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第22話 姫と庶民の暮らし方 〜前編〜

空が我が家に来てから4日が過ぎようとしていた。

毎日空に連れ回まれる生活を送っていたが、これはこれでまた解放感があり楽しいものだった。

そんなある日の早朝、日課となった新聞を取りに行くと新聞以外に珍しく郵便物があった。


「ん?なんだ、これは……」


滅多に来ることのない代物なのでかなり戸惑っていた。

ただでさえもこの現代、手紙など書く習慣が消えつつあるので封筒に入った手紙を読むことがなくなっていた。

そう考えてみるとこうして心の籠った手紙というのは案外嬉しいものなのかもしれない。


「何々……

『拝啓、並川様

先日は空さんの歓迎パーティーにご招待頂きありがとうございます。

さて、本日私の誕生日パーティーが催されることはご存知でしょうか?

そこでこのパーティーにあなた方をお招きしたく思います。

都合がよろしければ是非参加をお願いします。

敬具、千草美鈴』」


そう言えば確かに今日は千草さんの誕生日であった。

いや、決して忘れていたわけではない。

最近いろいろありすぎて思い出すのに時間がかかっただけなんだ……

誰もいないところで一人自分の過ちを否定していた。


「お兄ちゃんどうしたの?

早くご飯作ってくれないと部活遅れちゃうよ〜」


リビングで苦情を訴えてくる瑞葉の声で現実に意識を戻した。


「えっ、もうそんな時間!?

10分……いや、5分待っててくれ!」


僕は大急ぎでキッチンに戻り、朝食の準備に取り掛かった。

そう言えばパーティーなんて何着ていけばいいんだ……?


――――――――――――


そんなわけで部活に行く瑞葉を送った後、呼び出したわけだが……


「そんなわけで僕はどうすれば……」


「そんなってどんなわけだよ!

まだ何も説明受けてないから」


いつもとノリ突っ込みが逆になっているが、そんなことは今問題ではない。

夏休みの午前7時というかなりの早朝に親友である大智を呼び出したわけだが……


「なんだよ、使えないな〜。

親友だと思うならそこら辺はこう……テレパシー位つかえるだろ?」


「んなもん使えるかぁ〜!

っていうか、最近俺の使い酷くない!?」


絶妙なタイミングで突っ込んでくるところが、親友として過ごしてきた絆を感じたようなしないような……


「そんなことは全くないぞ。

別に大智をわざと省いたり、わざと考えないようにしていたことなんか一度もないぞ!」

「やっぱりわざとだったのか……」


始めうちは面白い半分でやっていたが、いつの間にか止めるタイミングを見失っていた。


「だから僕が言いたいのは、人生初で最後になろうパーティーというものにはどんな服装で行けばいいのかと聞いているんだが……?」


「それを今初めて耳にしたのだが……。

つまりお前は緊張してパニクってるあげく、たかだかパーティーごときにとんだ勘違いしている恥ずかしい奴ということか!」


思っていたより核心を正確にかつ的確についてきた大智に一瞬で主導権を握られてしまった。


「た、確かに緊張してパニクっているが恥ずかしい奴とは心外な!

ぼ、僕は元々恥ずかしい奴だから………そ、そんなこと言っても動じたりはしないからな!」


「お前………パニクりすぎ……」


そんな話がその後大体30分位続いた。

予想外に時間を食ってしまった僕等は話の始めに戻ることにした。


「改めて、パーティーっていうのはどんな服装が好ましいんだ?」


「だ・か・ら、さっきからも言っているんだが、お前と同じ用に平々凡々な生活を送って来た俺にどんなアドバイスを期待してるんだ?

もっとたくさん適任者はいるだろうが!」


確かに大智の言うことには一理ある。

だが、僕の周りにそんな人物は………。

いや、1人だけ適任者がいた。

それもすごいのが………


――――――――――――


「で、なんで私を呼ぶんですかぁ〜!?」


と、緊急事態が発生したと呼び出しをくらったのはフローレラだった。


「いや、だって……。

確かフローレラは王族出身の皇女で、何人もの男を金で買っては捨てるという伝説を…………」


「そんな根も葉もないことを……」


久しぶりに我が家に呼ばれたフローレラの第一声がこれだった。

事実と反した設定を着色され、フローレラはかなり落ち込んだ表情で僕等を見ていた。

ちょっと悪い事をしたかもしれない……


――――――――――――


「で、なんで私を呼ぶのよ!?」


「もうこうなったら逆に庶民的な意見で行こうかと……」


屈辱的な理由で呼び出された柊は当然のことながら怒っていた。


「そ、そんな理由で……

言っておくけど、私の家は結構お金持ちなんだからね!」


勿論それを知っているから呼び出した訳だ。

まぁ、既に庶民的な人が一人いたが全く使い物にならなかったのだから、2人も必要ないということだ。

そこに気付かない柊もまだまだだな。


「ちょっと待て!

お前今、俺に対して嫌みを言わなかったか?」


「気のせいだろう……」


本当は既にテレパシー的な能力持っているんじゃないかと思わせる位勘が鋭くなってきたような。


「そこでだ!

是非とも柊にパーティーの極意を教えてもらいたいんだが……」


こうして柊の元、特訓が始まった。

パーティーまで残り8時間………

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