03
アデルス・フィールたち一同は第5エリアに向かっていた。
この都市アトランティスには、11のエリアが存在する塔の周辺1から3のエリアは住宅街、4から6エリア飲食店は、服飾などの日常品が取り扱われている、7から9のエリアは工場などの製作所になっている。
そして、10は自分たちの軍の待機する場所だ。11エリアは特殊なエリアで、都市を守っている防壁膜のエリアの限界となっている。
「アデルくんは3年前に都市に来たのか、道理で知らないわけだよ。」
5エリアに向かう途中に自己紹介をしていた、しかし、彼らは自分たちの自己紹介は既に行っていたらしい。だが5分前ギリギリに到着したのだから悪いのは自分である。そして、彼等は自分にはない共通点があった。同じ軍大学らしく、話したりしたことはあまりなくても顔は知っていたらしい。ゆえに簡潔で済ませることができたはずだったのだが、軍大学は5年間在学が普通なのだ。だというのに年齢もさほど変わらないというのに知られていない自分の存在に驚きを隠せなかったらしい。
「俺はスカウトみたいなものなんだ、この都市に保証人になってくれたファザーって人が軍にできれば入ってほしいって手紙が来ていつもお世話になっているからそのために軍に入ったんだ。」
ファザー。見たこともない謎な人だが、この都市に滞在するために保証人になってくれた人で、軍に入る前は仕送りまでしてくれた人。だが、人のお金を使うのが怖くて、重要なこと以外では手に付けなかった。そういう意味で、自分にとっては感謝しきれない恩人である。
「軍にスカウトされるなんて、あんまりないことだけど凄いんだね、アデルくんは。」
「・・・・・。」
金髪の少年ウイルナー・バッケンが褒めてくるのに対して赤い髪の少女。ミナガセ・チヤが熱い視線を送ってくる。もちろん。睨みつけているのだが…。彼女の気持ちもわかるものだ。スカウトで途中参加で約2年ほどだ。誰が見ても未熟者だ。自分は彼等より3年も軍大学に在籍しているのだ。足を引っ張り、怪我をさせられたりしたらとんでもないものだ。彼らでさえ軍では未熟、だというのに民間人程度のものと一緒に闘うなど、軍の指示でなければ御免被る問題であろう。
「まあなっちゃったんだからしょうがないでしょ。みっちん」
軽い溜息をつくもミナガセ・チヤを宥めに彼女の肩に手を据える。髪を短く切りそろえた茶髪の少女キラ・ミズハ。軍大学トップの成績を残した優秀な彼女。彼女とミナガセ・チヤは幼馴染であり、ライバルでもあるらしい。そんな彼女の成果なのかミナガセ・チヤは肩を下ろし、諦めたのか睨みつけるのをやめたのだが。
「アデルス、あなたはスカウトかなんだかしらないけど私は認めてない。理屈も道理も理解は出来ても納得まではできないわ だから明日から私たちと訓練しなさい。」
「訓練?」
「そう、私たちの部隊には幸い成績上位者ばかりだし、得意な科目でならそれなりに出来ると自負もしてる。だからあなたの実力が私たちの基準に合わせる訓練をするの。それともわたしたちに勝てるかしら?」
もちろん勝てる...わけがない。自分は彼らと違って寮で勉学に明け暮れなどしたこともない。運動はそれなりに自信はあるけど武器の扱いに自信はないのだ。彼らに教えを乞うものはたくさんあるだろう。
「わかった、未熟者だけどよろしく頼むよ。」
「わかればいいのよわかれば」
「そっけない態度とっちゃってぇ~みっちゃんの照れ隠し~」
「んなッ!」
先ほどまでのまじめな顔をしていたミナガセ・チヤはみるみる赤くなっている。そのほっぺを突いて笑うキラ・ミズハ、そんな姿を見て釣られて笑ってしまうウイルナー。これから楽しい日々が始まりそうだ。