イベント風景その1
今回は短めで構成しています。
連絡
主人公のスキルの名称を変更しました。
・神魔眼→天魔の瞳
・魔神化→魔王化
「お疲れ様。なんとかやって行けそうじゃんか」
戦闘を終え、一先ずの休憩を挟む事にした俺は初めて圧倒的格上との戦闘を行った疲労で座り込んでしまったメラク達に労いの言葉をかけてやった。
「何がお疲れ様だっての……あー、きっついわぁ……」
「一撃貰ったら即アウトの雑魚モブとかなんなのよ……アテナ、良く一人で相手できたわね……」
「私は援護をしていただけですけど、皆さんの戦闘見ているだけで疲れちゃいました……」
俺から見たら十分な戦闘だったけど、どうも本人達からしたらかなりギリギリだったらしい。まぁ、でもこれでこの難易度でも戦える事は分かった。それも踏まえてどうするか考えないと。
「まぁ、何にせよ俺もみんなもこの難易度の敵に勝てる事は分かった。それでどうする?難易度下げるか?」
俺が尋ねると、メラク達は少し考える様な素振りを見せた。
俺としてはこのままこの難易度でやって行きたいと考えているけど、今はソロじゃなくてパーティなんだ。パーティメンバーの意見もきちんと聞かないとならない。
「そうだなぁ……確かにきつかったけど、一回の戦闘でレベルが上がった事を考えるともう少しここで頑張ってレベリングしてもいいかもしれないな」
「そうね……それに今回は私達だけで戦ったけど、いざとなったらアテナもいるし私もこのままの難易度でも構わないわ。PSも磨けるしね」
「私も異論はありません。皆さんについて行きます」
よし、なら答えは出たな。
「んじゃ、このまま地獄級で頑張ってみるか。
てことで、次の戦闘は四人で連携してみよう。みんなはずっと一緒にパーティ組んでたから大丈夫だろうけど、俺はパーティ組んでの戦闘はあまり経験無いからね」
俺の言葉にみんなが頷く。そうと決まればと、俺たちは休憩を切り上げて隊列を組みながら歩き出した。
何にせよ取り敢えずの方針は決まった。このままゲヘナを進んで行こう。
***
「メラク、後ろから来てるぞ!」
「了解!ヒビキ、手伝ってくれ!」
「もう動いてるよ!シズク、バフお願いね!」
「お任せください!」
ゲヘナを進むことそろそろ一時間。少し前まだは散発的に現れていたモンスター達が何時の間に複数で現れるようになってきた。今もゲヘナオルトロスとゲヘナバットが2匹ずつの計4匹との戦闘中だ。
「お前ら、しゃがめ!」
既にゲヘナオルトロスとゲヘナバットは1匹ずつ倒れ、残りは2匹だけだ。そろそろ倒してしまおう。
俺はみんなが頭を下げたのを確認すると、「スカイウォーク」で宙に足場を作り、そこを「縮地」で蹴る。
「はぁ!」
「縮地」でゲヘナバットに接近し、そのまま「豪脚」でゲヘナバットをゲヘナオルトロスの方へと蹴り飛ばす。そして続け様に「弾着」を使用して激突しあったゲヘナオルトロスとゲヘナバットに突撃した。
「『セイクリッドクロス』『デュアルジャッジメント』」
勢いのまま2匹同時に斬りつけ、全てのHPを削り取る。光の粒子となって消えるモンスター達を見送り、静かに剣を納めた。脳内にはレベルアップを告げる音が響き、その音に満足感を覚える。
「ふぅ、一時間足らずで2もレベルあがるなんて、効率いいなここは」
「ああ、俺たちも敵の動きに慣れてきたし、レベルもそれなりに上がったしで良いこと尽くしだ」
現在、俺のレベルが57でメラク達のレベルが41。やはりレベル差が大きいのか、メラク達は俺の倍はレベルが上がっている。
「そうね、動きに慣れてきたのは大きいわ。まだ直撃は受けられないけど、こちらの攻撃で与えられるダメージも徐々に上がってきたし狩りの効率が上がってきたわね」
「私も新しい魔法覚えましたし、より一層役立てるようになりました」
最初は敵とのレベル差に動揺していたメラク達も同じモンスターと何度も戦っていれば流石に慣れる。今では連携をきちんと出来れば殆どの無傷で敵を倒す事が出来るようにまでなった。
「それにしても結構進んだよな。そろそろモンスターにも変化が現れそうだ」
俺たちは異界の扉から道なりに一時間近く歩いた。視界の先には明らかに何かありそうな怪しい古城が現れた。どう考えても進めと言う事だろう。
「あの城って、明らかに怪しいわよね」
「だなー。あんなあからさまに出てこられちゃ、行くしか無いだろ」
「楽しみですね」
「お前ら、最初はあんな尻込みしてたのに随分と変わったなー」
