5話 大天使ウリエル
アテナのステータスは偶に後書きに書きますので、気になる方は後書きをどうぞ。
(注)今回は書いてません
「うわー……ここがHHOの世界……」
始まりの街に降り立った俺の第一声はそれだった。周りには俺と同じようにHHOにログインしているプレイヤー達がいる。
……こっち見て何かを話しているが、それが不愉快に感じる。
俺が不機嫌そうにそれらを眺めていると、俺の様子に気付いたプレイヤーの1人がこちらに近付いて来た。
「こんにちは。僕の名前はエレン。君の装備が変わっていて、つい遠巻きに眺めるという失敬をしてしまった。許して欲しい」
年齢は同じくらいだろうか。エレンとか言うらしいプレイヤーはそう言って頭を下げて来た。
見た所、人間の軽戦士と言った風貌であり、腰に下がっている武器は明らかに初心者のそれでは無い。恐らく元βテスターだと思われる。
「いや、良いよ別に。それにこの装備が珍しいのは当たり前さ。これはとあるレア種族限定の装備らしいからな。だから気にしないでくれ」
とにかくずっと頭を下げられているのは気分が落ち着かないので、そう言って頭を上げて貰った。
エレンはと言うと、俺の言葉に従い、頭を上げた。その次の言葉は、まあ予想通りの言葉だった。
「ありがとうございます。しかし今レア種族と言いましたか?wikiにはその様な姿の種族はありませんでしたが…….もしかして未判明だった種族ですか?」
うん普通はこう来るよな。まあ隠すつもりは無いが、簡単に教える気も無い。
「まぁそんなもんだ。何の種族かは教えるつもりは無いが、未判明の種族だって事は事実だな」
「何故ですか?別に隠す様な事では無いと思うのですが……」
そう返して来るエレンに、俺は少し苦笑気味にだが、もうこれ以上は言わないぞ!という意思を込めて答えてやる。
「それは種族がバレると弱点とかもバレちまう可能性があるかだよ。このゲームはPvPがあるんだろ?ならイベントとかでもPvPを行うかもしれないじゃないか。それなら少しでも情報がバレてない方がいろいろと有利だからな。ま、それが理由だね」
エレンは少し考え込んだが、俺の言うことが正しいと理解したのか、肯定の意を示してくれた。
「なるほど……分かりました。確かにそれは一理ありますね。勉強になりました」
「それなら良かった。じゃあ俺はもう行くな。またどこかで会えたら飯でも食いに行こうな」
そう言って立ち去ろうとした俺に、エレンは「あっ!」と言ってから引き留めて来た。
「折角ですし、フレンド登録しておきましょう。これならお互いに連絡も取れますしね」
俺はその提案を受け入れ、互いにフレンド登録し合い、俺とエレンは別れた。因みにエレンの別れ際のセリフに少し頭に来た俺だった。
「ではこれで失礼します。また会いましょう”お嬢さん”」
このセリフに思いっきり、「俺は男だ!」と叫んでしまった。どうやら完全に開き直れるのはまだまだ先のようだ。
とにかくそのせいで、周りの視線が痛くなったので、急いでその場を離れる事にした。まっく、何で皆んな俺の事を女とか言うんだ?名前か?名前が悪いのか?戦いの女神嘗めんな。……あれ?戦いの”女神”?もしかしてこれの所為じゃね?
「ま、いっか」
この辺りはもう開き直ってるんだよなぁ……
***
「はあっ!」
気合と共に両方の刃をクロスの形にして斬り込み、その直後にクロスから斬り開き、遠心力を利用して、背後から迫って来た敵を斬り付ける。
「ギャイン⁉︎」
悲鳴と共に2匹の狼(名をワイルドウルフと言う)は光の粒子に包まれて消えて行った。
「ふぅ、この辺りじゃ簡単過ぎるかな?もう少し奥行くか」
俺は今、始まりの街から東の門を通った先にあるステージである『始まりの草原』に居る。
俺はあの後、逃げるようにして街の外に出て来た。
普通はHPポーションやらMPポーションを街で買ってから出るのだが、そこは天魔のチュートリアルで貰った「天魔ポーション」で代用以上の事が可能なのだ。
ーーーーーーーーーー
天魔ポーション
天魔専用アイテム。天魔の種族、または天魔に従う者のHP、MP、状態異常を回復する。効果はレベルとステータスに依存。種族天魔以外は使うことが出来ない。一度使用してから1時間経過で効果が復活する。
ーーーーーーーーーー
まあこれはオールSSS報酬で貰った物だから当然の効果だ。使用すると自分と使い魔のHP、MPを回復して、1時間後には効果が復活する。俺自身あまり攻撃を受けないので、1時間後の効果復活まで余裕で持つから、問題無い。
「この辺はそろそろ強い敵が現れてくれるのかな?」
そう呟きながら歩いている俺。辺りに他のプレイヤーの影は無い。どうやらここまで来れる実力者は今はまだ居ない様だ。俺は種族天魔の補正があるから、適正レベル15〜20の所まで行けるのだ。因みにさっきまでいた所はだいたい7〜10くらいの場所である。
ビーッ!ビーッ!
