シン宅配システム3
ネット通販拡大は物流業界を崩壊させつつあった。
宅配ドライバーは配達時間に追われ、
さらに再配達の時間指定に苦しめられた。
会社も離職者の多さにようやくに気をとめ、重い腰をあげた。
だが、その時はもう手遅れだった。
さらなる荷物の増大とドライバーの不足で業界の混迷は深まるばかりだった。
しかし、手をこまねいている会社ばかりではない。
打つ手は打った。
宅配ボックスだ。
主要な駅など設置されていくという。
だが、荷物の量に追いつかない。
設置される駅も限られていた。
それも当然だった。
場所を確保するにも、
宅配ボックスを設置するにも、莫大な費用がかるのだ。
混とんとした物流業界、果たして未来はあるのだろうか。
「バカな奴らだ。
俺なら簡単に解決できるのに」
天才科学者は呟いた。
「一年もあれば試作機ができるな~」
男は天を仰いだ。
開いた口から、笑みがこぼれる。
よだれも。
もう、既に成功した後のことを考えていた。
特許料で大儲けして、それから・・・
数年後、世の中はがらりと変わった。
宅配業界に革命が起こった。
それ故にドライバーがあまし出したのだった。
まず、始めは銀行カードなどの書留類だった。
コンビニで発行できるようになった。
本人確認の後、スマホによるパスワード入力で、
カードに情報を書き込み、発行するシステムだ。
これはコンサートチケット販売に利用された。
専用カードを利用するため、ネットで転売できなくなったのだ。
配達員が荷物を山積み氏にした台車を押し、走って行く。
改札に向かう人に逆らって。
電車の乗車客も、自然と道を開ける。
いつも利用し、感謝しているからだ。
配達員はコインロッカーの隣の一角に進む。
ここが配達先だ。
ふ~、と覚悟を固めるように一息をついた。
それから、次々と荷物を五段になった棚に荷物を積んでいった。
荷台の上にある小さい物を棚の上の段に置き、
最後に、これから海外旅行に行くかのような大きなトランクを下の段に置いた。
「あ~、終わった」
配達員は額の汗を拭う。
右手がズボンのポケットを探る。
財布から120円と出した。
それで、一気にコーラをあおった。
『イツモ アリガトゴザイマス』
配達員は微笑んだ。
運転中は一人で、出発して初めて聞く、言葉だった。
この宅配ボックス設置後、客と接することがほとんどなくなっていた。
男は飲み干した缶をゴミ箱に入れ、空の台車を押して行った。
そう、天才科学者が発明したのは、単なる棚の宅配ボックスだった。
だから設置が容易で、場所さえあれば良かった。
当初はバカな奴らがいた。
天才科学者はそれも想定済みで、動画を撮った。
それをニュースに売り込み、このシステムをPRしたのだった。
「なんだこれ?」
いかつい男がツレの男に言った。
人目が少ない駅の隅に棚が並べられ、
荷物が置かれている。
それも高価そうな。
新品のパソコンや家電品などなど。
二人の男は棚を物色し、高そうなものを選び、
両手に持った。
そして、その場を離れようとした。
『イツモ アリガトゴザイマス』
いかつい男は振り返った。
「自販機か」
二人はそのまま通り過ぎようとした。
『身分証ヲゴ提示クダサイ』
二人は足を止め、もう一度、自販機を見つめる。
それから、一歩、足を踏み出そうとする。
『止マリナサイ』
男らは走ろうとする。
ガシャン、ガシャン、ガシャン・・・
自販機が大きな音を立てた。
ウィーンと大きなモーター音が響く。
『止マレ』
自販機ロボットは男らの前に立ちはだかった。
男らはへなへなと座り込んだ。
この映像は世界に広がると、話題になった。
それで一気に世界に広まったのだった。
商品名は勇ましいのと、会社から文字って
『日本武尊』
1台300万円。
天才科学者は宅配ボックスを管理するロボットを開発したのだった。
「この日本武尊がいれば、どこでも宅配ボックスになります。
代引き荷物も対応可。
普段は自販機ですから」
とのキャッチコピーを添えて。




