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第15話 終焉の使者

「……で、これからどうするのかなかな?」


とりあえず街から出たはいいものの、この先の事は何一つ考えてなかった。


「そうだなぁ〜……

まぁ、とりあえず魔王倒しに行っちゃう?」


そんなのりで旅を続ける事5時間……


「なぁ〜、フローレラ。一つだけ聞いていいか?」


「な〜に〜?」


「ここは……どこなんだぁ〜!?」


地図も持たず、己の直感を信じて歩き続けた結果、当然のことながら迷子になった。


「しらな〜い。誰かに聞いてみたら〜?」


フローレラはのんきな事を言っているが、実は2時間ほど前から徐々に草が茂り始めたと思っていたらいつの間にか森の中にいたのであった。

つまりは、聞きたくても森の中なので人一人見当たらないというわけである。


「誰かって……誰もいないじゃないか〜。

こんな時に便利は魔法があればなぁ〜……

って、あれ?何か忘れてるような……」


魔法……

そういえば、この世界に来てから魔法を見た事は一度も無かった。


「なぁ〜フローレラ。この世界には魔法ってあるのか?」


疑問に思ったらすぐに行動。

小学生の時によく先生が口にしていた言葉だった。


「魔法……?ある事はあるけど……」


「けど……?」


なんだか暗い雰囲気になってしまった。

まずい……変な事を聞いてしまったか……?

僕は俯いたフローレラの顔をそっと覗き込んだ。

すると……


「使い方忘れちゃった♪」


この時初めて僕はこの子に怒りという物を感じた。


「忘れたって……それはないだろ〜。

なにか一つくらい覚えてないのか?

ほら、街に瞬間移動できる魔法とか……」


流石にこれは贅沢か。

そう思っていたが……


「あっ、それなら知ってる〜」


「なぜ早く使ってくれなかった。

そうすればこんな目には……」


少々愚痴を溢しながらも、フローレラに魔法を使ってもらう事にした。


「じゃぁ、行き先は南の街にしよ♪」


そう言うとフローレラは呪文らしき物を唱え始めた。

そして次の瞬間、僕は体が浮上する感覚に陥りながら僕等は時空を移動した。


―――――――――


「痛ってて……ここは?」


目を開けるとそこは薄暗い道の上に僕等はいた。


「あちゃぁ〜。失敗しちゃったみたい〜。

ごめ〜んね♪」


うう……若干フローレラの可愛さに許す気が起きてしまった。


「って、許されるわけ無いだろ〜!

まぁ、頼んだのは僕だったから失敗しても仕方なかったけど……

それよりフローレラ、ここはどこなんだ?」


一刻も早くこの薄気味の悪い場所から出たかった。


「えぇ〜と、ここはね〜確かね〜」


「確か……?」


「魔王城だったようなぁ〜」


・・・・・・

なんだか一気に気温が下がったような気が……


「……なんだって?」


「だから、魔王城だったようなぁ〜」


やってしまった。

楽をしたさに早まった真似をした僕は後悔していた。

いくらなんでも街を出てからまだ1体も魔物を倒してない僕が魔王なんか倒せるわけが無い。

まぁ、ゲームの話で言うとLv1の勇者が始めの街を出た草むらでLv80の魔王が野生で現れたくらいの状況が今だったりする。


「ちょっと僕用事が……」


そう言ってこの場を去ろうとした僕をフローレラは後ろからしっかりと捕まえていた。


「そうよね〜。今こそその用事を……魔王を倒す宿命を果たす時だよだよ!」


なんか知らないけど、フローレラは1人で勝手に盛り上がっていらっしゃた。

それによく考えて見れば、まだ

パーティーは2人しかいなかった。

それもLv1級の……


「そうだね……一瞬でけりが付くと思うよ……僕の死で」


「まぁまぁ、楽しくはりきっていこぉ〜♪」


そう言いながらグイグイとフローレラは僕の背中を押してきた。

その行為が実はこの人が魔王なんじゃないかと思うくらい僕は恐ろしく感じていた。


「悪魔だ……」


仕方なく背中を押え続けられること30分、僕等はどうやら広い場所に出てきたらしい。

そこはこの建物の中でもまだ明るい方で、日の光が差していた。

そしてその奥に奴はいた。


「待っていたぞ。勇者『東馬』よ……」


「でっ、出たな!魔王」


僕は咄嗟に街の武器屋のおじさんから貰った武器に手をかけた。


「このピコピコハンマーが相手だ!

