思い出 3rd.
さらに次の日。
この日は朝から雨だった。
親に頼み、学校まで送ってもらった。
朝早くに出るため、あたしが一番乗りだろうなー、なんて考えていたと思う。
昨日のことはさておき、とりあえず校内をふらつくか…
そんなことを思いながら教室の扉を開けると、あたしよりも先に彼がいた。
「おはよう。」
初めて、声を聞いた。
その瞬間、ドクン、と心臓が跳ね、また顔に熱が集まった。
「お、おはよう。」
何気ない挨拶。
の、はずなのに、自分じゃないみたいに声が震えそうになる。
カバンをもつ手に力が入り、どこか冷静に
あ、緊張してるんだなー
なんて思えたりもした。
「朝、早いんだね。
結城さんも親に送ってもらったの?」
彼から話しかけられた。
そうだよ、と返しながら、カバンを席に置く。
彼を横目で見てると、意外にも席が近かったのにびっくりした。
「この前の週末、会ったよね?
同じクラスだったのは気づいてなかったんだね。」
苦笑しながら話しかけられると、切れ長の目が優しそうになる。
こんな顔して笑うんだ…
その笑顔につられてあたしも笑う。
「うん。
知らなかったから、昨日目が合った時びっくりしたよ。」
今度は自然に返せただろうか。
心配になりながらも、声は震えてないことに安心した。
相変わらず心臓は震えたままだが。
その時、遠くで足音が聞こえた。
「場所、変えて話そっか?」
彼からの提案だった。
あたしは頷くと、近くの空いている教室へと2人で入って行った。