どっかーん異世界トリップ
今にも綿のような雪を振らせそうな今日の雲とおなじ色の建物、2-3とプレートの掛かった部屋で結由は唸りをあげている。
「うー、うーーん・・・」
右手でシャーペンを持ち背筋を真っ直ぐ伸ばした姿勢はまるで勉学に真面目に取組む優等生のようだが、今ここでやっているのは予習でも復習でもなく補習だ。何を隠そう結由は高校生活も早2年程たち1番楽しい夏休みを返上してやっと再試験(何回目か解らない)をなんとか、なんとか合格する程度の学力なのだ。
「あー!もう、わかんないよぉ!」
どんよりした天気の中、理解不能な数の羅列に溺れて息絶え絶えになりつつ持っていたシャーペンを勢いよく机に叩きつけた、が、反動でシャーペンは転がり落ちる。そんな些細な事でさえ苛立ちは湧き上がるものだ。
結由は小さなため息を吐き、床におちたシャーペンに手を伸ばす。
おっ、うっなどと意味の無い掛け声を出ら屈むのだがあともう少しの位置で届く距離初めから立って拾えば済むものなのに椅子に座ったまま拾おうとするのは性格であろう。あと少し、とさらに体を深く屈める。
「っとととととどいた!」
と思ったつかの間結由はバランスを崩し横に倒れ込む。
咄嗟に床や椅子の足にぶつかる痛みを想像して目をきつく瞑る。
「あれれ、全然痛くない?突然受け身の才能が開花したのかも!」
なかなか訪れない痛みに謎のポジティブ思考をしつつも目を開け起き上がる。そして、寝る・・・今日は凄い夢見てる・・・
『なんでこんな所に女の子がいるんだい!』
『わかんねぇよ!取り敢えず保護しろ保護ォォォォ』
『そこの起きろ!ここは危険だ』
寝ようと思っても硬い地面に体の奥につたわる地響き伝わる感覚で何となく夢ではない気がしてる。きっと、寝てるあいだに近所で工事が始まってそんな気がするだけと言い聞かせ平常心をめざす。
『おい、死にたいのか!!』
聞いたことない言語、持ち上げられる体、認めるしかない夢じゃないと。
「ひぃぃなになにこわい、怖いよぉ、おかぁさんおかぁさんたすけてぇ」
『うわっ五月蝿い!ちょっやめ、いっ』
処理落ちした脳では現状把握も意思疎通もできないただ涙と鼻水を垂らしながら泣きわめくことしかできない。
そんな最悪な人間を抱えているのは細くなめらかな金糸まるで朗らかな青空を閉じ込めたみたいな少し吊り気味の瞳、スラリとした手足は長く中世的な雰囲気を醸し出している。
『煩い、黙れ。次叫んだら落すなからな』
形の良い潤んだ唇からでてくる単語が汚いことだけは玉に瑕だ。まぁ、結由は解ってないのでキラキラ系王子にしか見えていない。
「イケメンの真顔ありがとうございますぅ!!??」
『あぁ?叫ぶなっていったよな!』
有言実行の王子さまに手刀をかまされて落とされる。
『ちょちょちょっと、王子なにやってるのさ!』
『煩いから少し寝かせただけだ』
『神官は少し落ち着けって!王子は取り敢えずその子連れて安全な所に連れてこうぜ』
『そうだな』
『わかったよ!取り敢えず教会に行こう安全を保証できるし』
『そうだな』
『てか、その子はどっから現れたんだ』
『私には空から降ってきたように見えたけど』
『そうだな』
『おいおい王子そうだなしかいってねえよ』
『そうだな』
『もう!王子ちゃんと話して』
『そうだな』
『ん?王子顔赤くないか?』
『そんなことない!』
『んふふ案外王子も初なんだな』
『煩いぞくるくる!!』
『なっ!天パを馬鹿にするなよ!』
『二人とも喧嘩しないでここはまだ危ないし!』
────────────────────────
「はっ!」
どうしよう完全寝てたよ!補習プリントまだおわって居ないのにやばい今何時だ、ふぇまだ夢から覚めてないみたい。
白とピンクで統一された少女漫画もびっくりなお部屋のそれまたお姫さまののような天蓋がかけられたベットの上に結由はいた。
「夢でもお布団ふかふかだぁいすき」
んふふと花でもとんでそうな笑顔で広いベットで転がることに夢中になり、気づかなかったが部屋に1人の男性が入ってきた。
「もう起きていたんだね、体は大丈夫かな?」
そして結由は思った 夢 最 高と、
やばいやばいやばい!!何この人、私の理想をおにぎりにしたみたい。すっごくかっいい
甘くて美味しそうなココア色の髪は、ついもふもふしたくなるようなふわふわ感。ながい睫毛におおわれたぱっちりとした二重の瞳はキラキラと輝くペリトッドのようなオリーブグリーン。肌は健康的で、鍛えてるいるのかがっしりとした筋肉。身長も高く180は越えていそうだ。一見怖そうな見た目だが優しい話し声と笑顔。
もう、完璧です。でも一つだけ疑問なところは
「なんで、言葉わからないんだろう、」