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A.S.M −1− お兄ちゃん観察日記♪

略語を使い、申し訳ありません。

『A.S.M』とは『Another Story MIZUHA』の略です。

因みに日本語訳的には『番外編』と取っていただくと分かりやすいかと……

今回のは瑞葉視点ですが、今後は様々な人物の視点で書きたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

高校生になってはや半月。

私、並川瑞葉は今日も昼休みをお兄ちゃんと過ごすべく4時間目の終了を告げるチャイムが鳴ると同時に教室を飛び出した。

私たち1年の教室は4階建ての校舎の3階部分にあり、お兄ちゃん等2年の教室は4階にある。

私のクラスはD組で、フロアの真ん中にあり両側りょうサイドにある階段からは一番離れたところだった。

お兄ちゃんの教室はC組だからこの位置はすごく不都合ではあったものの、ものの1分で着くのであまり気にしていなかった。


「おに〜ちゃ〜ん?」


2Cの教室のドアから顔を出しながらお兄ちゃんを呼ぶものの返事が無かった。

と、そこへ見た事のある人物が近づいてきた。


「あら、瑞葉ちゃん。こんにちは」


確か、入学式の次の日に来た……


「……南先輩?」


「違うわよ〜。千草よ、千草美鈴!」


あぁ、確かにそんな名前をしたお兄ちゃんを惑わせる忌々しき悪魔がいたような、いないような……


「あっ、そう!お兄ちゃんいませんか?」


教室を見渡しても姿が確認できなかった。


「えっ……並川君ならさっき走ってどこかに行っちゃったわよ」


それを聞くと仕方なく私は教室に戻る事にした。

入学して2週間、毎日毎日昼休みは2Cに来ていたが、一緒にご飯を食べたのは最初の2回だけだった。

それにまだこの校舎の構造が良く分かっていなかった私では、1年のアドバンテージがあるお兄ちゃんには勝てなかった。


「あ〜あ、今日も食べれなかった……」


昼休みに入ってまだ5分しか経っていなかったので、ちょうど今授業が終わったクラスもあった。

教室に戻ると私の席にこの2週間で出来た友達が来ていた。


「おかえり〜!お昼一緒に食べよ♪」


彼女たちは近くの椅子を持ってきて、お弁当を私の机の上に広げていた。


「優ちゃん、紗枝ちゃんの今日のお弁当はな〜に?」


私とは違って料理が上手な優ちゃんと紗枝ちゃんは自分でお弁当を作っているらしい。

私のはお兄ちゃんの手作りなので文句なんて一切ないのではあったが、それでも女の子が作るお弁当には興味があった。

そう言えば以前、お兄ちゃんに一度だけお弁当を作ってあげたのだったが、家に忘れて食べてもらえなかった事があった。

お兄ちゃんが家に帰ってから食べさせたのだったが、さすがに痛んでいたのかその後お兄ちゃんは失神しながら呻いていた。

それ以降一切台所に立たせてもらえず、やらせてもらえる料理としてはトーストを焼く位の物だった。

果たしてそれが料理に入るのかどうかは分からないが、お兄ちゃんの作る料理は絶品なので私が作る必要がないわけであった。


「ふふふ……今日はオムライスを作って見たの〜♪」


優ちゃんはそう言いながらお弁当箱の蓋を開けると、そこには薄焼き玉子の上にハートのマークが書かれたオムライスがあった。


「うわ〜、おいしそ〜!」


少し型が崩れてはいた物の、とても美味しそうだった。


「私のはこれだよ」


今度は紗枝ちゃんがお弁当箱を開けた。

中にはタコさんウィンナーを筆頭に様々な動物さんシリーズが並んでいた。


「か、可愛い〜♪」


食べるにはもったいないくらい動物さんたちは可愛かった。


「瑞葉ちゃんのお弁当は〜?」


優ちゃんがわくわくした表情を浮かべながら私を見ていた。


「今日は……」


お兄ちゃんが作っているので中身を知らない私は、このときが一番楽しみであった。


「じゃぁ〜ん!エビチリに青椒肉絲チンジャオロースだよ」


いつもより若干豪華なお弁当に自分でもビックリしていた。


「わ〜!朝から中華料理を作るなんて……瑞葉ちゃんすごいよ〜!」


実を言うと、彼女等にはお弁当は自分で作っていると言っていたのであった。


「ま……まぁね♪今日はちょっと時間があったから張り切っちゃった♪」


張り切っただけじゃ済まされなさそうだったが、紗枝ちゃんがタイミングよく話を逸らせてくれた。


「そういえばさぁ〜、瑞葉ちゃんはもう部活動決めた?」


