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第17話 生徒会とアルバイト

「私、生徒会に入る事にしたから♪」


一昨日の朝食時に突然瑞葉が言い出した。

もちろん僕は反対したが、登校時間が来てしまいそのまま話は途切れてしまった。

それから何とか瑞葉を説得して見るものの、効果なし。

そんなこんなで遂に7月10日の立候補日が来てしまった。


「はぁ〜、どうしたらいいんだよ……」


時刻は既に12時を回っていた。

制限時間タイムリミットまであと4時間を切っていた。

この3日間はあらゆる作戦を考えてきたが、どれもこれも無駄に散っていった。

とりあえず始めは瑞葉を説得しようとしたが失敗。

次に他に立候補者を出そうとするが、瑞葉の人気を考えるとあっさりと砕け散りそうなので廃止。

奥の手と思い成瀬や若嶋に頼むも拒否されてしまった。

全ての策を使い切った僕は今こうして大智に相談をしているのであったが……


「別にいいんじゃん?瑞葉ちゃんがやりたいって言ってんだったら。

俺には東馬が阻止しようとする行動が分かりかねるが……」


確かに周りから見ればそう思われても当然のことだった。

しかし、この行動は僕にとっては今後の学校生活に関わることであった。


「いいか、大智。

もし瑞葉が生徒会に入ったとしよう。

そうしたらどうだ?学校での権力的には僕等一般生徒なんかよりは断然高くなるだろう?

そんなことになったらその権力で僕に何をされるか分かった物じゃない。

例えば、いきなり僕に不利な行事が入ったり……」


そこまで言って本当に起こりそうな予感がして体に悪寒が走った。


「確かにお前にとっては最悪だな……

だが、本当にそんなこと起こると思うのか?

まぁ冗談でなら言いそうだが……

結局のところそんなに瑞葉ちゃんが生徒会に入るのが嫌なら、お前も一緒にやればいいじゃん」


そッ、そうか!そういうことだったのか……

大智の助言にすっかり耳を傾けてしまっていた僕には不可解な笑みを浮かべる大智に気付くはずもなかった。


そして放課後……


「というわけで私、並川東馬は生徒会副会長に立候補します」


突然の宣言に戸惑いを生徒会室の面々は隠せないで居た。

そして同じく立候補を告げに来ていた瑞葉も同様だった。


「な、なんでお兄ちゃんがここにいるの!?」


「それはだなぁ〜、お前の悪巧みが遂行されないように……じゃなくてこの学校をよりよくするためにこの身を捧げたいと思ったからだ!」


あからさまに不自然な発言だったので、周りは疑念の目で僕を見ていた。

それでも瑞葉さえ騙せれば良いと思っていたのだが、瑞葉も僕の言葉に疑いを持っていた。


「悪巧み……?なるほど……そういう手があったか……」


し、しまった!無駄な悪知恵をつけてしまった。

どうやらこの行動は失敗だったようだ……

そう思って潔く帰ろうとしたところを生徒会の顧問に捕まった。


「知ってるとは思うけど、立候補は取り消せないからな」


「えっ……マジっすか……」


こうして僕は諸事情により生徒会に立候補することになってしまった。

その日の帰り道……


「はぁ〜、どうしたらいいんだよ……」


僕は学校が終わるとそのままバイト先に向かっていた。


「まぁ、仕方ないじゃないですか?先輩、ここは男らしく受け入れるしか……」


隣にいるのは同じクラブの若嶋である。

大智に紹介してもらったバイト先で偶然にも若嶋に会った僕はその後、同じシフトの時はこうして一緒に行っている。

そして僕にとっては大切な相談相手にもなっていた。


「それはそうなんだけどな……

なんで今年に限って定員ギリギリなんだよ!

例年なら生徒会って言ったら内心あげるとかなんかで激戦なのに……

失敗したら手を抜いて落選しようかという企みが……」


そう考えた上での実に計画的な行動だったのに、こうも運がないと涙すら出てきそうだった。


「というか並川先輩は瑞葉ちゃんのどこが嫌なんですか?

