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Heaven&Hell Online  作者: 夜桜
Second Stage
39/40

イベント風景2

完成前に誤って投稿してしまったので改めて投稿します。

「おいおいおいおい!!」


「こいつ、洒落にならないわね……」


「そんな!私の『天使のベール』が一瞬で!」


「とにかく下がれ!一撃でHP吹き飛ばされるぞ!」


場所は古城の門前。休憩後数十分進み辿り着いたこの場所で、俺たちは全滅の危機に陥っていた。


『愚かな……その程度の実力でこの私を倒せると思ったか』


強い。これしか言葉が出てこない。それだけこのモンスターは桁が違った。てか、喋るのかよこいつ。


「マジかよ……俺、自分の腕にそれなりの自信はあったんだけどな……」


【ゲヘナゲートキーパー:LV80】


名前からしてこの古城の門番的存在なのだと予想出来るが、こいつが洒落にならないほど強い。


4本の腕にそれぞれ片手斧、大鉈、鉄球、短槍を持ち、頭部を覆う古びた兜からは鬼を彷彿とさせる反り返った二本の角を覗かせた人型のモンスター。開戦からそろそろ10分ほど経つけどこちらは未だにまともに攻撃を与えられておらず、それなのにこちらは既にメラクとヒビキが一回ずつHPを全損させられている。身代わりの欠片の効果でなんとか命を繋げたが、それも3回までと言う制限があり無限に蘇られるわけじゃない。


「参ったな……こりゃ、混沌の巫女の時より絶望的だ」


そう言ってる間にもメラクがゲヘナゲートキーパーの攻撃を受け止めて吹き飛ばされる。HPの減少は5割といったところか。完璧に受け止めた上であのダメージって事は直撃を受けてたらメラクは死んでたな。てか、俺もあいつの攻撃の直撃は受け切れる自信が無い。


「メラク大丈夫か!?」


「イテテ、なんとかな……」


俺は「天魔の瞳」のおかげで致命傷って程の傷は負っていないが、それでもHPは3割以上削られている。無傷なのは援護専門のシズクくらいのものだが、そのシズクの場合、一撃でもゲヘナゲートキーパーの攻撃をくらえば即死亡してしまうだろう。これは俺も腹をくくるしかなさそうだ。


「こりゃマズイな……仕方無い、俺も少し本気を出すか……」


俺の本来の戦闘スタイルはあまりパーティプレイに向いていない。そのため、パーティを組んでいる間は決して本気を出すまいと思っていたんだけど、ここまで来てあっさり死に戻りってのは御免だ。


「メラク、ヒビキ、二人は下がってシズクと一緒に援護に徹してくれ」


「あ、ああ、分かった」


「一人で大丈夫なの?」


「さぁな。正直あいつは強過ぎ。なんとか頑張ってはみるけどね」


俺にも自信を持って大丈夫と言えるほどの余裕は無い。だけど、せっかくみんなと一緒に同じゲームの同じイベントに参加したんだ。そう簡単に諦めますなんて言えるわけ無い。


「行くよ、ウリエル、ベルセルク、ツクヨ」


俺の呼びかけに応じて出現した魔法陣の中から、今まで一緒に戦ってきた相棒の三人が現れた。


「お呼びですかマスター」


「シャアシャア!」


「ママ……」


ウリエル達は俺を囲むように出現し、俺の言葉を待つ。


「あのモンスターを倒す。力を貸してくれ」


「了解致しました」


「シャーア♪」


「頑張る……」


頼もしい相棒達の姿に俺は微笑みを零し、剣を構えてゲヘナゲートキーパーに向き直る。


「ここからが本番だぜゲヘナゲートキーパー」


『良かろう。かかって来るが良い』


俺は弾丸の如く飛び出した。


***


「あれがアテナの本来の戦い方か……」


「あれは使い魔かしら?」


「見たこと無いモンスターです」


俺たちは少し離れた所で固まりながら、アテナが戦う姿を呆然と眺めていた。正直、全然何をやってるのか分からないけど、とにかくアテナがとんでもない奴だということは嫌というほど理解した。


(援護に集中しろと言われても、あんなハイレベルな戦いに何をどうすればいいかわかんねーよ)


元来あいつはゲームになるとアホみたいに上手かった。格ゲーもシューティングも音ゲーも、あいつはなんでも卒なくこなす生粋のゲーマーなんだ。


俺もゲームが得意という自信はある。実際、幾つかのゲームではランキング入りを果たしているしな。だけどそれでもあいつには勝てない。今アテナの中にいる瞬矢にはどんなゲームでも敵う気がしない。

でも不思議とそれを妬んだりする気は無いんだ。瞬矢と俺はガキの頃から一緒にゲームして遊んで来た。当然羨む事もあったけど、何故か妬ましいとは思った事が無い。寧ろそんな瞬矢を誇らしく思ってさえいる気持ちがある。


(はは、あいつあんなに楽しそうな表情をして……やっぱ幾ら歳をとっても瞬矢は瞬矢だ)


俺は自然と頬が緩むのを感じた。昔からの親友が昔のままでいてくれたことになんとなくの安心感を覚えたのだ。


「瞬矢、俺も少しはお前の役に立つぜ?」


さーて、親友の為にもう少し頑張ってみますかね!