気がつくともう4月の終わり。

そろそろ提出の期限だったが、私は既に決めてあった。


「うん。私、中学校からテニスやってるから高校でもやろうかなぁ〜ってね」


中学ではそこそこの実力だったと私自身でも思っていた。


「そうなんだぁ〜。私はどこにしようかなぁ〜?」


おしとやかな優ちゃんに似合うのはやはり文化系の部活だろう。


「じゃぁ、今日一緒に回って見ない?」


一見運動部だったように見える紗枝ちゃんも実は中学時代は文芸部だったと言うのだから驚きである。


「そうだね。じゃぁ、行こうか♪」


そんな話をしているうちに昼休みが終わってしまった。

その後、淡々とした日々を送っていた。

そして金曜日……


「帰り遅くなるから、夕飯待ってて!」


仮入部した部活が終わり、自宅に帰っていた私のケータイにお兄ちゃんからメールが届いた。


「えぇ〜!なんで〜?お兄ちゃん、帰宅部じゃなかったっけ?」


すぐさま返信するも、その後メールの返事が返ってくることは無かった。

やる事が無く、リビングでテレビを見ていると外で物音が聞こえた。


「この足音は……」


私はすぐに玄関に行くと、5秒後にドアが開いた。


「お帰り〜♪お兄ちゃん」


いつものようにお兄ちゃんに飛びつこうとしただったが、なぜか今日に限っては事前に察知されていたらしく、避けられてしまった。


「も〜、抱きつくぐらい良いじゃん!」


私の言葉をよそにお兄ちゃんはなにやら急いでいるようだった。

それを察した私は猛スピードで料理を作るお兄ちゃんには手を出さずに再びテレビを見る事にした。

20分後……

私の為に作られた料理の数々に私は目を奪われていた。


「わ〜!いっただきま〜す♪」


お兄ちゃんが作る料理はいつも美味しいが、今日のは絶品だった。


「おいし〜♪」


黙々と食べる私にお兄ちゃんは何か言っていたが、今の私の耳には入ってこなかった。

そして、食べ終わってから私は気づいた。


「美味しかった〜♪ねっ、お兄ちゃん。……お兄ちゃん?」


既にお兄ちゃんの姿は見えなかった。


「も〜!」


再び1人になった私はその後早めに寝床に着いた。

そして、月曜日……

いつも通り4時間目が終わり、2Cに走っていた時であった。

階段を駆け上がっていると、目の前にお兄ちゃんの姿を発見した。

名前を呼びたい気持ちを抑えて、お兄ちゃんの後を尾行してみるとA組の後ろ側のドアの辺りでお兄ちゃんはキョロキョロと不自然な行動を取っていた。


(まさか、可愛い子をさがしてるんじゃぁ……)


そんな事を思っていたのだったが、どうやら違ったようだ。

お兄ちゃんはA組のドアとは逆の方を向きドアを開けた。


(確かあのドアは、学校を回ったときに空けちゃいけないと言われていた様な……)


しかし、実際にお兄ちゃんはそのドアを開けていたのだから害があるものではないだろう。

私はお兄ちゃんの姿が見えなくなると、そのドアを開けた。

するとそこは外だった。

明確に言うと、屋上に繋がるバルコニーのようなところだった。


「なるほどね……」


私はどうしてお兄ちゃんの姿を見つける事が出来なかったのか、今理解した。


「まぁ、今日のところはこの位で……ふふふ……」


呟きながら私は教室に戻った。

教室では既に優ちゃんと紗枝ちゃんがお弁当箱を広げていた。


「ごめ〜ん。遅くなったって」


私が席に着くと、2人は互いに見詰め合ってから頷き私に話しかけた。


「あのさ〜、瑞葉ちゃんって兄弟いる?」


突然の質問に意味が分からなかったが、一様答えておいた。


「いるけど……なんで〜?」


その答えを聞き、再び2人は見詰め合い頷く。


「もしかして……もしかしすると、兄弟って東馬先輩?」


「えっ……?なんで知ってるの……?」


予想外の答えに私は唖然とした。

まだ彼女等には話したことはなかったのではあったが……


「やっぱり。けど、東馬先輩ってちょっとカッコいいよね〜♪」


これまた優ちゃんの予想外の告白に衝撃を受けた。


「まぁ、カッコいいかは分からないけど、料理は上手だよね〜!」


はたまた何故紗枝ちゃんがお兄ちゃんの料理の腕を知っているのか、私は耐えかねて2人に訊ねた。


「2人はなんでお兄ちゃんを知っているの?」


話す事10分……

このときようやくお兄ちゃんが部活動に所属していたことを知った私であった。

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