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第18話 相手の事を考えて

『エンジェル・ハウス』


主に女性向けの商品を中心として今人気絶頂のブランド店である。


「こんなところになんの用ですかぁ〜?

分かった!誰か女の人にプレゼントを渡すとかですか?」


うぅっ、なかなか鋭い洞察力を持っている……

いきなり核心を突かれそうになりたじろいでいた。


「まぁ、私に渡しても兄以外からは受け取らないけどねぇ〜♪」


またもや聞き捨てならない言葉が……

いや、考えるのは止そう……瑞葉と同じ匂いが……

生まれてこの方16年、磨きがかかった僕の第6感がそう告げていたからには考えない方がいいのだと逸る気持ちを無理に押さえこんだ。


「で、誰なんですかぁ〜?その相手は……」


「えっ、そ、それは……」


正直僕は迷っていた。

プレゼントを選ぶのには相手の特徴や個性などを参考にしないと選べないわけなので、言わなければならないと思っていた。

だが先ほどからの若嶋のテンションだと言った翌日には噂として広まってしまう可能性があまりにも高すぎた。


「それは〜?」


ニヤニヤしながら近づいてくる若嶋から逃れようとしていたが、既に背中は店の壁についていた。

絶体絶命

まさにその言葉がこの状況を表していた。

万事休すか……

そう思った矢先だった。


「あれ、ゆうしゃ……じゃなくて東馬さんではないかなかな?」


「ちょっとフローレラさん走ったらあぶな……えっ、東馬さん!?

な、な、なんでこんなところに……」


そこに現れたのはまた不釣合いな2人だった。

そうそう、例のゲームの世界から抜け出してきたフローレラを連れて家から去った大智は仕方なくフローレラを大智の家で引き取る事にしたらしかった。

当然のことながら大智の家には恵美ちゃんがいたが、大智は『ホームステイに来たフローレラ』と言う名目で恵美ちゃんを説得したようだった。

始めのうちは慣れない生活が続いたが次第に打ち解けあい、今では恵美ちゃんとフローレラは姉妹のような仲になっていると僕は大智から聞かされていた。


「おぉ、フローレラに恵美ちゃんじゃないか。

偶然だね〜。元気にしていた?」


危ういところで若嶋の詰問から逃れる事に成功した僕は慌てて2人に話を振った。

しかし、突然のことだったので2人は話についてこれてはなかった。


「えっ?まぁ、はい」


「ところで東馬さんはこんなところで何してるのかなかな?」


くっ……フローレラまで敵に回ってしまったか……

こうなったら上手く誤魔化すしかないと考えた僕だったが、こういうときに限って良い言い訳が思いつかなかった。

追い詰められたせいか、徐々に血の気が引いていくのを感じた。


「あぁ、そういえばそろそろでしたよね。誕生日は」


今まさに最後の砦も敵の手に落ちてしまった。

確信をつく恵美ちゃんの一言でもうどうすることも出来なくなった僕は正直に話そうと口を開いたその時だった。


「瑞葉ちゃんの……」


「えっ?」


恵美ちゃんの言っていることが上手く理解出来なかった。


「今何を……」


「だから、そろそろ瑞葉ちゃんの誕生日だからそのプレゼントを選びに着たんじゃないんですか?」


なるほど。

確かに瑞葉の誕生日は8月10日だから千草さんの誕生日のすぐ後というわけか。

ここは上手く話を合わせて……


「はぁ〜、ばれちゃったか。

そういうことだから、3人とも協力してくれないかなぁ〜?」


「そういうことなら任せるYO!」


「親友の為なら……」


「仕方ないですね〜」


こうして3人は協力してくれることになった。

各々気に入りそうなプレゼントを選ぶということで、別行動を取る事になった。

そう言えば例の罰ゲーム以来、恵美ちゃんと瑞葉はいつの間にやら仲良くなっておりしばしば家に遊びに来ることも多くなっていた。


「ようやくこれで一安心か……」


意外と広い店内で僕は安心しきっていた。

今のうちにこっそりと買ってしまえば……

そう思いながら棚に並ぶ賞品をみていた時だった。


「何が一安心なんですか〜?」


背後から突然そんな声が聞こえてきた。


「うわぁ、って若嶋か……ビックリさせるなよ」


「先輩、実はプレゼント渡すのは瑞葉ちゃんじゃないから『今のうちにこっそりと買ってしまえば……』とか思っていたとか?

まぁ、今回は見逃してあげますけどね……」


言うだけ言うと若嶋はその場から立ち去っていった。

こ、こえぇ〜。

てかなんで読心術なんて物使えるんだよ!?

知らざる若嶋の一面を見せられ、あまりの恐怖に鳥肌が立っていた。

そんなこんなでこっそりとプレゼントにペンダントを買った後に再び店を回っていると、恵美ちゃんとフローレラに呼ばれた。


「これなんてどうでしょうか?」


2人が同時に指差した先には可愛らしいマグカップがあった。

それも2つ付きの。


「別に2つじゃなくてもいいんじゃん?」


そう言うと2人は怒ったような表情を取りながら言った。


「「2つじゃないとダメなんです!」」


2人の迫力に押され、瑞葉のプレゼントにペアのマグカップを買った。

そしてその帰り道……


「今日はありがとう。

みんなのお陰で良いものが買えたよ」


そう言うと僕等はそこで別れた。

後日、2人にはそれぞれプレゼントを贈り喜んでもらえた。

が、それはまた別のお話。

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