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第2話 お姫様は転校生!?

入学式の後片付けが終わると同時に部活終了のチャイムが校内に鳴り響いた。

僕は疲労感と不安感に悩まされながら帰宅した。


「ただいま……」


この言葉を発してからわずか0.5秒後、妹が飛び掛ってきた。


「お帰り〜♪お兄ちゃん」


僕は後片付けの疲れで体が思うように動かずに、妹を受け止めてその場に倒れた。


「お兄ちゃん……?ねぇ〜お兄ちゃん!」


遠のく意識の中で妹は僕の事を呼んでいた。

次第に手足の感覚が無くなっていき、そして深い眠りについた……。


「こ……ここは……?」


いったい僕はどこに辿り着いたのだろう……

長い長い時を経て僕はいったい……


「おっ、気がついたみたいだな。大丈夫か、東馬?」


なんとなく聞き覚えのある声……

僕よりの早く亡くなった友達っていただろうか……?

というよりの何か最近聞いたような声が……


「大智……?」


なんで大智がここに……?

というよりも大智もまた……


「死んでねぇ〜よ!」


恐ろしい突っ込みだった。

てか大智よ……いつの間に人の思考を読めるようになったんだ……?

また一つ不安要素が増えつつも薄れていた意識を取り戻した。


「ここは……?」


「お前の部屋だよ。昨日お前は家に帰ってから玄関で倒れて、お前の妹さんが親切にも部屋まで運んでくれたらしいぞ。感謝しろよ」


道理どうりで足に引きずられた痛みがあるわけだ……

それに良く見て見ると部屋をあさられた形跡が……


「てか、昨日って……僕は丸1日寝込んでいたってわけか……」


1人で項垂うなだれていると大智が再び話を切り出してきた。


「そうそう、今日は俺のほかにもう1人来てるんだ。そろそろ部屋に来る事だと思うけど……」


丁度いいタイミングで部屋のドアが開いた。


「おまたせ〜」


ドアの先にいたのは我がクラスのアイドル的存在である千草美鈴ちぐさみすずであった。


「なんで千草さんがここに……?」


驚きと喜びが入り混じり何ともいえない感情に浸っていた。


「なんか昨日並川君が学校来なかったから神重君に聞いたの。そしたら家で倒れちゃったって聞いて……そうしたら神重君が並川君の家に行くって言ってたから私もついてきたの」


ナイス大智!と思いながら僕は心の中でガッツポーズをとった。

思えば千草さんのこと思い始めたのも丁度1年前からだった……


―――――――――


1年前……

その日は清々しい朝だった。

妹は中学校の入学式の準備で朝早くから家を飛び出ていった。

妹から解放されてようやくつかんだ幸せ……

それをかみ締めながらいつもより早い時間帯に家を出た。

新しい学校に新しい世界……

普段の何十倍……いや、何百倍もの新鮮感に心が躍っていた。

そんな時だった。

道の真ん中で右往左往しながら辺りを見渡している女の子がいた。

それも僕が今日から通う学校の制服で……

時間が早いものだからまだ人気ひとけが少なく、この道にはその女の子を除いて僕1人だけだった。

こんな事をしては人がいいように思われるかも知れないが、僕は見過ごす訳にはいかない性質たちのでその子に声をかけてみた。


「どうかしましたか……?」


それまで誰もいなかったせいか、その子は一瞬ビクッとしてからこちらを向いた。

セミロングの髪を風になびかせながら振り向いたので、僕は一瞬心を奪われた。


「はぃ、実は昨日こちらに越してきたばかりで道に迷ってしまいまして……」


あやふやな説明で良く分からなかったが、言いたい事だけは何となく分かったような気がした。


「要するに……学校に行きたい……と?」


「……はい!」


良く見て見ると少し幼い感じの顔立ちで、丸く大きな目につぶらな瞳……

ルックスを見れば大抵の男子は1秒もかからずにとりこになるだろう。

僕もその中の1人だった。


「うちの学校の子だよね?一緒に行かない……?」


はたから見ればナンパのように思われるだろう……

だが、僕はそんないやらしい思いで誘っている訳ではない事はわかって欲しいところだったが……


「あのォ〜、これって……ナンパですか?」


やはり誤解されてしまったらしい。


「いや……それは違くて……」


ぼくは懸命に誤解を解こうとしていると突然その子は笑い出した。


「冗談です。分かりますから……貴方がそんなことしないって。見れば分かりますから」


その子の言葉で僕は力が抜けたように苦笑いをした。


「では、行きましょうか?」


その子は不意に僕の手を握って歩き出した。

このときからだった。


僕はその子に引かれていったのは……

周りからどんな目で見られていただろうか……

少し殺気立ったものも感じられたが、今こうして可愛い女の子と手をつないで歩いていることが何よりの幸せだった。

幸福な時間というものは短く感じられる物だった。

僕たちはすぐに学校に着いた。


「ありがとうございました。それでは、また……」


そう言ってその子は去っていった。

後で後悔した事は、その時に名前を聞いていなかったことだった……

その後僕は1人で新しい教室へと足を進めた。

(ガラガラ……)

教室のドアを開けると重たい視線が僕に集中した。

それもそのはずだ。

入学式当日の朝から女の子と手をつないで登校すれば誰にだって恨まれるだろう。

それもとびっきりの可愛い子とだから……

僕は指定された席に着くとすぐに先生が入ってきた。


「はい、静かに!席に着いた」


それまで騒がしかった教室は一変いっぺんして静まり返った。


「今日から私がお前達の担任をする事になった葛城源三郎だ。よろしく」


名前古ッ!!