可愛いし、優秀だし、運動も出来るし……非の打ち所がありませんよ」


いやいや、それ以前に兄妹だし……

妹を好きになるとか現実じゃありえないし……

なんて思いながらも、なんかからかわれてる感じがしたのでそのまま聞かなかった事にする。


「そうはそうと、今日バイト終わったら時間ある?」


その言葉を聞き若嶋は疑いの目を僕に向けた。


「な、なんですか!?瑞葉ちゃんだけじゃ物足らずに今度は私ですか?」


「んなわけないだろ!ちょっと買い物に付き合って欲しいだけだよ。

ってか若嶋ってこんな性格キャラだったっけ……?」


少し若嶋の事が分からなくなった僕に若嶋はさらなる追い討ちをかけてきた。


「そうですか……。

まぁ、並川先輩に告られても断りますけどね〜。

だって私にはお兄さんがいますから……」


なんか今聞き捨てならない言葉を耳にしたような……

いやいや、ここで突っ込んだら負けだ!堪えるんだ、僕。

若嶋の揺さぶりにますます若嶋がどんな人なのか理解出来なくなっていった。


「で、結局のところどうなんだ……?」


「あっ、それならOKですよ〜♪」


新たな問題を抱えながらも僕等はバイト先に着いた。

僕等が働いているのは商店街にある喫茶店だった。

人気が少なく、最近ではあまり客が来なくなっていたが僕が働き始めた翌日から若干なブームが沸き起こっていた。

店の定員は4人で、僕等を含め店長ともう1人のバイトがいる。

1週間を3人で代わる代わるやっているが、6月に入ってからはほぼ毎日出勤していた。

因みに大智の言っていた可愛い女の子とはもう1人のバイトの子であるが、最近は風邪で休んでいるみたいで若嶋も毎日借り出されていたりする。


「はぁ〜、なんかバイト疲れちゃうよなぁ〜……

てかまた最近クラブに顔出してないから柊になんて言われるやら」


とは言うものの、毎週水曜日と日曜日は店が休みなので定期的には休みを貰っていた。

ってかこんなに休業して儲かっているのか?

と思うくらいだが、実際のところここ1ヶ月は前の月の3倍以上の黒字でもあったりする。


「いいじゃないですかぁ〜、部長も認めてくれたんだし。

並川先輩は厨房で料理人としての心得を学び、私は接客を学べって言ってたし……」


そう、今こうしてクラブに出ずバイトに出られるのは柊がこれを認めたからである。

『料理人としての腕を磨き、私達に出しなさい!』

口では言わないので本当のところはどうなのかは分かっていないが、こんな思惑だろうと僕は勝手に解釈していた。


「あっ、そうだ。この前考えた新作のケーキ食べる?」


「いいですね〜、いただきます♪」


こんな他愛も無い時間を過ごせるのは開店前までだった。

もちろん午前中も店長が1人で経営しているが、僕等が来る時間の前に1度閉まったりする不思議な店だった。


「あっ、こんにちは。店長」


着替え終わった僕等はカウンターに座っていた店長に挨拶をする。

店長は普段の事は何をやっても口を挟まない人だが、挨拶だけはしっかりやらせるといういかにも大人な人だった。

実際今年で45歳になるらしいが、独身でこの店を切り盛りしていた。


「ふむ、今日もよろしく頼むぞ」


「「はぁ〜い」」


こうして僕等のバイトは始まる。

下準備を始めてから30分後には再開店し、ゾロゾロと人が入ってきた。


「3番テーブル、コーヒー1つとフルーツパフェ1つ」


フロアで接客している若嶋の声が厨房に聞こえてきた。

僕は慣れた手つきでパフェを作っていく。

そしてカウンター越しに店長が常連さんと話しながらコーヒーを入れていた。

『世界最高のコーヒーメーカー』

と称されている店長の腕は素人である僕が飲んでも違いが分かるほどだった。

そして今では……

『光速の料理人』

なんて呼び名が僕に付いていた。


「1番テーブルにオムライス3つ、2番テーブルにカレーライス1つとナポリタン1つ」


若嶋の声が聞こえると同時にパフェが完成し、カウンターに持っていく。

およそ3分で仕上がり、次の注文に取り掛かる。

喫茶店のテーブル席は3つしかなく、学校帰りの生徒が座るとすぐに満席になってしまう。

そしてカウンター席は5つあるが、ほとんどが常連さんに取られているのが現状だった。

数が少ない分僕は自分の仕事に集中出来るわけである。


「はい、まずはカレーライスとナポリタン。

オムライスは少し待ってて」


注文を受けてから7分で完成する。

カレーライスは元から煮込んであったが、ナポリタンはその場で作ってしまう。

そして5分後……


「オムライス3つ完成」


少し技術スキルが上がったのではないかと自分でも思っていた。

そして暇になった時間は新作の料理を作ってたりしていた。

こんな喫茶店が人気なのは料理が速いのと、とにかく安いということだ。

カレーライスなんかは190円と200円を切る破格だし、デザートは全品150円と学生には嬉しい値段だった。

ってかこんな値段でどうして破綻しないのかが不思議だったので店長に聞いたところ……


「詳しい事は内部秘密だから……」


とはぐらかされてしまった。

まぁ、こっちとしてはバイト代さえ貰えれば気にしないところだが……

そんなこんなで4時半に再開店した喫茶店も7時半には少し早いが閉店してしまう。


「お疲れ様です」


そう店長に挨拶すると僕と若嶋は店を出た。


「で、これからどこに行くんですか?」


「あぁ、ちょっと1人じゃ入りずらい店でなぁ……」


商店街を歩く事10分、僕は目的の店についた。


「ここって、まさか……」


若嶋は驚きの表情を隠せずにいた。

そう、ここは……

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