのときは弟も付いてきてたっけ。
中学の入学式が終わって、他の多くの学生と同じように家族と一緒に写真を撮っていたところ、突然当時の生徒会長(当然会ったことはない)に告白されたのだ。あのときは油断していたのもあり、呆然とし過ぎて時が止まったかのように錯覚した。まさかそんなことが現実世界で本当に起こるとは思っていなかったからだ。そんな私を置いて、周りは当然非常に盛り上がった。
……無論丁重にお断りさせていただいたが。
「何かまた面白いネタ楽しみにしてるよ。姉ちゃん」
「………………」
……弟の勇人はこんな性格だが、私ほどではないが(男にこの表現は正しいのだろうか)かなりかっこよく、身体能力も非常に高く、去年2年生ながら野球のU15に選ばれたりしている男だ。
そのため、数多くの野球の強豪校からスカウトされており、来年は私と同じく暁光学園の生徒となる予定だ。また、勉強も私ほどではないができる。
当然女性に非常に人気で、中学に入ってから彼女を絶やした期間はないのだという。
……つまり、似たようなことが君にも起こる可能性あるってことだからね?
「……まあ、そんなことはいいわ。行ってきます。お母さんも、行こう?」
「ええ。勇人、戸締りきちんとね」
「うん。いってらっしゃい!」
そう。そんなことはもうどうでもいい。
今日から華の女子高生生活なのだから。
それに、何か起こったとしてもそれもまた2度目の青春の1ページとして考えればいいのだ。
私の精神年齢はみんなより高いわけだし、余裕を持って接すればいい。
……何も起きないとそれはそれでつまらないし。
こんなことを考える私にも問題があるのかもしれない。いや、そんなことはないはず。
こうして、私の2度目の高校生生活が幕を開けたのだった。
暁光学園。 明け方の空の光という意味。