8話 街での出来事
やっと期末試験が終わったので投稿出来ました!
「ったくエレンの奴余計な事言いやがって」
「マスター、私がそのプレイヤーを消して来ましょうか?」
「いやいい。ほっとけ。それに一度殺しても直ぐ復活するし、無意味だ」
「了解しました」
俺とウリエルは今、始まりの街に来ている。理由は単純で、高度なAIを持っているウリエルにこの街を教える為だ。
使い魔は通常、主人が呼び出すまでは別の空間にいるのだが、今回は先程も言ったような理由でウリエルを召喚状態にしている。
「にしても街とは面白い物ですね。知識にはありましたが、実際に見たのは初めてです」
「そいつは僥倖。召喚したままにしといた甲斐が有ったってもんだ」
ウリエルの子供染みた感想に、俺は苦笑して答える。
……認めたくないが、俺の苦笑顔は人の目を引き付けてしまう。それは以前リアルで苦笑した際に、学校のクラスメイトが男女問わずに見惚れた事により確信している。
今回もゲームとはいえ、俺の姿はリアルと大して変わらない。精々髪の色と長さが違う位だ。
それにNPCだが高度なAIを持つウリエルも見た目はとても整っており、自然と男プレイヤーの視線を釘付けにする。そんな状況ではマナーの悪いプレイヤーに絡まれるのは寧ろ当たり前なのかもしれない。
「やぁ君達初心者でしょ?僕ら一応βテストの参加者だったから良い狩場とか知ってるんだ。良かったらこれから一緒に行かない?」
「俺らといると楽だぜ?当然一緒に来るよな?」
あんまりと言えばあんまりな男達2人が俺とウリエルに声をかけてくる。
「まあこうなるよな……」
「不快です……」
俺の呟きにウリエルが反応する。
「うーん?何かボソッと聞こえたけど、聞き間違いだよね?」
「ああ、俺達βテスターに対して不快なんて言う奴居る訳ねぇよな」
これで確信した。この男達は偶然βテストに当選しただけの素人だ。
勿論偶然とはいえβテスト経験者である以上このゲームについては他のプレイヤーに比べ多少は詳しいのだろう。”このゲーム”については、な。
「悪いが断らせて貰う。下手にお前等と一緒に行くとお前らが足手まといでろくにレベル上げも出来ない」
それ故に俺はそれを断る。しかしそれでこの二人が諦める訳無かった。何しろ自分らを馬鹿にされたのだ。頭に来ない訳が無い。
「おい女ぁ……幾ら他より見た目が整っていると言っても、実力がβテスターより優れてる訳ねぇだろ」
「彼の様に下品な言い方はしないが、意見は同じだ。君達は僕等を舐め過ぎているね」
まあこんな風になるだろうな。頭の悪い奴の典型的な形だ。
「うるさいなぁ……なら言うだけの実力見せ付けてよ。そうすりゃ俺もウリエルも納得するからさ」
めんどくさいのでこちらから提案をする。1対2のPVP。すなわちプレイヤー対プレイヤーの決闘システム。
男たちは自分の実力によっぽど自身があるのかニヤリと笑いながら、決闘のルールを見て疑問を口にする。
「おいおい2対2じゃなくていいのかよ?俺たちはβテスターだぜ?2対2でも勝負にならないってのに1対2じゃ一瞬で終わるぞ?」
「いいんだよ。テメーらのプライドをへし折るにはこれ位が丁度いい」
口の悪い方の男がそう言うが、俺はそれに嘲りの笑みを見せ挑発する。
「……少し僕等を怒らせ過ぎだね君たちは……」
それに丁寧な口調の男が反応を示す。そんな男たちに俺は、
「なら俺に勝ってみろ。それが出来たら狩りでも何でも行ってやる」
余裕を崩さないでそう言う。それを聞いた男たちは遂に本気になり決闘を受諾する。
『アテナ対JIN、ガンエイの1対2のPVPを開始します。5…4…3…』
何処からか無機質な声が響き決闘の開始を告げる。そしてタイムが0になった瞬間にJINと言うらしい男とガンエイと言うらしい男が左右から同時に襲いかかって来る。やはりβテストの時から組んでるらしく、そのコンビネーションは完成していた。恐らく普通のプレイヤーならこれで決着だっただろう。だが……
「遅い、な……」
生憎俺は普通のプレイヤーじゃない。天魔と言う超激レア種族を持ち、数多のゲームをやってきた経験から自身のプレイヤースキルも高いと自負している。そんな俺に幾らβテスターと言えど、二人程度の人数で勝てる訳が無い。
俺は左右から襲いかかって来た男たちをギリギリまで引き付けてから、紙一重のタイミングで後方にバック転をして跳ぶ。
「なっ⁉︎」
「ぐわっ⁉︎」
そんな事したどうなるか、答えはこれだ。二人はお互いにぶつかりあい、お互いに体制を崩す。そこに俺は左右の手に持つ愛剣である天使の剣と悪魔の剣をクロスさせるようにして斬り付ける。
「ぐっ!」
「がっ!」
男たちはそれを喰らい、苦悶の声を上げる。しかし俺はそこで攻撃を止める程優しく無い。
「何だこの程度で情けない……お前らも男ならこんぐらい耐えてみろ!」
そう言いながら俺はクロスした剣を開くようにして再び二人を斬り付ける。そしてそのまま乱舞のように斬って斬って斬り付ける。
「ぐわあああっ⁉︎」
「うわあああっ⁉︎」
そして数秒後二人の男は光の粒子となって消えて行った。
『You Win!タイム26秒』
その表示と共に、決闘フィールドを覆っていたドーム型の膜が消え失せ、その場には歓声が飛んで来た。
「嬢ちゃん強いな!」
「あの2人組、βテストではそこそこ名前が売れてたパーティじゃなかったっけ?」
「そんなのどうでもいい!それより見たかあの乱舞!目に見え無い速度で斬り付けてたぞ!」
「ああ、あれは凄かった……俺も出来るかな?」
「嬢ちゃんかっこ良かったぞー!」
そういえば決闘のルールで外野の観戦有りにしてたな……でもまぁ皆に褒められるのは悪い気分じゃないからいっか!
そう結論付けてウリエルを探すが、その姿は何処にも無い。あれ?と不思議に思っていたが、HHOの説明書に使い魔は決闘等を行う場合は強制的に主人の中に戻る、と言うのが書かれていたのを思い出し、結論を出した。ウリエルは俺の中に戻ってたんだ、と。
「少し目立ち過ぎたけど……ま、これで当分は絡まれ無いだろ」
俺は一人呟き、俺の決闘を見ていたプレイヤー達に一礼してからその場を去った。
因みにこの観客の中にエレンを見つけたので、一度去った後に自身のプレイヤースキルに物を言わせてエレンを攫い、人目のないところで笑顔で一発ぶん殴ってやった。冷や汗を流していたエレンはぶっ飛んで行き、そして、星になった……。
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おしらせ
以前活動報告で伝えた作品を8月1日に一斉投稿します。題名「魔人が行く異世界大蹂躙」です。