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思い出 6th.
「俺も、だよ。」
小さい、小さい声が聞こえた。
びっくりして顔を上げると、真っ赤な顔を逸らして陽君が言ったんだとわかった。
「…う、うそ、だあ。」
本音がこぼれた。
ただ、楽しい友達としてしか見られてないと思っていた。
これでフラれて、少し距離を置いて、また友達に戻ろう、と思っていた。
これは本当に現実だろうか?
都合のいい夢を見ている気分だった。
「ばっ…!
こ、こんなこと…冗談で言えるかよ。」
陽君は顔を上げて、こっちを見ながら言ってくれた。
彼の顔はまだ赤くて、でも、しっかりあたしを見てくれた。
「これから、も…よろしく。」
そう言って、手を差し出された。
応えるように、あたしも手を出す。
「う、うん…よろしく。」
ぎこちない、初めての握手。
手を繋ぐ、なんて甘くはないけど、それでも、隣にいることを許された気がして嬉しかった。
彼の手はゴツゴツしていて、あったかくて、嬉しくなった。
この日から、友達ではなく、彼氏と彼女になった。