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01

それは、天を駆け抜ける流れ星。どんな光より煌々と夜を照らし、夜闇を引き裂いていく。

ただ一つではない。いくつもの星々が天から落ちていくのだ。見たとき美しいと思うのが一瞬。こちらに落ちてくるとわかると恐怖に塗り替えられていく。

 そして、光は舞い降りる。それは、破滅の光。逃れることなど許しはしない。世界が壊されていく。大地を、海を、空を侵食していくのだ。この日、間違いなく一度世界が終わったのだ。だが、それがなんだ?それでも人類は抗い続けるのだ。燃え尽きた街を見ても、誰が死んでも戦い続ける心。そんな無様に転げまわっても諦めない人間はどんな世界にでも必ずいるのだ。そんな人はいつだってその時代を導く英雄となるのだ。







 第一都市 アトランティス

 彼は、走っていた。

 「しょ、初日から遅刻はマズい!」

 ボサボサな髪を整えもせず、口に食パンを咥えて街道を走る彼は、アデルス・フィール。初めて上官と顔合わせする日から遅刻をしそうになる自覚の足りない軍人である。

本来ならこんなことにはならず、十分前行動が当然なのだが、今日に限って緊張して眠れなかったうえに目覚ましの電池が切れていた。しっかりと確認すればよかったと思うが、時間は戻らない。

 焦りながらも彼は、集合場所であるアトランティス中心の塔エテルネルに向かっていた。

正直間に合わないかもしれない。集合時間は9時だというのに8時45分を切っている。そんな状況だというのに信号が俺の足を止めてくるのだ。信号無視?軍服を着た俺が?できるわけねぇだろ!と考えながらも時間は迫り、焦燥感に駆られていく。そんな冷や汗を感じていたら信号で待っていた横の車の窓ガラスが開き、視線が不思議とそちらへ向く。

 「よぉアデル! やけに汗だくだな 急いでるのか?」

 「デン!丁度いいところに!乗せてくれ!」

親しい間柄の人たちは俺をアデルと略して呼んでくる。この男は、デン・オッケナード 彼は、自宅の近くに親父さんが経営しているパン屋の息子さんで、最近は訪れる事もあり、この都市の初めての友達だ。だが、今重要なのはそんなことではない。

 「お、おい…勝手に乗るなよ」

デンの言葉を無視し、俺は車のドアを開けて助手席に乗り込んでいく。

 「悪いのは承知なんだ!でも頼む!エテルネルまで送ってくれ!」

俺は、デンに頭を下げ、お願いするが、彼は返事なく信号が青になったのを見て、運転を再開する。

方向はエテルネルの方だ。きっと俺の一生懸命さが伝わったのだろう。と。一息ついたとき

 「…お客様 いくら出しますかな?」

こ、こいつ汚ねえ

 「...一万でどうだ?」

 「よし次の道を左に曲がりま~す。」

そっちはエテルネル方面じゃない!だいたい車で10分だぞ!いくらタクシーでも万は取らねえぞ!

 「いくらなんでも高過ぎねえか?こちとらようやく仕事を始めるっていうのに」

 「キャバと酒を経験すればアデルにもわかるさ、しょうがない二万でどうだ?」

 理由を聞きたくなかったが、仕方があるまい。ここで受け入れなければ上官に目を付けられるどころか同僚に侮蔑の目で見られるなど耐えられるものではない 俺はしぶしぶ財布から二枚のペラペラを渡し、受け取ったデンの笑顔はゲス野郎だった。


 エテルネルに無事に送ってもらい時間はぎりぎりであるも遅刻は避けられた。車から降りたときにデンに寝坊するなよと言われたがお前に言われたくねえと思いつつも、またデンに金を要求されたくないので今度からは寝坊しない。

 そして、入り口に貼ってあった部屋の番号を確認し、指定された部屋に入室すると3人の軍服を着た人が座っていた。俺も近くの椅子に腰を下ろし、安堵をつくのも数分のこと、入室してきた扉から命令が下される。

 「総員、起立し整列。これより新特殊戦闘17部隊の諸君に入隊式行う!」

同じ部隊の同僚、自分を含めた4人は即座に顔を引き締め、整列していく。それは、確かに軍人として、新人としてとも言えるが、この上官の気迫のある声のせいだろう。嫌でも背筋が張ってしまうのだ。

 「よろしい、楽にしろ」

 整列というなの観察試験か何かか各々に視線を向け終わり、俺たちは、命令に従う。

足を開き、腰を手に、相手の目を見て、静寂するのだ上官の視聴を意識しろ。

 「私の名はロッケ・ブルト大佐だ。まずは入隊おめでとう。私は諸君を歓迎する。諸君は、選ばれたものだ。」

 そっとバッグに手を伸ばし、ブロック型の4つの黒い箱を取り出し、各々に黒い箱を渡していく。開けようとして、ふと上官の方に振り向くと頷きを返してくる。開けろということだろう。

 中身は、青みがかかっているが、透き通った菱形の石だった。

 「それは、聖天石、石が持ち主を選び、武器を顕現する特異武器。現在は適合者に限りがあるゆえに所有者は少ない。そして、当然ながらそれは、君たちの聖天石だ。自分にしか使えない他者が触れても何も反応も示しはしない。ちょうどいい武器を出してみろ、聖天石に武器を思えば石が武器に変化する。」

 ちょっと不気味な石だな、自分が思えば武器に変化するなんて、まるで意識があって、生きてるみたいな。

石を握りしめると石から青白い光が指の隙間から漏れていく。その石は、

 『・・・・・・・。』

いま、翼を持った少女が頭の中に刷り込まれてきた。漆黒の羽根、黄金の髪、深紅の瞳をした不気味な少女の姿が一瞬だけ意識を上書きした。だが一瞬だ。気づいたときには黒のハンドガンと白銀の剣が握られていた。

黒のハンドガンには紅色の線が輝いている。白銀の剣も同じ様に紅色の線があった。他の3人の同僚に目を向ける限り全員成功しているらしい。

 たださっきの少女は一体何だったのか冷や汗が滲みでるが他の3人は特に動揺した様子はあまり見受けれない。動揺しているのは石から武器が出たということだけなんだろう。

 各々の様子に変化がなく武器に変化できたのを確認したのかロッケ大佐は安堵していたように見えた。あまり事例のないことなのだろう。俺も聖天石なんて聞いたことのない代物で、やはり異例のものなのだ。だがそれは束の間、ロッケ大佐の顔には引き締まっているのがわかった。

 「各員、無事に武器を顕現できたようだな。結構。そして、その武器が強力なものではあるがそれを与えられた意味をよく理解してもらいたい。君たちには都市の外の防衛や『祝福』の獣の対処など。君たちは実践で真価を試される場合が多々あるだろう。だが、君たちが明日の希望となっていることを心から願っている。 各員ご苦労、本日はここで解散とする、ご苦労。」

 ロッケ大佐は敬礼をし自分たちも応えると部屋から退出していった。だが、ここで自分たちも解散というわけにはいかないだろう。一番左に座っていた金髪、蒼眼の瞳、整った顔は美形の少年、そんな彼が声を上げる。

 「みんな、これから親睦を深めるためにどこかよっていかないか?これから一緒にやっていく中でお互いのことがわからないと心配だ、なにより僕たちは長い付き合いになりそうだからね。」

 長い付き合いにはなるだろう聖天石が使える貴重な人材ゆえだろう。確かに不安もあるのは事実。他の2人も異論はないようで頷きを返していた。

 「君はどうだい?」

 「わかった。付き合うよ。」




 

 



 

 

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