教室にいる皆が同じ反応を取った。

外見はまだ30歳位だろうが、妙に名前が古すぎていまいち顔と名前が一致しなかった。


「まぁ〜、親がこんな名前付けちまったから仕方ないけど……呼ぶときは『源ちゃん』って呼んでくれ!」


前々から名前の事は気にしていたのだろう……葛城先生はそう呼ぶように頼んだ。

というよりも半強制的と言っても過言ではないだろう。

そんなこんなで時間が過ぎて行く中、葛城先生……いや、源ちゃんは突然思い出したかのように話を切り出した。


「そうそう、お前達の式の前に転入生を紹介しないとな!ちょっと待ってろ!」


そう言うと源ちゃんは教室のドアを思いっきり開けると職員室へと駆け出していった。


「てか、普通ドアの後ろとかで待たせるだろう……」


僕は少々愚痴をこぼしながら辺りを見渡した。

この教室の中では……いや、この学校の中では知っている人物は1人たりともいなかった。

僕の通う県立姿熊高校は県屈指の公立の進学校であったため、僕の中学校からは過去30年間の内に僕を入れて2人しか進学できていなかった。

それだけこの高校が凄いことだった。

僕の中学校がよほどのバカではないことを除いては……

何故この高校を選んだかは……

この話をすると気分が悪くなるので止めておこう。


「待たせたな!じゃぁ、入ってきてくれ」


源ちゃんは帰ってきて早々早口で言った。

するとドアの後ろから少し小さめの女の子が入ってきた。


「あッ……君は……」


僕は驚き立ち上がった。


「あら、貴方は今朝の……」


何故だかラブコメのような雰囲気になり、教室中の視線が僕に集まった。

が……


「……いつまで立ってるつもりだ?そんなに立ちたいなら廊下に立たせてやろうか?」


源ちゃんに言われて初めて僕は1人立っていたことに気がつき、顔を赤らめて席に着いた。


「じゃぁ、よろしく」


源ちゃんは真新しいチョークを転校生に渡した。


「はい。―――私の名前は千草美鈴です。―――なので、よろしく御願いします」


自己紹介が終わると喝采かっさいと拍手の渦が巻き起こった。


「じゃぁ、席は……並川の隣が開いているからそこでいいな」


源ちゃんはそう伝えると千草を席に着かせた。

教室中の男子の殺気を感じたような気がしたけど、気にしないようにした。

千草は席に着くとすぐに僕の方を向いた。


「よろしくお願いします、並川君」

可愛らしい笑みを浮かべると僕はまたその純粋な瞳に飲み込まれていった。


「あぁ……こちらこそよろしく。ところで……」


今朝の話をしようとしたところで話が遮られた。


「じゃぁ、そろそろ時間だから廊下に並んでくれ!」


それを聞くと千草は席を立ってしまった。

その後僕も仕方なく席を後にした。

それが彼女との出会いだった。


―――――――――


あれから1年……

未だ何も進歩が無い自分に怒り苦しんでいた。

しかし、今日は違う。

千草がうちにいるのだから。

そして今日こそ……

そう胸に誓った。


「あッ……ありがとう。わざわざお見舞いなんかに来てもらっちゃって」


落ち着け……落ち着くんだ、自分!

そう言い聞かせながら次の言葉を考えた。


「うぅん、いいの。クラスメートとして当然のことだもん」


あぁ……そうですか……クラスメートとして……か……

僕はその一言で我を失いかけた。


「あっ、そうだった。並川君のためにさっき下でおかゆ作ったんだ。食べてくれる?」


「も、もちろんだよ!」


僕はすぐさまそう答えると千草が作ったお粥の入った土鍋が目の前に出された。

土鍋を開けると中からおいしそうな……おいしそうなお粥が……

無かった。

土鍋の中にはまるで火山のマグマのように燃え立つ真っ赤な液体があった。


「どうしたの、並川君……?」


心配した千草は僕に声をかけてくれるが、それはいくらなんでも……


「お……おいしそうだね……い、いただきます」


死を覚悟して僕はその真紅の液体を口にした。


「どう……?美味しい……?」


そんな言葉が途切れ途切れに聞こえてきた。

遠のく意識の中、最後に見た物は部屋の外で密かに笑っている妹の姿だった。

瑞葉よ……やはりおまえだったのか……

その言葉は発せられぬまま僕は再び深い眠りについた。

〜キャラクター紹介 2〜

・並川瑞葉

「両親の不在の元、一つ屋根の下で兄と共同生活をしている兄一筋の妹」

生年月日:1992年 8月10日

血液型:B型

身長:152cm

体重:?kg

趣味:兄、東馬の観察。

特技:殺傷力強大な手料理を作ること。

特徴:髪は肩より少し長めの栗色のセミロング。(中学時代の部活により脱色したもの)

   兄と同じく目は二重。(親の遺伝だと思われる)

   幼げな顔立ちで見る物の心を魅了する。

好きなタイプの男性:一途な兄思い

得意科目:一般教科なら大抵得意。

苦手科目:家庭科(主に料理はダメ。裁縫の方も……)


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