暫く歩き続けていると、頭に突如異常事態発生の時に流れそうな音が鳴り響いた。そしてそれに続くように聞こえる無機質な声。
《特殊クエスト発生!特殊クエスト発生! クエスト名『四柱の守護天使』》
その直後不意に辺りが薄暗闇に包まれた。そして驚く俺を嘲笑うかの様に、いきなり天から雷が降って来た。
「うおっ⁉︎何だこれ⁉︎うわっ!ちょ、危なっ⁉︎」
雷は最初の一撃を皮切りに何発も降って来る
。どうやら無差別攻撃らしいのだが、その威力は装備の補正を踏まえても、今のレベルでは一発耐えれるかどうかと思われる威力を備えている。ただ、現実の雷の速度よりはかなり遅く、目視してからでもすぐに動けばギリギリで回避できる程度の速度であることがせめてもの救いと言える。
「くっ!何だよこれ!?ふざけんなっ!」
悪態をつきながらも次々と落ちて来る雷を躱し続けていると、漸く雷が止み、かと思ったら雷の代わりに一つの人影が降って来た。
「我らの雷を全て回避するとは……貴方只者じゃありませんね……」
その人影は、見た感じ女性のような身体付きをしているが、背中から生やした白銀の翼が彼女を人間では無いと判断させる。
「天使……」
無意識に口から出た言葉に、その天使は反応を示してきた。
「あら……我らを知っておられますか……見たところ天国にも地獄にも属していないようですが、貴方何者ですか?」
「それはこっちのセリフだ!いきなり人に向かって雷を落として来るなんて、天使は皆そんなんばっかなのか?」
とにかくやられっぱなしはしゃくなので、言葉で少し仕返しをしてやった。しかし相手は俺の皮肉には特に反応せず、何事も無かった様に自己紹介を始めた。
「私の名前はウリエルと申します。神に仕える大天使の幹部集団『四柱の守護天使』が一柱、絶壁のウリエルとは私の事です。因みに言っておきますが、胸が絶壁という訳じゃないので勘違いしないで頂きたい」
いやいや、貴女のその胸はどう考えても絶壁です。……って今重要なのはそこじゃない。
(エンジェル・フォー?何だそれは?攻略wikiにそんな情報無かったぞ…?)
俺の週巡など露知らず、ウリエルは俺達の周りに巨大な円形ドームを創り出した。
「さあ私は名乗りましたよ?今度はそちらの名前を聞かせて頂きます。それと下手な事は考えない方が良いですよ?この結界は私にしか創り出せませんし、消しも出来ません。つまり貴方はどう足掻いても私と戦って頂く他無いと言うことです。ここから出たければ私を倒してごらんなさい」
こちらの都合など知らないと言わんばかりにどんどん話を進めて行くウリエル。悔しいがウリエルの言う通り、今の俺に出来る事は無い。なら戦うのみだ!
「俺の名前はアテナ。こう見えても男だ。俺は忙しいんだ。悪いがさっさと終わらせて貰う!」
そう言って俺は武器を構える。右手に天使の剣、左手に悪魔の剣。
ウリエルは俺の持つ剣に少し反応を示してが、直ぐに自身も武器を構える。軽さを重視したと思われる細い剣。所謂レイピアと呼ばれる細剣だ。
「その武器は……成る程少しは楽しめそうですね……。ではさっそく始めましょうか!」
サービス開始から3時間、俺とウリエルの戦いが始まった……!
そろそろ戦闘をまともに書きたくなったので、急遽ウリエルさんに登場してもらいました。ウリエルさん達の謎は近いうちにご説明します。