爛々と瞳を輝かせて城を見るメラク達に苦笑を漏らす。まったく、本当に根っからのゲーマーだな。まぁ俺も人の事言えないけど。
「取り敢えず一旦休憩だ。あの城には万全の体制で挑もう」
俺の提案に分かったと返してくるみんなを見渡し、周りへの注意を疎かにしないように意識しながら俺も座り込む。
「それにしても、アテナはよくソロでこいつらを狩れてるよな」
すると、隣で街で買った水を飲んでいたメラクがポツリと呟いた。
「なんだよいきなり」
俺はお気に入りのサンドイッチを食べながら訝しげに返す。
「いやさ、レベルが違うのは分かっているんだけど、それ以外にもお前の動きって俺たちとなんか違うんだよなー」
「あ、それは私も思った。アテナってば、リアルでも凄い運動神経だけど、こっちの世界では何かそれだけじゃない動きしてるわよね」
「私なんて、アテナさんの動きに未だに付いて行けませんからね。何か特別な体捌きをしているんですか?」
む、むぅ?俺ってばそんなに変な動きしているのか?特に何かを意識した事無いはずなんだけど……
「うーん、何ていうのかな。俺たちとアテナでは見えてる景色が違う……みたいな感じか?」
見えてる景色が違う……あぁ、なるほどそう言う事か。
「そりゃ多分この眼の所為だな」
俺は片方の掌で眼を覆い、「天魔の瞳」を発動させた。手が離れると、その瞳には怪しく輝く六芒星が浮かび上がっていた。
「うおっ!?何それめっちゃかっけぇ!」
「厨二病?」
「綺麗な瞳……」
「天魔の瞳」に三者三様の反応を示す三人。って、ちょっと待てヒビキ。これはスキルの所為なので、決して俺が厨二病なんかでは無い。「瞳に六芒星とかマジかっけー」なんて思って無いからな!無いったら無いからな!
「これは『天魔の瞳』って言う、まぁ名前の通り天魔の固有スキルだよ」
「天魔の瞳」を発動させていた左眼を閉じ、天魔の瞳を消しながらそう告げると、メラク達は興味津々と言った様相で俺に詰め寄って来た。
「ど、どんな効果なんだ!?」
「天魔の固有スキルならさぞかしチートな能力なんでしょうね。心強いわ」
「私も気になります、そのスキル」
お、おう……凄い食い付きだな……まぁ、仕方ないのかもしれないけど。
「そうだな、簡単に説明すると敵の攻撃に予測線を引くって事と一定時間目を合わせた者にランダムで状態異常を引き起こすって感じかな」
「天魔の瞳」を発動させると、敵の攻撃が何処からどう来るかが線となって見えるんだ。それと混沌の巫女の時にやったように目を合わせた相手にランダムで状態異常を引き起こす。まぁ、状態異常の方の効果はボスとかの相手にしか使う事が無いから、主な効果は攻撃予測と言っても良いかもしれない。メラク達が言う見えてる景色が違うってのはそれを使用した俺の動きの事だろう。何せ、敵が何らかの動きを見せる前に既に次の動作に移ってるんだもんな。そりゃ、動きに違いが出るわ。
「みんなが感じてる事って、多分攻撃予測を利用した先読み行動の事だろうな。普通は敵の予備動作から動きを予測して立ち回るけど、俺の場合はそれよりもう一歩早く動いているから変に見えるんだろう」
「うーん……そうなの、か?」
「呆れるほどのチート能力ね……それを完璧に使いこなしているあんたも大概だけどね」
「予備動作より早く攻撃予測が出るって事は、ただ回避するだけならともかく、自身の攻撃として繋げるならタイミングは相当難しいですよ」
まぁ確かに。シズクの言う通り、このスキルは回避するだけならとても簡単になるが、カウンターなどを当てるには攻略wikiに出ているタイミングでは無く己の感覚でそれを見つけないとならない。非常に難しい分、それらを完璧に把握出来たらそれからは一方的な展開に持ち込める。
「まぁ、慣れだよ」
俺は僅かに口角を上げてニヤリと笑う。
「さて、と……休憩はそろそろ切り上げて散策を再開しようか」
そう言って俺はゆっくりと立ち上がる。
俺が立ち上がると、みんなもそれにつられるように立ち上がる。その様子を見ながら、視界の端でチラつく古城に意識を向ける。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか。古城にはどんなモンスターが生息してるかね)
俺たちは期待に胸を躍らせながら、古城の方へと歩みを進める。そしてそこで、かつてない強敵との邂逅を果たすのだった。
次回は戦闘シーンでまるまる一話使うので、今回次回共に短めになります。どうかご了承くださいm(__)m




