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夜の帳が空を覆い漆黒の闇が世界を塗りつぶす。

夜は良いこの闇が目に映る醜いすべてを覆い隠してくれる。

しかしこの人間の作る街というやつは夜のカーテンを塗りつぶすように赤々と明かりをともす。

人間の目の弱さをさらけ出すように足元を照らすために等間隔に並ぶ街灯も、まるで獲物にたかるアリのようにざわざわと駆け回る車のライト、極彩色にてらてらとあたりを嘗め回す看板のネオンもすべてが下品で目が眩む。

目の前を行き過ぎる人間の欲望がジェットコースターのようにオレの目にだれこんでくる。普段はそれも鼻で笑ってやり過ごすが、時はこの町のすべてがうっとうしく感じられる。

「どうしたの食べないの?」

はっとして顔を上げると彼女がオレに不思議そうな顔を向けてくる。

オレが顔を上げるとふわりと柔らかい笑顔を浮かべてこちらを見つめるヴィーナスがそこにいた。

俺にまとわりつく苛立ちや生臭い雰囲気がふっと掻き消えた。

しまったな、オレは苦笑いをした。

俺としたことが自分の世界に浸りすぎたようだ、オレは彼女が用意してくれたグラスに口をつけた。

ほどよく温められた乳白色のそれはオレの喉を潤す。

芳醇な味わいが体中に染み渡る。

眠る前、オレとオレのヴィーナスとのこの時間は代えがたい癒しだ。

「おいしい?今日は帰ってくるのが遅かったから心配したよ。」

すまないなヴィーナス、オスには町でさまよう時間が必要なんだ。

「道に迷っちゃったのかな?」

「んにゃー。」

オレは肯定の声を上げる。

全く人間の町というやつはどうしてこうも入り組んでいるのか気軽に散歩もできないとはな。

「煮干しも食べる?今用意するからね。」

感謝の念を表すためにオレは彼女の足元に頭を擦り付ける。

彼女の用意する煮干しは絶品だ。

「甘えん坊ねロクは。」

ヴィーナスがオレの頭を優しくなでる。

「なーご。」

この家の世話になって半年になる。

オレの名はロックこの町をかける一匹狼だ。


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