表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの思い出  作者: oboro
プロローグ ー結城 夏美
6/12

思い出 5th.

あれから、雨の日は空き教室に行くのが2人の定番となった。

英語の先生がどうだとか、歴史があまりおもしろくない、とか…

くだらない話をよくしていた。


慣れてくると、授業の間の短い休み時間も空き教室へ行くようになった。

雨の日だけじゃなく、普通の日も話せることがとても嬉しかった。


週末になると、お互い幼なじみの家で3人で遊んでいた。

そのうち、呼び方も斉藤君から陽君と呼ぶようになり、向こうも夏美、と呼ぶようになった。


名前を呼ばれると心が温かくなり、話していると自然に笑顔になれた。

ドキドキする感じはおさまる事を知らず、会うたびにずっとドキドキする。

幸せ、とはこんな感じだろうか。

舞い上がりそうになる自分を抑え、隣にいれる喜びに浸っていた。


こんな毎日が続けばいい…


本気でそう思っていたがそんな風に思うのは一瞬で、気づけばもっと一緒にいれたら、と知らない間に思うようになっていた。


話す時にいつも空いている一人分の空白。

空き教室にいる時も、少し離れて座るのが当たり前だった。

3人で遊んでいた時も、あたしは隣にならばず少し後ろをついていった。

近くにいるのに、なぜか少しさみしかった。

触れたい、と思うのはおかしいだろう。

友達、なのに。


…本当に、友達のままなのだろうか。

友達のままは気分がいい。

だけど、陽君の近くには別の人がきてしまうかもしれない。

あたし以外の、他のだれか。


その子に笑いかけるのだろうか。

その子と手を繋ぐのだろうか。

その子のことを一番大切になるのだろうか。


そこに、あたしはいないのだ。

友達のままなら…


気づいた時には季節は変わって、暑い夏が通り過ぎ、足早に秋が終わり、冬休みが直前に迫っていた。


そんなある日、もう思いをとどめて置くのが限界になってしまった。


いつものように空き教室で話していると、好きな人の話になっていった。


陽君から、好きな人のことなんて聞きたくない…

気づけばそんなことを考えていて、うっかり口にしてしまった。


あたしの好きな人は、陽君だよ、と。


心臓が爆発しそう、とはこのことだろう。

鳴り止まない鼓動を落ち着かせることなんてできず、顔を上げることもできず、ただ返事を待っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