……ってなんだこれ〜?あのくそ親父め……」


ようやく戦おうと気合を出したのに、空回りさせられた。

今度会ったら覚えておけよ……

密かに復讐心を心に宿しながらも、頑張ってその場を取り繕うことにした。


「ははは……貴様があまりにも弱そうだから出す物を間違えてしまった。

次こそかならず……

くらえ!これが本当の勇者の剣だ!

行くぞ、うまい棒!」


「ぷぷぷ……」


くそッ……

よりによってフローレラに笑われてしまった。

というか、これを仕組んだのはフローレラしか思い当たらなかった。

しかもよりによってうまい棒とは……何たる屈辱。

それよりも、先ほどから魔王は無反応だった。


「ふっ、おやつは500円まで。

これ遠足の鉄則なり!

というわけで、行くぞ魔王。

仏の顔は3度まで、お前の顔は見えないがもう見飽きた!

いでよ聖剣、『綺麗におち〜る』!

ってこれ石鹸だし!言葉似てるけど聖剣じゃないから。もういいからね、フローレラ」


「ごめんごめん。

だけど東馬って意外と才能あるかも♪」


そういうわけで、もう一度仕切り直すことにした。


「でっ、出たな!魔王」


僕は腰にある剣に手をかけた。


「さぁ、掛かってくるがいい!」


ようやく通常の反応を示した魔王によって1人で勝手に感動していた。

だが、今は敵同士……情けは無用。


「くらえ、たった今思いついた究極最終奥義!」


自分にできることをする。

中学生の時、よく先生がそんなことを言っていたのを思い出した。

やるよ先生……僕、精一杯やるから!


「『神々(ゴッド・オブ・)の旋律ザ・スコア』!」


やったよ先生……自分で出来うる力を使い果たしたよ。

僕は叫ぶと同時に目にも留まらぬ速さで剣を抜く。

カチッ……

その剣が鞘に収まる音が鳴ると同時に魔王はその場に倒れる。

そんな風景ヴュジョンが頭の中で浮かんでいた。


「おお〜!カッコいいじゃないか。これなら僕も伝説に……

はッ、何をしていたんだ僕は……」


幻想は幻想でしかなかった。


「その程度の攻撃で我を倒せるとでも」


「いや、まだ一撃も入れてね〜し」


聞きなれない声が僕等の後ろから聞こえてきた。


「この声は、まさか……」


そこに現れたのは知らない人間だった。

いや、知ってはいたものの誰だか分からないだけか……?


「た、谷口!?」


「だから山田だって!何度言わせれば気が済むんだよ」


当たった……

適当に言ったらどうやら当たりだったらしく、谷口は僕に近づいて来た。

ここはうまく話を合わせた方が得策だと考えた僕は咄嗟に行動を取った。


「やれやれ、危うく先に倒してしまう所だったぞ!」


「えっ、まだ一撃も与えてなかったのに……?」


うぅ、なかなか痛いところを付いてくるじゃないか……

だがこんなところで負ける僕ではない!


「まぁいい、手をかせ!谷口」


僕は走りながら魔王に剣を向けた。

しかし、それはあまりにも馬鹿げた行為だったと後から気づいたが既に遅かった。


「こしゃくな……死ぬがいい勇者よ!

究極暗黒剣ダーク・デス・ソード』」


そう言いながら放った魔王の一撃が僕に迫ってきた。

光の速度で飛んできていたが、僕にはそれがコマ切れ映画のようにしか見えなかった。

徐々に近づく斬撃に僕はこのまま死ぬのだと思ったそのときだった。


バキンッ……!


いきなり目の前にそれが現れると刀で魔王の斬撃を防いだ。


「間に合ったようだな……

無事か、東馬!」


「だ、大智か……?助かった〜」


魔王の斬撃と僕の間に立ったのは大智であった。


「貴様、よくも俺の親友を……許さん!」


「だ、大智じゃ無理だよ!勇者の僕でさえ倒せないんだから……」


「俺を誰だと思ってるんだ?この神重大智が知らぬゲームの攻略法など1つもないさぁ〜!」


大智はそう言いながら魔王に突っ込んでいった。

そして……


「ばっ、馬鹿な……我が負けるなどありはしない!

この因縁、忘れはせぬぞ……」


そう言いながら魔王は大智の手によって倒された。

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