***


私は今目の前で繰り広げられている事のレベルの高さに目を見張っていた。


「速い……」


私の種族は獣人のレア種族神狼。素早さに関してはそうそう負ける事は無いと思っていたんだけど、流石にアレには勝てないわね……。


「あんな速度で動いて思考が追いつくのかしらね……」


素早さ特化の私だから分かる。アテナの動きは本当にとんでもない。


(そう言えば私が瞬矢に初めて会った時も瞬矢は凄かったわね)


私と瞬矢が初めて出会ったのは高校に入学して直ぐの仮入部期間の時だった。部活動に入る気は無かったけど、一回はどっかの部活動に仮入部してそのレポートを書かないといけないという事情で、一応経験のある陸上部に行った時の事だ。

瞬矢は当時からその容姿と運動能力から色んな運動部から引っ張りだこで、私が仮入部に行った時に丁度陸上部に来ていたらしい。


”うわっ、綺麗な女の子……”


瞬矢を初めて見た時に真っ先にそう思った。今でこそ笑い話だけど、当時の私は本気で瞬矢が女の子だと思っていたのよね。だから気安い調子で話しかけてみたんだけど、これがビックリ。まさかあんな美少女然として娘が男子だったなんて。


(そう言えばあの時はうっかり瞬矢を女子更衣室に連れ込んじゃったんだっけ……)


冷静に考えれば女子更衣室に連れ込まれた時の瞬矢の抵抗で気付けたものよね。まぁ、あの時の反応は可愛かったから私的には役得だったんだけど。


「まったく……相変わらず好きなことに対しては全力なんだから……」


今も果敢にあんな化け物に挑む瞬矢を見ていると自分も不思議と力が湧いてくる。


「いいわ、やってやろうじゃないの!」


よし!瞬矢の役に立つために頑張りますか!


***


目の前でなにが起こっているにか全く分かりません。いえ、状況は分かっていますよ?早神君が頑張っているんですよね。でもその内容が私には理解できないんです………

早神君が使い魔らしきモンスター達を出したところまでは分かりました。その後からの光景が私にはハイレベルすぎるんです。


私の種族は女神。後衛に特化した完全サポート役です。その為、ステータスの振りがそっちの方面に偏っているんです。なので純粋な戦闘種族の方と比べて動体視力や状況認識能力が低いんです。多分自分より10レベルくらい低い戦闘種族の方にも力では負けそうです。


(私って役立たずですね……)


自然とそんな言葉が脳裏を過ぎります。みんなが分かってる事を私だけが理解出来ていない。その現実が重くのしかかります。


昔から私はこんなでした。


古くから続く良家に生まれた私は幼い頃からあらゆる習い事をさせられてきました。礼儀作法から始まり、舞踊、華道、茶道……挙句の果てには花嫁修行すらもさせられました。私にはそのどれも完璧にこなせる技量はありませんでした。父も母もそんな私をいつしか見限るようになり、私もそれを仕方無いと思うようになり、父と母とも上手くいかなくなりました。でもそんな私を救ってくれたのは当時から既に注目の的だった早神君だったんです。


早神君と初めて会ったのは二年生で初めてクラスメイトとなった時です。一年生の頃から何度か見かけることはありましたが、言葉を交わしたのはこれが初めてでした。

私は人付き合いが苦手で新しいクラスにも馴染めず、いつもクラスで一人で本を読んでいました。声をかけられたのはそんな時です。


『雫石……さんでよかったよな。君よく一人でいるけど、良かったら少し話に付き合ってくれない?』


不意に声をかけられた時は思わず驚いてしまいましたが、男性に声をかけられることは昔からよくあったので直ぐに調子を取り戻していつも通り返しました。


『……すみません一人が好きなので……』


今思えばこの時の私はとても無愛想でしたね……少々恥ずかしいです。


『まあそう言うなって。その本、ゲームが原作のミステリー小説だろ?』


『え?ご存知なのですか?』


そこから話が弾んで行き、いつの間にか私も笑顔になってきました。早神君と話している内に、自然に棟方さんや三船君とも話すようになっていき、学校が楽しく感じるようになっていきました。ですがその反面、家での生活がより苦しく感じるようになりました。学校から帰る道のりが陰鬱になり、家では安らぐことすら出来なくなっていきました。寝不足になり、体調も崩し、それでも家にはいたく無くて、悲鳴をあげる体を引き摺り学校に行き、そして遂に倒れてしまいました。そんな時私を介抱し、家まで送ってくれたのが早神君でした。

早神君が私を家まで送ってくれた時出迎えたのはお手伝いさんでしたが、一見美少女にしか見えない様な早神君が私を軽々と抱えていた様子は酷く異質だったそうです。その時の記憶は曖昧ですが、お手伝いさんが言うには家族の私への対応に違和感を持った早神君が、半ば強引に家へ押し入り父と母相手に何やら話しをしていたとの事です。何を話したのかをいくら聞いても父も母も言葉を濁しますが、確かなのはその日を境に私気にかけてくれるようになったと言う事です。それはもう、私が迷惑だと思うほどに熱烈に。それと、二人が私に内緒で何かこそこそするような様子も度々見られるようになりました。

何があったかは分かりませんが、その日以降私の家は大きく変わりました。今まで買う事の許されなかったゲームも買えるようになりました。と言うか、父と母が好んでいる雰囲気もありましたね。そのおかげで早神君達と一緒に同じ話題で話せるようにもなりましたし。


(何があったかは分からないですけど、早神君が何かしてくれたのは分かります……だから私はその恩に報いらないとなりません……)


「早神君、援護します!」


だから私は私の出来る事で早神君を助けてみせます!

楓ちゃんの話だけ無駄に長くなった気が……ま、まぁ、それだけ設定が深かったと言う事で(目逸らし)


お知らせ


活動報告にて、新しい企画を行います!是非そちらものぞいてください!

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